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「スーパーマリオ64」

Media :Nintendo64
Maker :任天堂
種 別:3Dアクション
発売日:1996年


 Nitntendo64は1996年の6月に発売されたスーパーファミコンの後継機だが、
その頃家庭用ゲーム機の主流となっていたPlay StationやSega Saturnからは発
売時期で1年半も遅れを取っている上に、記憶容量に於いて圧倒的に不利な旧
来のROMカートリッジ方式を採用しているなど気になる点も多いハードだった。

 その上、本体と同時に発売されたソフトはこのマリオ64以外にはパイロッ
トウィングス64と最強羽生将棋の3本のみで、将棋ゲームの「最強〜」や、
佳作ながらも地味なパイロットウィングスでは、ライトユーザーの需要はあま
り見込めず、事実上「スーパーマリオ最新作」である本作のみがNintendo64唯
一の牽引ソフトとして発売されたことになる。


スーパーマリオ64では、それ迄2Dのスクロール・ジャンプアクションゲ
ームだったスーパーマリオの世界を大胆にも完全な3D空間に変更する、とい
う方法を取った。
それはNintendo64がポリゴン描画に関して当時大変優れた性能を持っていた機
種であることを考えれば当然の結果だったが、旧作からのファンだったおいら
が正直一番不安に思っていたのは、「3Dになったらスーパーマリオではなく
なるのではないか」ということだった。

 スーパーマリオシリーズは第一作からスーパマリオワールドまで、全て左か
ら右への平面スクロールするジャンプアクションゲームであり、これを3Dに
してしまうともはや最悪の場合、全く別のゲームになってしまう可能性すらあ
る。
それは例えば、ゼビウスとソルバルウ(またはゼビウス3D/G)や、ハイドライ
ドとバーチャルハイドライドの関係のように良し悪しはともかく原作と進化版
では全く持ち味の違ったゲームになってしまい、結局それらを結びつけるのは
シリーズとしてキーワードのみになってしまうかもしれない、というの点がお
いらが最も危惧したところだった。

 特に次世代ゲーム機ブームから突如として訪れた2D→3D化の流れは、市
場(ライトユーザー)の要求に拠る部分が大きく、ともすれば正統進化とはい
えない、いびつな進化をさせられたゲームが大量に市場に投入されてしまう危
険を孕んでいたとおいらは思っている。


 余談になるが、DreamCast発のセガ製RPGで、後にGameCubeにも移植された「
エターナルアルカディア」というソフトがある。
DC発売当時はハードの劣勢もあってあまり知名度のあるソフトとは言えなかっ
たが、壮大なストーリーやシステム面などに定評のあったゲームである。
後においらはその評判を聞いてDC版を購入したが、結局、序盤のみをプレイし
ただけで、そのゲームの本当の楽しさまでは味わうことができなかった。

 それは、全てポリゴンで構成されてしまった為に、どこに居ても慣れる迄は
方向感覚が掴み辛いグラフィックや、町マップやダンジョンマップの広さに引
き比べてお世辞にも快適とはいえない主人公の移動速度。
さらには、一回ごとに思わず煙草をふかしたくなる程のロード時間の長さ、ト
ドメにダンジョン内での目を覆うばかりのエンカウント率の高さなどが原因だ
った。
エンカウント率はともかく、他の部分に関しては仮に2Dでグラフィックが構
成されていれば回避できたであろう部分が多く、このゲームなどは現在の流れ
に合わせた為にプレイアビリティが低下してしまった例ではないかと思う。


 話を元に戻すと、そういった意味でおいらにとって「スーパーマリオ64」
というソフトは期待だけではなく不安材料も非常に多かったソフトだった。

 ゲーム内容を簡単に説明しておくと、もはや理由はよく分からないが、例に
よってピーチ姫がクッパにさらわれてしまう。
ピーチ姫の招待でお城にやってきたマリオは、ピーチ姫が誘拐されたことを知
り、ピーチ姫を救出する為の冒険に出る・・・。
ゲームは、お城の内外を基本とし、お城のどこかにあるワープポイントから、
それぞれのゲームステージへ移動するシステムを取っており、スーパーマリオ
ブラザーズ3やスーパーマリオワールドでいうところの「マップ画面」の役割
をお城が担っている。

 ステージは勿論、3Dになっており、旧来のダッシュやジャンプのアクショ
ンに加えて、マリオはジャンプした状態からのヒップドロップや、スライディ
ングなど3D世界に合わせた新アクションも追加されている。


 そして、新たにユーザーに提示されたゲームフィールド(ステージ)はいい
意味でユーザーの期待を裏切ってくれた、といって差し支えないのではないだ
ろうか。
実はおいらはこのゲームをクリアできなかったので、一部のステージしかプレ
イしたことがないのだが、それでも、旧来のジャンプアクションステージを3
D化したものだけではなく、しゃがんだままジェットコースター並のスピード
で滑り降りることがこの上なく気持ちいい雪の世界や、まるでTDLのホーン
デッドマンションのようなお化け屋敷ステージ、さらには、酸素メーターに注
意を払いながら深い海を探索するステージなどなど、よくこんなカートリッジ
1本に収まったものだ、と驚くくらい豊富で広大なステージがそこには広がっ
ており、しかもそのどれもが2Dでは表現できない3D独自の楽しさによって
裏打ちされていたのだ。

 確かに、平面世界をジャンプ&ダッシュで走り抜けるゲームではなくなって
しまったことだけは確かだが、元々スーパーマリオブラザーズというゲームが
持っていた、与える設定を変えることによってゲーム性を変化させていく、つ
まり、ステージによって全く別のゲームに思えるほど面白さのキモは変化させ
ながら、操作するのはマリオ一人、というステージバリエーションの豊富さこ
そがスーパーマリオの楽しさの根本ではないか、とおいらは思っている。
それは例えば子供が遊ぶ公園や空き地を例に取れば木登りをしている遊んでい
る子供達にとっては、1本の木がステージとなるが、一度それをやめて鬼ごっ
こをはじめればいかにうまく鬼から逃げるかということが楽しさのキモへと変
わる。
近くに小さな川があれば、水泳大会がはじまるだろうし、砂場があればお城を
作って楽しむこともできる。
それらの楽しさのキモ(ゲーム性)は、全く違ったものであり、普通にゲーム
を作るとすれば、その中のどれか一つを切り抜いてゲームとして表現するのだ
が、スーパーマリオシリーズ、特にスーパーマリオ64に関しては、公園その
ものをゲームにしている、と考えて貰えれば幾分かでもこのゲームの楽しさが
伝わるのではないかと思う。


 このゲームをプレイしてから7年も経ってしまった、ということが信じられ
ないくらい強烈な印象を残してくれたゲームであり、2Dを3D化したゲーム
ではなく、3D世界で遊ぶ為に生まれたゲーム、それがスーパーマリオ64な
のだとおいらは思っている。



AXL 2003

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