レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

THE 功夫


Media :PC-Engine(HU-CARD)
Maker :HUDSON SOFT
種 別:強制右スクロール型格闘アクションゲーム
発売日:1987年


 「THE 功夫」である。
決して、「ザ・イサオ」と読んではいけないのだ。
このゲームは、1987年、PC-Engine発売と同時にリリースされた、いわゆる看
板ゲームである。
内容は、スパルタンXのようなもの、と言えば分かって頂けるかとも思うが、
スパルタンXといわれて「ああ、あれか」と思うような人は、そもそもこの
ゲームのことも知っていると思うので、もう少し細かく説明すると、やたら
ケンシロウ似で、表情の険しい主人公を操って、迫りくる武闘家や、その他
色々なヘンなものを撃破しつつ、ひたすら右に進むゲームである。

 PC-Engineは、ファミコン全盛期に発売され、その性能の高さで、世間をあ
る程度「あっ」といわれたハードだが、そのPC-Engine発売時の看板ソフトと
いうだけあって、グラフィックのクォリティは非常に高い。

 主人公や敵キャラクターの大きさは、NEO-GEOのキング・オブ・ファイター
ズ並で、少なくとも画質のクォリティは、2Dゲームとしては、15年近く経過し
た現在でもある程度通用するほどだ。

 ハードの制約からキャラクターをあまり大きくできなかったファミコン一色
だった世の中を「あっ」と言わせる、という使命は十二分に果たしたといえる。

 が、しかし・・・。
あまりにもキャラクターが大きすぎた。
キャラクターの大きさにこだわるあまり、他の全てを犠牲にしてしまった。
例えるなら、引越しの時、おじいちゃんが28インチテレビを持ち上げよう
として、家族に止められるが、「何を、まだまだ若いモンには負けんワイ!」
などといいつつ気合一発、見事にテレビを持ち上げたまでは良かったが、悲
しいかな、そのままギックリ腰となり、その体勢のまま固まってしまったよ
うなゲームなのだ。


 このゲームの最大の問題点は、「自分がキャラクターを操っているような
気が全くしない」という点にある。
勿論、ケンシロウ似の主人公はコントローラの操作に従って険しい表情のまま
様々なアクションを繰り出すが、キャラクターがPC-Engineというハードの限界
を遥かに超えるほど大きすぎる為に、アクションが緩慢で非常に重い。
もっと分かり易くいうと「明らかに面倒くさがりながら動いている」という感じ
がする。
そしてコントローラの入力から実際の動作までに妙な一拍がある。

 さらに、ゲーム内容も非常に単調である。
このゲームは4つのステージがあり、さらに1ステージが3つの小ステージに
より構成されている、といういわゆる「スーパーマリオ型」のステージ構成に
なっているが、わざわざ小ステージを設けた理由は、「ゲーム時間の引き延ば
し」以外には全く考えられないほどに単調である。

 分かり易くいうとステージ1の場合、小ステージ1〜3で変化する点は、「
背景の色」(昼・夕方・夜と変化する)と「ボスの色」だけである。

 容量の問題から、敵キャラクターを色違いで使いまわすことは珍しく無いが
いきなりステージボスが3連続で使いまわし、などといういさぎの良いゲーム
はちょっと他には見当たらない。

 しかももっと凄いのは、ステージが進んでいくと、主人公キャラまで色違い
で、ステージボスとして使いまわされている、という点である。

 ちなみに、主人公やステージボスと同じ大きさのザコキャラも存在するが、
これも1種類のキャラクターのみで色違いにより強さが分かれている。
しかし、その割には、ザコキャラ(?)として登場する、「矢」だとか「人魂」
だとか、「骸骨」といった小サイズのキャラクターパターンは結構豊富で、い
かにこのゲームが無理をしているか、という点が伺い知れる。

 それにしてもグラフィックのみとはいえ、「本体発売と同時にハードの限界
を超えてしまったソフト」、という点で非常に貴重な1本である。



AXL 2001

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