レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「サバッシュ2〜メヒテの大予言〜」

Maker :POPCOM SOFT、グローディア
Media :PC-9801VM以降
種 別:RPG
発売日:1993年2月24日


 突然こんなことを書いてしまって良いのか悪いのか自分でも分からないが、
このザバッシュ2というゲームは少なくとも20世紀における最高のRPGで
ある。
おいらにとって、これより面白かったRPGは今のところ1本も存在しない。
このゲームを抜かして考えるのなら、最高のRPGは、ドラゴンクエスト3〜
そして、伝説へ・・・〜だと思っているが、このザバッシュ2というゲームは
明かにリアルタイムで初めてプレイした時のドラクエ3より面白いのである。

 ただ、このゲームの知名度は決して高くない、発売元が既に存在しないPOP
COM SOFTだというところが、このザバッシュ2の辛いところである。
これがもし、何かの間違いでエニックスあたりから発売されていたら、確実に
RPGの歴史は大きく変わっていただろう。

 とにかく、まずはこのザバッシュ2というゲームがいかなるソフトなのかを
知っていただくことにしよう。
このゲーム、2というだけあって「ザバッシュ」という初代も存在する。
こちらもプレイしたことはあるが、おいら的にはそれほど面白い作品ではなか
った覚えがある。
初代、2共に開発はエメラルドドラゴンのグローディアで、シナリオライター
は、三遊亭円丈という、なんと噺家さんである。

 ちなみに個人的に落語は好きだが、かなり以前、NHKで放映されている、「日
本の話芸」という、「特選落語名人会」亡き現在となっては、「笑点」の前半
と並んで、落語ファンの命綱的な番組をたまたま見ていたら、出演していたの
が円丈師匠で、その時、初めて師の「ランボー2〜怒りの脱出〜」という噺を
聞いた。

 内容についてはかなり以前のことなので詳しくは覚えていないが、ただ、高
座で「ランボー2〜怒りの脱出〜」などというとんでもない噺を演る型破りな
噺家がいて、その人こそがこのザバッシュ2というゲームのシナリオライター
なのだ。


 その型破りな噺家、三遊亭円丈か作った「ザバッシュ2」というRPGは果
たしてどのようなゲームなのか?

 実はプレイしてからかなり時間が経ってしまったので記憶をたぐりよせなが
らのレビューとなるが、まず、舞台はいわゆるRPG向けのファンタジー世界
であり、ゲーム開始時にプレイヤーは3人いる主人公候補の中から1人を選択
する。
次に、いきなりミニゲームが始まる。
おいらの記憶によれば、このゲームの成果により、パラメータの初期値が決定
されたような気がするが、ここで失敗した場合、「主人公は生まれなかった」
ということになり、早過ぎるエンディングを迎える恐れがあるので注意しよう。

 ・・・などという、強引な展開や、「ゲーム開始直後のミニゲーム」という
あたりが「クソゲー界の雄」といわれながら、同時に独特の世界観を持ち、お
いらを含めていまだに根強いファンが存在するといわれているファミコンディ
スクシステムの「消えたプリンセス」を彷彿とさせないこともないが、ザバッ
シュ2は決してクソゲーではない。
ただ、ゲーム冒頭で「ショックを受けて」やめてしまうかもしれない人が、い
るかもしれない、という恐れはちょっぴりある。


 さて、内容だが、このゲームが他のRPGと一線を画している点は、「メイ
ンシナリオは確かに存在するが、それ以外に(恐らくメインシナリオを遥かに
上回るボリュームで)サブ・シナリオが無数に存在しており、それらサブ・シ
ナリオはプレイしなくてもクリアには関係ないが、プレイすればそれだけ有利
になる。というシステムである。

 RPGは大きく分けて、ドラクエやFFのような「1本道RPG」といわれ
るものと、ルナティックドーンのような「フリーシナリオRPG」といわれる
ものに分かれるが、前者は迷わずプレイできる反面、プレイヤーの自由度が低
い、という欠点があり、後者は、自由度が高い反面、広く浅くを追求するあま
り、どうプレイしても展開が単調になってしまう、という欠点がある。

