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スーパーロボット大戦F/F完結編

Media :Sega Saturn,Play Sation
Maker :バンプレスト/ウィンキーソフト
種 別:キャンペーン型シミュレーション&RPG
発売日:1997年/1998年


 最近のスパロボシリーズの傾向からすると評価されにくい作品かもしれない
が、紛れもなく初代スパロボシリーズの総決算的な作品。

 本来シミュレーションゲームというのは、アクションゲームなどと比べてあ
まり「時代」の影響を受けにくいジャンルだとおいらは思う。
ゲームにおいて最もも時代の影響を受けるのは、何を置いてもグラフィックで
あり、反面、システムに関してはそれほど(或いはほとんど)時代の影響を受
けることがない。
そしてシミュレーションゲームというのは基本的にシステムこそがゲームが肝
であり、グラフィックに関してはプレイヤーの想像力に委ねられる部分が大き
いことから、過去の外見的に寂しい作品をプレイしたとしてもそれほどの違和
感を抱くことはない。

 また、信長シリーズや三国志シリーズを例に取れば、シリーズものの前提が
ある為に絶対に完成しない、つまり続編を出す為に前作を否定し続けなければ
ならない為、その総合的なクォリティは必ずしも年代順とは一致せず、最新作
を否定し、過去作を何度もやり続けるユーザーを生む。

 だから、殊シミュレーションゲームのシリーズものに関しては、必ずしも最
新作が有利なわけではなく、多くのシリーズの中からユーザーが好きな時に好
きな作品を選んで遊ぶ特権が与えられてきたのだが、スーパーロボット大戦シ
リーズに関しては近年、その定義が当てはめられにくくなってきている。

 それはFの後に発売された「スーパーロボット大戦α」以降、二週目以降の
ボーナスやデータ引継ぎが可能になってきた為だ。
このゲームでは、キャンペーンシナリオをクリアしながら仲間のロボットを増
やし、パイロットのレベルを上げると共に、敵を倒すことで得た資金を使って
自軍ロボットの強化を図ることができる。
ただし、敵から得ることのできる資金は、自軍全てのロボットを完全に強化で
きる額には程遠いため、プレイヤーの趣味や戦略による取捨選択が必要となっ
てくるのだが、最近の作品では1周目に稼いだ資金等をそのまま二週目に持ち
越せる為に何度もクリアすれば、ゲーム序盤から最強装備のロボットを使用す
ることが可能になった。

 また、このシステムの搭載により、どんなにやりこんでも最後のマップをク
リアしてしまえば、せっかく育てた軍団を使う場所がなくなってしまうという
この手のタイプのゲームが持つジレンマも解決している。
このシステムの存在は難易度が下がることをよしとしない硬派ゲーマーを除け
ば、多くのユーザーにとって魅力的な仕様であり、逆にこれがある為にスーパ
ーロボット大戦というゲームは、引継ぎシステム採用の有無、または引き継げ
るデータの多寡によって作品個々の価値を大きく変えてしまったという側面を
持つ。

 そういった視点から見ると1回のプレイがIMPACTと並んでシリーズ最長であ
りながら、引継ぎやボーナス等の特典が一切つかないFという作品は現在では
非常に「辛い」作品だと定義せざるを得ないのだ。


 スパロボはファミコン版「第二次スーパーロボット大戦」という作品に端を
発する(無印スーパーロボット大戦はストーリー、世界観などが全く異質な為、
第二次以降が実質的な初代となる)シリーズで、スーパーファミコンで発売さ
れた「第三次」、第三次EX」へと続き、「第四次」でストーリーが完結する。
 その後、PlaySattionで「新」が発売されるが、これは一作限りで、この後、
「α」を冠する本流シリーズとIMPACTや64、MX、携帯機で発売される単発もの
の共存という形になっているが、初代シリーズの完結編「第四次」には二種類
のアレンジ版が存在する。

 ひとつはPlayStationで発売された「第四次スーパーロボット大戦S」で、こ
れはスーパーファミコン版の第四次にパイロットのヴォイスを追加し、微調整
を行った作品だが、目に見える形ではシステム、シナリオ共には旧版からの変
更はない。
この第四次Sをセガ・サターンに移植する為にはじまった開発作業が、本作F
へと繋がっている。
元々は、Sのベタ移植ということで作業ははじまったらしいのだが、オリジナ
ルであるスーパーファミコン版からの発売から時間が経ちすぎてしまった(無
印第四次は1995年発売、Sは1996年発売)こともあり、第四次をベースに参加
作品、シナリオ、システム面に大幅な追加要素が加わり、最終的には第四次と
はほぼ別物といっても差し支えない作品に仕上がっている。


