レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「スーパースタープロレスリング」



Media :FAMILY COMPUTER
Maker :ポニーキャニオン(開発:日本物産)
種 別:プロレスゲーム
発売日:1989年



 おいらが遊んだ数多くのプロレスゲームの中で、ある意味では最高のゲーム
だったかもしれない・・・という一本。
 とはいっても、特に絵が奇麗なわけでもなければ動きがいいわけでもなく、
キャラが多いわけでもなければ、技も多くないし、ファイプロほどシステムも
洗練されてはいない。
どこがいいのか?といえば、とにかく熱いっ!のだ。

 具体的には、シングルとタッグの2モードがあり、それぞれ総当たりリーグ
戦を行なって優勝すると、ボスキャラと戦いエンディング。という内容で、選
手は、猪木、馬場、長州、鶴田、天龍、藤波、ベイダー、ハンセン、ブロディ、
ウォリアーズ、ブッチャー・・・あたりがいたような気がする。
勿論実名ではなく「チャーシュー・リキ」とか「J・ツルマ」とか
「G・アッポー」といった感じのネーミングではあるが。

 技のシステムはちょっと変わってて、組み技(誰でも使える組み技)が10
何種類くらいあり、ゲームを始めてキャラを選んだあとでその中から4つ(方
向キー分)好きなのを選べるようになってる。
技のかけかたはいきなり組むのではなく、AボタンとBボタンでパンチ・キッ
クを当て続け、相手がバテると一方的に技を仕掛けられるというもの。
必殺技は選手固定で長州ならサソリ固め、鶴田ならバックドロップという風に
決ってて、確か技をかけるごとに上昇する「溜め」のメーターが一杯までくる
と使用可能になる。
必殺技が成功すると画面が真っ赤にフラッシュバックして決り、そのまま自動
でフォールの体勢に入ってくれるのでのでなかなかカッコいい。


 ただこのゲーム、基本的に相手に技をかけるためには、パンチ・キックのボ
タン連打でバテさせなければいけない。
それなら、連射パッドを使えば・・・と思うかもしれないが、そうはいかないの
だ。
何故ならば、やみくもに連打すれば当たるというものではなく、相手が、パン
チ・キックを繰り出してくるリズムを掴んで、連打していかないと、相手にボ
コボコにされる為、連射パッドは事実上役に立たない。
その上、カウントが「0.1単位」ですすむ上に、勝ち進むごとに敵がかなり
しぶとくなっていく。
後半になると、今までの戦いで連打し続けた指や腕の筋はかなり疲労してしま
う。
例えばブロディを使ってハンセンと戦っていて、やっと、必殺技のキングコン
グ・ニードロップ炸裂を決める。

「これでハンセンも終りだろ。やっと少し休める・・・」

・・・と思ってると、なんと「カウント2・8」で返されたりする。
それでもここで負けるわけにはいかないので、再び攻めてもう一度キングコング
ニードロップ!レスラーがフォールの体勢に入った頃にはもうこっちは、完全に
バテているので、コントローラーほっぽりだして、腕を押さえて肩で息してる。
ところが、またも「カウント2・9っ!!」で返されちゃったりするのである。
そこまでまだ、痛む腕を押して試合再開・・・。
かつて、ここまで、「プレイヤーが実際に戦ってるレスラーと同じテンション
になれゲーム」があっただろうか?
ブロディVSハンセンなんかの「夢の対決」でこうなると、もうこっちは腕は痛い
し、気力は限界にきてるのに、敵が必殺技を返すたびに「名勝負」が実感できて嬉
しくなってくる・・・という倒錯した快感を味わえるのだ。

 そして、このゲームの凄いところは実はこれだけでは終らないのだ。
ここから先はいわゆる「ネタバレ」になってしまうのだが、ネタバレ=やる気をそ
ぐという構図が必ずしも当てはまらないスポーツゲームという特性と、このゲーム
特異性を説明する為に少々目をつぶって頂きたい。

 シングルで優勝した場合、最後の試合のあとに「ボスキャラ」が出てくる。
このボスキャラというのが実は「アンドレ・ザ・ジャイアント」なのである。
知らない人のために一応説明しておくと、このアンドレという人はもう亡くな
った人だが、身長が226cm、体重230kgというとんでもない怪物なの
だ。

 このゲームでは、基本的に猪木だろうがブッチャーだろうがベイダーだろう
が、みんな「同じ身長・同じ体型」をしてるにも関わらず、このアンドレだけ
は普通のキャラの2倍はある。

 しかも、もっと恐ろしいことにアンドレはいくら蹴りまくり、殴りまくって
バテさせても技をかけると、「全ての技が返されてしまう」のだ。

 つまり、これは勝てないのか?
おいらは当時、悩みまくった挙げ句にひとつの仮説を立てた。
「いくら技がかけられないといってもバテるんだから体力は消耗しているはずだ
 つまり、殴りまくり、蹴りまくればいずれは体力は0になってるはずなんだから
 そこでフォールすることが出来れば勝てるんじゃないだろうか?」
・・・という仮説である。

 ところが問題なのは、「どうやって寝かせるか?」ということである。
このゲームのシステム上、いくら蹴りまくってもバテはするがダウンはしない
ようになっている上に、組んで仕掛ける技は全て無効・・・そこで思いついた
のは「ドロップキック」でだ。
自分からロープにとんでうまくドロップキックを当てることが出来ればアンド
レは倒れる。しかも、これは「打撃技」の為、当たれば返されることもない。

・・・・というイチかバチかの格闘理論まで携えて、1面から腕の疲労と戦いなが
ら勝ち進み、やっとアンドレ戦へ。

とにかく蹴りまくった。
30分は本当に連打しまくって蹴りまくって、頃合いを見てドロップキックで倒し
フォール。1・2・3っ!! やっと勝てたのである。

 もっとも、これで勝てなきゃ売り飛ばしているところだが。
このようにたかがファミコンゲームでありながら、「格闘理論」まで必要とする
スーパースタープロレスリング。
強敵との戦いでは、自分が戦っているくらい(腕が)ヘロヘロになるスーパース
タープロレスリング。
おいらはもう、このゲームは完全な「体感ゲーム」だと思っている。
多分、リメイクされることはないだろうし、こういうゲームはもう2度と出てこな
いかもしれないが、ファイプロとはまた違って意味での超名作なのである。



AXL 1996,2001

HOME