 ザバッシュ2の場合はいわば美味しいトコ取りで、両者の長所のみを取り入
れることにより、短所を相殺するという、ノーベル賞にゲーム部門があれば間
違いなく受賞してしまえるほど画期的なシステムを取り入れているのだ。

 メインシナリオがちゃんと存在するので、プレイヤーがゲーム中に「迷う」
ことはないし、クリアまでの日数制限はあるものの(決してシビアな日数では
ない)メインシナリオに飽きたら、かなり自由に自分の好きなようにゲーム世
界を楽しむことが出来るのだ。

 その上、サブシナリオの出来も半端ではない。
交易をして金を儲け、さらに名声を高めたりと、大航海時代ばりの楽しみ方も
出来れば、ゲーム中で結婚することも出来る。
その他にも大小おりまぜて、一般的なRPGでは考えられなかったような楽し
み方が無数に存在するのである。

 しかもそれらサブシナリオ一つ一つが、それだけでゲーム化できるほど良く
出来ているので、このゲームに関しては「飽きる」ということが全く無い。
その上に、前に書いたように主人公候補が3人存在し、それぞれのシナリオを
楽しむことができるのだから、ボリュームだけで言っても、現在のCDROM
数枚組でリリースされているRPG超大作ですら足元にも及ばない、なんとシ
ナリオだけを文字数に換算するとざっと60万字分。
これは文庫本の体裁に換算すると「ページ中の空白を1マスも計算にいれない
で950ページ以上」に相当する。
あくまでも、これはCGやBGM、アルゴリズムなどのプログラム部分を一切
掲載にいれない、実際に文字として画面に表示されるシナリオテキストのみの
量である。

 おいらはコンピュータゲームというのは、「その中に一つの完結した世界が
なければいけない」と思っているが、そういう意味では、ザバッシュ2の中に
は星の数ほど存在するゲームの中でも「最も完璧で、最も素晴らしい世界」が
詰まっているのである。

 おいらが知る限り最高のRPGであるザバッシュ2に足りなかったのは、知
名度だけである。

 しかし、このゲームの産の親である、三遊亭円丈師は、「ザバッシュ2は日
本人の嗜好にあわないかもしれない」というようなことを以前言っていた。
それは日本人が、画一化されたコースを歩み、自分で考え、生き方を模索する
ことよりも、誰か他の人が言う「間違いない生き方」のレールの上に乗って生
きることを好む民族だから、ザバッシュ2のように選択肢が多過ぎるゲームよ
りも、一本道RPGの方が体質にあっているのではないか?という意味らしい。

 おいら個人の意見としては、プレイヤーが自由にゲーム中で色々なプレイの
仕方や楽しみ方を選択できてこそ、インタラクティブメディアである、「ゲー
ム」という媒体にする意味があるわけで、その要素が無い作品ならば、小説や
映画にすべきだ、と思っているが、確かに「売れる」RPGは圧倒的に「一本
道」なスタイルが多いことからも、円丈師の指摘ではある部分では当たってい
るのかもしれないと思う。

 しかし、このゲームのオビに書いてあった煽り文句、
「今世紀、最強・最大・最後の超ド級RPG」の謳い文句に偽りはない。
この手の大風呂敷を広げたコピーは決して珍しいものではないが、そのコピー
が嘘ではないのは、「ザバッシュ2」だけである。

 ただし、このゲームは、メーカーが既に存在していないことからも分かる通
り、現在は販売されておらず、恐らくオリジナルPC-98版以外の移植版も存在
しないと思われる。
入手が非常に難しい上に、シナリオライターである円丈師はザバッシュ2以降
ゲームに携わっていないので、続編が発売される可能性も限りなく0に近い。

 しかし、ドラクエやFFしか知らないゲーマー達にどうしても知っていて欲
しい。
かつて「ザバッシュ2」という超ド級RPGが存在し、それは、ドラクエやF
Fなんかメじゃないほどに面白いゲームだった、ということを。



AXL 2001

関連リンク:サバッシュ2復刻委員会

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