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「初代熱血硬派くにお君」


Media :Supuer Famicom
Maker :テクノス・ジャパン
種 別:アクションRPG
発売日:1992年


 以前、珍しいものを見たことがる。
それは奇しくもこのゲームが発売された1992年頃の新宿でのことだった。
当時、新宿のサングラス屋の店員をしていたおいらは、いつものように閑散と
した店の中で暇潰しも兼ねたサングラス拭きに精を出していた。

「大変、大変!」

 そう言って、おいらに耳打ちをしてきたのは同僚の女の子だった。
「?」という顔で彼女の指差す方を見てみると、なんと100m向こうから列を成
してやってきたのは、「ツッパリ」だった。
ツッパリというのも死語になってしまたったが、言わせれて貰えれば既に1992
年当時ですら立派な死語だったのだ。

 しかし、100m向こうから列を成してやってくる6人構成の編隊を組んで歩い
てくる「それ」は、ヤンキーなどという生易しいものではなく、どこからどう
見てもまごうかたなき真性の「ツッパリ」だったのだ。

 まず、一番前に「番、張ってます」と言いたげなソリコミリーゼントの高校
生が立ち、その後ろを何らかのズベ公とでも形容すべき二人のスケバン風女子
高生が続く。
さらにその後ろに「頑張ってます」という感じで前方のオトコに比べると多少
迫力不足の二人の男子高校生。
そして最後は、「旗、持ちます」という感じオトコが殿を務めていた。

 一応説明しておくと、当時としても、特に東京都心でこういった連中を見る
ことは限りなく不可能に近かったのだ。
それも「単品」ではなく一列縦隊を成したフルコースを直接目にすることなど
街で偶然みのもんたに道を聞かれることくらいに珍しいことだった。

「すげぇ・・・」
おいら達二人は、サングラスを持ったまま、目の前を悠々と通り過ぎていく一
団を呆然とした面持ちで見送った。

「100%・・・修学旅行だよね?」

 しばらくしてそう呟いた彼女においらは黙ってうなずくことしかできなかった。


 というような感じで、世間では既に「ツッパリ」が風化していた1992年に登
場したのが、本作「初代熱血硬派くにお君」である。
元々、くにお君が登場したのは1987年のアーケードゲームとして、であり、
その当時はビーバップハイスクールといった漫画も人気を得ており、それなり
に市民権(?)のあったジャンルだったのだが、時の流れは早い。

 あっという間に「ツッパリ」という概念は過去の遺物と化してしまった。
その為、くにお君シリーズは、一転、スポーツゲームになったりして「熱血硬
派」というタイトルからは明らかに異質なコミカルなキャラクターとして再就
職の道を歩むことになった。

 この一連の(あまり熱血硬派ではない)「くにお君ゲーム」はなかなかに良
作が多く現在でもファンは多いのだが、そんな頃に突如としてくにお君は「初
代」の肩書きを引っさげてスーパーファミコン用ゲームとして復活を遂げた。

 ゲームの方は、ストーリー仕立てのアクションRPGで、大阪に修学旅行に来た
くにお君達が地元の高校の抗争に巻き込まれて活躍する、というものだが、こ
のゲームの凄いところは、舞台となる大阪の町をこれでもかといわんばかりに
細部まで再現している点にある。
おいらは、このゲームをプレイした当時、一度も大阪に行ったことはなかった
のだが、昨年初めての大阪旅行で梅田の地下街を散策した時に真っ先に思い出
したのがこのゲームだった。

 ところで、仮にもRPGである以上、ザコ敵退治を繰り返して経験値を稼ぎ
レベルを上げる、というのがお約束だが、その辺のシステムへの取り込み方が
このゲームの場合物凄いことになっている。

 具体的に説明すると、くにお君が大阪のどこかを移動している時、ゲームに
は直接関係のないサラリーマンや学生、OLなども歩いているのだが、エンカ
ウント条件を満たすと、それら一見ごく普通の人々が「なめたらあかんで!」
などといいつつ、突如としてくにお君に喧嘩を売ってくるのだ。

 想像して欲しい、夕暮れの商店街で買い物カゴをぶら下げた八百屋帰りの普
通のオカンが、白ランを着たツッパリにーちゃんに喧嘩を売るその様を。
しかも、ごく稀に、たまたまそこにいた別の通行人、例えば会社帰りのOLの
おねーさんなどが「弱いもんいじめは卑怯やで!!」などと言いつつくにお君
の加勢をしてくれることもあるのだ。

 その場は一転修羅場と化し、OLの腹に膝蹴りを入れるオカンやら、くにお
君を羽交い絞めにするサラリーマン、果ては、八百屋にビンタをかます女子高
生・・・というような地獄絵図がそこら中で繰り広げられるのだ。

 しかも、かなり頻繁に。
先ほども書いたように、当時一度も大阪に行ったことのなかったおいらにとっ
てこのゲームが与えた影響は計り知れない。

「大阪って・・・そうなんだ」

 以来、大阪に対する物凄い誤解は10年近く続くこととなったのだ。



AXL 2002

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