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スーパードッグワールド

Media :PC-9801シリーズ
Maker :光栄(現:コーエー)
種 別:シミュレーション
発売日:1994年


 光栄ゲームの中でも屈指のマイナーさと根強いファン人気を誇る作品。
98DOS時代の光栄は意外と冒険的なソフトをリリースしており、スペース・オ
ペラを題材としたプロジェネター、アーティストの人生をシミュレーションし
た「ライフisミュージック」などをリリースしており、そのどれもがなかなか
の完成度を持っており、現在でもリメイクを望む声は少なくないのだが、売上
の方はお得意の歴史ものに比べて芳しくなかったらしく、現在、これらの名作、
佳作は歴史の中に埋もれつつある。

 さて、今回紹介する「スーパードッグワールド」は犬のオリンピックを題材
とした犬に於けるアスリートシミュレーションゲームである。
今、これを書いていて思うのは、きっとこういうとっつきの悪さというか、「
ヒトコトで説明してもあまり面白そうな感じがしない」ことが、これらのゲー
ムが忘れ去られてしまった原因のような気がするが、これがどうして面白いの
だ。


 まず、この世界では犬の犬による犬の為のオリンピック(バウリンピック)
というものが存在し、プレイヤーは4年後のバウリンピック出場を目指して、
選手候補となる主人公(犬)を操り、4年間自己の能力を鍛練したり、他の犬
との交流を経験する。

 バウリンピックには、100m走や水泳、跳馬といった人間のオリンピック
でもお馴染みの種目から、嗅道、算数といった犬独特の(?)の種目が用意さ
れており、それぞれ特定の、或いは複数のパラメータの影響によって成績が変
わってくる。
つまり、練習を繰り返すことによってパラメータを上げ、定期的に行われる大
会や、最終目標となるバウリンピックの舞台で好成績をおさめることがこのゲ
ームの目的なのだ。

 ゲーム開始時に主人公とする犬の種類を選ぶことが出来、それが初期パラー
メータや各パラメータ限界値に影響を与えるが、それ以外は基本的にパラーメ
ータ上昇の為の練習の繰り返しとなる。
ところが、世界で通用するレベルまでパラメータをあげる為には、犬種の壁が
立ちはだかる、つまり、犬はその種類によって得意、不得意な分野があり、不
得意な分野ではパラーメータ上昇可能値の限界があっという間にやってきてし
まい、それ以上はパラメータを上げることができないのだ。

 この壁を突破する為には各種イベントをこなす必要があり、このイベントは
仲間やトレーニングコーチとの交流によって行われる為、単に練習を繰り返す
だけでは、決してバウリンピックで好成績をおさめることは出来ず、普段から
他の犬達と仲良くしておく必要があるのだ。


 しかし、先述したようにゲームの肝となるのはパラメータ上げ行為の繰り返
しであり、その点でプレイヤーを選ぶのは間違いないが、このゲームの最大の
魅力はパラメータ上げ行為の先にある、ゲームそのものを解明していく面白さ
にあるとおいらは思っている。
このゲームの難易度は決して低くはなく、最初のプレイで何も考えずに進めて
いくとバウリンピックの出場すら絶望的である。
しかし、何度かプレイを繰り返す内に、壁の突破方法や、練習より効率的にパ
ラメータを上昇させることが出来る練習アイテムの入手方法などが断片的に見
えてくるのだ。
それを次回以降のプレイに活かすことで前回のプレイより効率的にゲームを進
めることができるようになる。
効率の悪いプレイでは一つの種目にしか手が回らなかったのが、効率の良いプ
レイ方法を見つけることによって複数の種目を同時攻略することが可能になる
など、ゲームの幅そのものが大きく変化するのだ。
最近のゲームのように、ゲームオーバーになっても次回以降のプレイにパラメ
ータが繰り越されるような甘いゲームではないが、ゲームクリアに必須となる
「知識」は確実にプレイヤー自身に蓄積される。

 こういった繰り返す楽しさは、良質の戦略級シミュレーションゲームで体験
することができるそれと同じで、犬のオリンピックという一見コミカルな内容
でありながらも、実際にはこのゲームは紛れもないシミュレーションゲームで
あることが分かる。

 自己を鍛練し、定期的なイベントでよりよい結果を目指すというコンセプト
からすると、同じく光栄から発売されている太閤立志伝シリーズに近いものが
あるが、太閤ほどの自由度がない代わりに本作には太閤をはるかに上回るパラ
メータ上げの中毒性がある。
今後リメイクされるかどうかはなんともいえないが、プレイして決して損のな
いゲームだ。



AXL 2003

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