 その為、初代スパロボシリーズは、第四次、Fという二種類の完結編が存在
することになり、特にシリーズ総決算、最後の開発となったFは、色々な面で
「凄いこと」になっている。

 まず一番特徴的なのが、1本のゲームでありながら無印、完結編の2本に分
かれて発売されているという点で、これは元々1本で発売されるはずだったも
のが、度重なる発売延期の為に、「途中までしかできていないもの」をFとし
て発売、その後に「残りの部分」をF完結編という名前で発売しており、こう
いったゲームは他にもいくつかあるが、個人的には「メーカーが一番やっては
いけないこと」だとおいらは思っている。

 事実、F発売を心待ちにしつつも、雑誌等で情報を仕入れることはほとんど
しなかった当時のおいらは、この事実をFの説明書ではじめて知ることになり、
基本的にも応用的にも怒髪天を突いたという思い出がある。

 しかもFに関しては、まるまるゲーム一本分の定価をつけておきながら、ボ
リューム的にもそれまでのスパロボ作品と比べて半分しかなく、ストーリー的
にも中盤にも入らずに終わってしまう。
しかも、本来99まで上がるはずのキャラクターレベルも40で頭打ちという、
前編にしても不満の残る出来となっていた(確かにFは序盤で終わる為それほ
どレベルの高い敵も出てこないので、仮にそれらができたとしても、あまり意
味はないのかもしれないが、メーカーの勝手な都合で完結編発売までのタイム
ラグに付き合わされたユーザーにしてみれば、やり込み要素は多い方がよかっ
たはずだ)


 そのF発売からたっぷり半年を経てやっと発売されたのがF完結編で、こち
らはFとは逆の意味で大変なことになっていた。
メーカー的にも1本のゲームを2本に分け、結果的に2本分のお金を頂戴した
ことや、度重なる発売延期、Fが単品では内容的に及第点をつけられるもので
はなかったことを反省したのか、Fを通常作品の半分のボリュームとするなら
完結編は単品で通常作品の1.5倍のボリュームを持つ作品として発売されたの
だ。
つまり、Fという作品は両方あわせると通常作品の倍の長さを持つ作品となっ
てしまい、この点だけを見ても、現在のスパロボシリーズの流れ、1周分のボ
リュームは抑えつつ、周回プレイを繰り返して楽しむ、というスタイルに慣れ
てしまうと、1周がIMPACT並に長くて、2週目以降の引継ぎ要素が皆無なこの
作品ははっきりいってダルい。
単にボリュームが大きい、ということだけでなく、半ば強引に2本に分けたこ
とからストーリーの絶対量に対して、不自然に総マップ数が増大してしまって
いることもマイナス要素のひとつだ。

 しかし、それでもおいらはFという作品が好きなのだ。
その理由はまず、単純に現行シリーズと比較してボリュームが大きいというこ
と。おいらも周回やり込みプレイは嫌いではないが、その反動として絶対量が
小さくなるのはなんとなく納得がいかないのだ。

 確かに周回プレイを前提とすると、一周が長いことは多くのプレイヤーにと
って障害にはなりうる、しかし、絶対量を少なくして、周回プレイを推奨する
メーカー側の姿勢に対して「楽してるだけなんじゃないか」と勘繰りたくなっ
てしまういけない子だからだ。

