レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「頭脳戦艦ガル」

Media :Family Computer
Maker :db-soft
種 別:シューティングゲーム(自称:スクロールRPG)
発売日:1985年


 db-softという会社には一目置いている。
とはいっても、別にdb-softの出したゲームは大抵プレイした、とか、これこ
れこういうわけでこのメーカーは優れているのだ、と胸を張って言えるような
根拠があるわけでもないのだが、おいらの中のdb-softというメーカーのイメー
ジは「優良メーカー」ということになっている。

 そのイメージを決定付けたのは、db-softファミコン参入第一作目の「フラッ
ピー」のインパクト、すわなち、「ステージ総数240面、だけど値段は5,500
円(任天堂以外のメーカーでは初)」という衝撃を今でも忘れることができない
からだろう。

 フラッピーが発売される一年前に既にハドソンが全50面のロードランナー
をリリースしてはいたし、ゲーム性からいえば、ロードランナーの方が好きな
のだが、それを差し引いても、当時のファミコンゲームで240ステージとい
うのは物凄いことだった。

 おいらはやたらと貧乏性な性格なので、「いっぱい」という概念を心の底か
ら愛している。
昨今のムービーや声優多用の「映画的ゲーム」は決して好きではないが、総プ
レイ200時間とかいう方向性は決して嫌いではない。
500時間でもいいし、10年くらいでも構わない、とすら思っている。

 そして、フラッピーに続いては発売された「ヴォルガードII」というロボッ
トシューティングゲームも今もってお気に入りのソフトであり、この辺の原体
験が今もって「db-softは素晴らしい!」という思い込みの根底にあり、その後
この会社が、例えば頭脳戦艦ガルだとか「うっでぃぽこ」などという不思議な
ゲームをいくらリリースしようとも、その印象は今日まで変わることがなかっ
た。

 このレビューを書くにあたって発売時期を調べていて驚いたのは、実はこの
頭脳戦艦ガルとヴォルガードIIの発売は同時期でどちらも1985年の12月に発売
されている、たまたま、おいらはヴォルガードの方を購入したが、もし、この
時にガルの方を購入していたら、おいらのdb-softに対するイメージはもう少し
別のものになっていたかもしれない。


 さて、頭脳戦艦ガルは「スクロールRPG」という独自のジャンルを「自称」
であり、初のシューティング&RPGを名乗っている。
シューティングでありながら、RPG要素も兼ね備えているというのは決して
悪いことではないし、中にはこのウリ文句で購入してしまったヒトもいるので
はないかと思うが、幸いなことにおいらは発売当初、さしてこのゲームには注
目していなかった。

 というのも既に数ヶ月前に発売された「スターフォース」を遊び倒していた
し、今さら同じような、しかも必ずしもスターフォースよりも面白いとは限ら
ないゲームが欲しい、とは思っていなかったからだ。

 しかし、おいらと頭脳戦艦ガルの出会いはそれから約半年後の1986年夏頃に
唐突に訪れた。

 それは、近所のディスカウントショップが前人未到、空前絶後の「ファミコ
ンソフト大安売りをする!」と宣言したことから始まった。
当時はファミコンブームの真っ只中ではあったものの、まだ中古ソフト販売と
いうものがあまり一般化しておらず、値崩れによる新品ソフトの大幅な割引販
売なども殆どなかった為、このディスカウントショップにはそれこそ町中の子
供達が殺到したのだ。


 「新品ファミコンソフト400円から!」
というチラシの文字に、おいらの胸は踊り、友人数人と共に列に並んだ。
店の入り口から続く人々の列は、店を二周、三週と取り巻き、最後は向かいの
駐車場にまでそのとぐろを巻いていた。

 おいらは、店にさえ入ればそれこそ全種類のファミコンソフトが並んでおり
どれもこれも「1本400円」で買えるものと頭から信じ込んでおり、ポケッ
トの中には千円札二枚を入れて、期待に胸は膨らむばかりだった。


 並び続けること約二時間。
店に入ったおいらが目にした光景は衝撃的だった。
店が用意した特売用ソフトの内、めぼしいものはあらかた買い尽くされ、そこ
に僅かに残っていたソフトは「頭脳戦艦ガル」と「ロットロット」だけだった
のだ。

 はっきりいってどちらもあまり欲しくなかったのだが、何はともあれ頭脳戦
艦ガルはシューティングゲームである。
元々パズルゲームがあまり好きではなかったおいらは頭脳戦艦ガルを選び「ロ
ットロット」に対しては「400円でもいらない」という態度を表明した。

 結局、付き合った友人達も全員「頭脳戦艦ガル」のみを購入し、おいらの部
屋試遊会が開催されたのだ。
このゲームの特徴は「敵を倒すことが自機がパワーアップする」ということと
ステージ中のどこかに散らばっている「100個のパーツを集める」というこ
となのだが、それ以外はごく普通のシューティングゲームで、純粋にシューテ
ィングゲームとしてみるとかなり粗の目立つ作品となっている。

 これが仮に100個のパーツそれぞれに何らかのパワーアップ要素があり、
パーツを取るごとにパワーアップする、というゲームであればまだ何とかなっ
たかもしれないが、ゲームをクリアする為に必要な100個のパーツとパワー
アップの間には何ら関連性がない上にパワーアップそのものに派手さがない為、
非常に地味でその割には異常に時間を食う、というかなりキツい出来に仕上が
っている。

 最初の内はそれでも「仮にも定価5500円もするものが400円で買えた
んだ!」というあたりから強引に自分達を勇気付け、盛り上がろうとしていた
おいら達も、この途方もないシステムと弊店間際の定食屋に於ける客あしらい
にも似たぞんざいなゲームの作りに嫌気が指し、気がついた時にはファミコン
に刺さっているソフトは「ガル」から「スターフォース」へと変わっていた。



AXL 2003

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