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「ザナドゥ」


Media :PC88,X1,FM7,MSX等
Maker :日本ファルコム
種 別:2D アクションRPG
発売日:1986年


 実は今までレビューすることを敬遠し続けてきたゲームだ。
ザナドゥというゲームは、1985年に日本ファルコムからドラゴンスレイヤーの
続編としてリリースされたアクションRPGであり、その当時のパソコンゲーム界
において大ブレイクしていたT&Eソフトのハイドライドをも凌駕し、あれから20
年近くが経過した現在でも尚、リメイクされ続けている、日本のコンピュータ
ーRPGを語る上で決して無視することができない傑作RPGである。

 昔のゲームのレビューをする以上、一度はこれについて触れないわけにはい
かないくらい有名なゲームなのだが、正直な話、おいらは現在・過去・未来を
通じて「ザナドゥ」というゲームが大の苦手である。
どちらかといえば、ハドソンがファミコン用にリリースした「ファザナドゥ」
の方はまだ少しは語れそうな気がするくらい苦手なのだ。

 まあ、そういう点で言うとウィザードリィだって、ウルティマだって無視す
るわけにはいかないのだが、おいらはウィザードリィの場合「道に迷う」とい
う単純明快な理由から3Dダンジョンが嫌いで、苦労して育てたキャラクター
が消失したりレベルを下げられたりすることに性格上どうしても耐えられない
為、連続して45分以上プレイしたことがないし、ウルティマは、ファミコン
でポニーキャニオンが移植したものをちょっとプレイして以来「このゲームに
2度と再び触れるくらいなら死んだ方がマシ」という結論をあっさりと出して
しまい、「ウルティマ・オンライン」に対してすらも、一度もやったことはな
いものの「ウルティマ」という名前だけで激しい拒絶反応が出てしまうくらい
嫌いなのだが、ザナドゥに関しては、決してそういうわけではない。
ザナドゥというゲームが持つ独自の世界観や、システムそのものは決して嫌い
ではないのだ。
しかし、その中身となると難しすぎておいらには決して素直に「楽しめた」な
どと言えるようなシロモノではない。


 簡単に内容を説明すると、主人公はキングドラゴンを倒す為に冒険の旅に出
る。基本的にはこれだけだ。
もう少し詳しく説明すると、ゲーム開始直後、主人公は王様から僅かな資金を
貰いその金を元でにパラメータを設定する。
町には、知能や体力などのパラメータを金を引き換えに上昇させてくれる「道
場」があり、最初の資金を使って自分の好きなようにキャラクターメイキング
をしていくのだ。
キャラクターメイキングが終わったら、いよいよ冒険の旅に出るが、いわゆる
現在の普通のRPGとは違い、町と町を行き来してその間にレベルを上げる、
などという生易しいものではない。
一度旅に出たが最後、決して最初の町に戻ることは出来ず、ただひたすら戦い
続け、最低限用意された武器・食料等の店で備品を整え、レベルアップして次
のレベルへと進み、最後のレベルで待ち受けるキング・ドラゴンを倒されなけ
ればなない。

 こういうゲームの場合、おいらは迷わず最初のレベル(ダンジョン)で、上
げられるだけレベルを上げ、十分に強くなってから次のレベル(ダンジョン)
に進むという戦法を取るが、ザナドゥの場合、これが通用しないのだ。
どういうことかというと、レベルが上がれば上がるほど、食糧の消費が早くな
ってしまい、不当にレベルを上げすぎると、そのレベルで敵を倒した時に手に
入るゴールドで普通に食料を買っていたのでは間に合わなくなってしまうから
だ。

 このゲームの場合、「レベルを上げる」ことにすらリスクを伴うのだ。
その上、実はこのゲームでは登場するモンスターの数が有限であり、決まった
数を倒してしまうとそれ以上モンスターは登場しなくなる、食料の消費を考え
るとひとつのレベルに居座ることは不可能だし、レベルアップの際のパラメー
タ上昇はある程度プレイヤーの任意で振り分けることが出来る為に、適当なレ
ベルアップを繰り返すと、次のレベルで全く敵に太刀打ちできなくなってしま
うのだ。