 少し脱線するが、最近色々な場所で禁煙が叫ばれるようになり、JRでも基
本的に駅構内では煙草は吸えず、吸えるのはホーム1、2箇所しかない喫煙所
のみ、それもラッシュ時間帯に吸ったらぶつよ、という規制を打ち出してきて
いて、その方向性の是非は否定できないものの、ホームには喫煙所があるのに
それ以外の場所には喫煙所を作らない(つまり改札を通らない人間は煙草吸う
な)という姿勢や、禁煙の流れにのって灰皿を減らすことは社会的な利益云々
の他に結局、灰皿の管理という実質的な手間を減らしたいという本音がないの
だろうか?といつも考えてしまう。
というか、分煙を建前にするなら、最低でも駅の周りくらいには灰皿を置いた
「隔離病棟」を作るべきなのだ。
さらに言わせて貰えば、諸悪の根源である煙草を売っているJTが「おとなた
ばこ講座」などという、あくびをしたまま意識不明になってしまいそうなアホ
なキャンペーンを張るのは、顧客(喫煙者)に対する露骨な裏切り行為に他な
らない、たばこが有害だということを認めながら、受けるべき批判の矛先を自
身ではなく、ユーザーに転嫁し、自身は「あ、ディライト」などというアンニ
ュイOLの白昼夢の如きイメージ戦略に遁走する姿勢は不愉快だと言わざるを
得ない。


 ・・・かなり強引に話をこじつけただろう、と言われれば一言もないが、そ
れはともかくとして、反省しつつFの話に戻ろう。
そういった意味で、確かに1回のプレイに異常なまでに時間がかかる反面、1
周のみのプレイを前提にしている本作は内容が非常に濃いのだ。

 次に名作と呼ばれる初代シリーズの総決算であること。
おいらは最近のスパロボはこぢんまりとしてしまっている、という不満をもっ
ている。
これは何もマップ総数やシナリオ量だけのことではなく、初代シリーズでは定
番だった、キャラクター/ロボット図鑑がカットされていたり、変形、合体、
発進等のデモも新規参入作品のみに限られ、初代が持っていたスパロボの「お
祭り」的な雰囲気が著しく損なわれてしまっていることに起因している。

 デモに関しては、シリーズ常連作品の同じ変形デモを何度も見ても仕方がな
い、と考える人もいるかもしれないが、それを言ってしまうと、基本的にいつ
もいつも同じような原作ストーリーのクロスオーバーで展開していくスパロボ
に「常連作品」が存在すること自体が問題になってしまうし(確かに問題では
あるのだが)、基本的に1ゲーム1回のみで後は図鑑扱いになる、変形、合体
のデモシーンを「見たくない」と考える層がそれほど多いとは思えない。

 そして、これが一番重要なのだが、Fには「ちゃんとした主人公が存在した」
ということだ。
スパロボシリーズには、既存作品とは別にプレイヤーの分身である主人公が存
在しており、プレイヤーは主人公を通して自分もスパロボの世界に参加できる
という比較的粋な要素があるのだが、Fではこの主人公要素が非常に充実して
いた。
 顔グラフィックや性格、専用ロボットの名前まで自由に変えることができる
上、主人公自身のパーソナルストーリーがあまり細かくないので、プレイヤー
はかなり自身の思い入れを投影することができたのだ。

 以降の作品に登場する主人公や初代主人公だったマサキなどの場合、主人公
自身に関する設定やイベントが多すぎて逆に、参加作品がひとつ増えただけ、
(しかもオリジナルであるが故にプレイヤーにとっては例外なく馴染みのない)
のような印象をおいらは持ってしまうので、この主人公システムについては是
非とも特筆しておきたい。


 こういったお祭り的てんこもり要素が「ちょっとどうかしてしまったんじゃ
ないのかしら」という野比のび太的な感想を以って表現できるくらい詰まって
いる最後の作品が、Fだとおいらは考えている。

 確かに、システム周りのバグも多く、十段階改造できるとはいうものの、武
器改造に関しては一括ではなく、各武器毎に改造しなければならない煩わしさ
が残っている上に、使えるユニット/キャラクターとそうでないものの差が激
しく、イデオンあたりになるとやり方次第でゲームバランスそのものが危うく
なってしまうなど、荒削りな面が目立つ本作ではあるが、そういった荒削りな
部分も、なんとなく小さくまとまりつつ最近のスパロボと比べればまだしも好
感が持てる。


 スパロボというゲームは元々は、「マジンガーZ対デビルマン」だとか「グ
レートマジンガー対ゲッターロボG」のような、本来ではあり得ない、お祭り
騒ぎ的な夢があってこその作品だとおいらは思っているので、作品乱発気味で
それまでの「お祭り」が「日常」になってしまった最近のスパロボよりも、色
々な意味で「無理しちゃってる」Fという作品をどうしても嫌いになれないの
だ。



AXL 2004

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