 さらに、このゲームではセーブをする時に手持ちのゴールドを消費する。
つまり「セーブに金がかかるのだ」こういったゲームは決して珍しかったわけ
ではなく、ゲーム中で特定の消費アイテムを購入し、それを消費することと引
き換えに一度だけセーブができる・・・というようなゲームは他にもいくつか
あった。こういうゲームの場合「セーブアイテム」がなければセーブそのもの
ができないようになっている。

 が、ザナドゥがそれらと決定的に違うのは、手持ちのゴールドが無くてもセ
ーブはできる、という点である。
それでは、セーブ時にゴールドを消費するのは馬鹿馬鹿しいではないか、とい
うことになってしまうし、事実、当時のおいらもそう思っていた。
だから、セーブ前にはわざと手持ちのゴールドを全て品物に変えておいて「無
銭セーブ」を繰り返していたのだが、実はこういうことをするとこのゲームで
は「カルマ」というパラメータが上昇するのだ。
このゲームでの「カルマ」は「悪事」と同義で使われている。
他にも特定の殺してはいけないモンスターを殺した場合や、マップ的に脱出不
可能な場所でセーブし、再開した場合(再開時には自動的に脱出できている)
に「カルマ」は溜まっていく。

 この「カルマ」が上昇したからといって、見た目は別段変わったところもな
いように見えるが、実は、このカルマがあると最後のキング・ドラゴンと戦え
なくなってしまう上に、レベルアップもできなくなってしまうのだ。
カルマを下げるアイテムも存在するのだが、これも勿論有限なので、下げられ
るカルマの量ははじめから決まっている。
もし、それ以上のカルマを溜めてしまったら最後、もう絶対にクリアすること
はできないのだ。


 つまり、おいらにとっては、このゲームのこういうところが非常に苦手なの
だ。
「言うたらええがな」と思ってしまうのだ。
このゲームには、このように「ハマリ」(絶対にクリアできない状況)が数多
く隠されているにも関わらず説明書を読んだくらいでは、自分がハマっている
のかどうか決して分からないようになっている。
苦労して敵を倒し、いざレベルアップさせようとした時にはじめて自分がハマ
っているのではないか?ということに気づく。

 前もって自分がハマってしまったことを知っていれば、しなくても良かった
苦労をさせられるというのは、苦労嫌いのおいらとは決して相容れないシステ
ムである。
ザナドゥファンの多くは、このシビアな難易度こそがザナドゥなのだ!という
かもしれないし、それはそうだろうと思うが、少なくともおいらは嫌なのだ。
嫌だったら、嫌なのだ。


 だってそうでしょう?
例えば、あなたが恋人と待ち合わせをして映画を見に行ったとしましょうよ。
その時にですよ、何かの都合で、待ち合わせの時間に10分ほど遅れたとしま
す。あなたは彼女が怒っているんじゃないかとおっかなびっくり待ち合わせ場
所に顔を出すと、彼女はそんなこと全く気にしていないような顔で立っている
ので安心して二人で楽しく映画を見て、何事もなく別れて、それから3年程経
って、意を決してきっちり給料の三か月分のエンゲージリングを購入し、一世
一代のプロポーズに踏み切ったとします。

 その時に彼女が表情ひとつ変えずに、「ごめんなさい、アナタと結婚する気
はないわ、だってアナタは3年前の○月○日のデートの時に10分も遅れたじ
ゃない、じゃ、サヨナラ!」などと言われたら、たまらんでしょう?
「言うたらええがな」と思うでしょう。

 つまり、おいらがザナドゥに言いたいのはそういうことなのだ。



AXL 2002

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