レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「聖飢魔2〜悪魔の逆襲〜」


Maker :CBSソニー
Media :FAMILY COMPUTER
発売日:1986年
種 別:アクションゲーム


 たまたまこのゲームの原稿を書こうと思ってPCを起動したらYahooニュースに
凄い記事が載っていた。
2002年のサッカー・ワールドカップ公式コンサートでB'zとエアロスミスが競演
するというのだ。
恐らく今、日本中の自称洋楽ファン達は唇の先をぐにゃりと歪ませてあらん限り
の罵詈雑言をB'zに浴びせつつ、「エアロは死んだ!」とかなんとか言っている
であろうことが想像に難くないったらありゃしないのだ。
B'zの楽曲には以前から、大人しい言い方をすれば「誰がどう聞いても既存のエ
アロの曲にしか聞こえない曲」が何曲かあり、それをリスペクトと取るか、パク
りと取るかは微妙なところだが、そんなこともありエアロファンのB'zに対する
評判は以前から決して良いものではなかった。

 エアロスミスというのは1970年代に結成されたアメリカのハードロックの大御
所バンドで、B'zの方はまあ、いわゆるあのB'zのことである。
おいらの場合、もちろんエアロスミスも好きだが、実はB'zも好きだったりする。
ただし、エアロスミスとB'zの音楽性は、いかにB'zの方がエアロの楽曲をパクり
まくろうが根本的に全く違うものであり、エアロとB'zが競演するということの違
和感たるや、夕食の膳において刺身にカレーをかけることの比ではない。
だからといって、カレーや刺身がそもそも個別の料理として間違っているわけで
はない、その意味において、おいらはエアロもB'zもそれぞれに好きだが、競演は
見たくない、と思うわけである。

 そして、おいらがその記事において最も衝撃を受けたのは、競演そのものでは
なく、B'zを指して「人気ロックグループ」と書いてあることだ。
以前から、ワイドショーなどで「日本を代表するロックグループのB'zが・・・」
というような言い回しを何度か耳にしたことはあったが、そもそもB'zはロックで
はない。B'zがロックだとすれば、GLAYはハードロックで、ラルクはヘヴィメタル
である。
そろそろ早いテンポの曲を何でもかんでもロックだ、という言い方をするのはや
めて欲しいのだが、「ロック」という言葉が一昔前の「ニューミュージック」と
同義で使われだした時、既にロックは死んだのかもしれない。

 などとゲームレビューの冒頭40行を使ってこんなことを書いてしまっていい
のか?という気もしないではないが、日本でのロックバンドと言えば、おいらと
してはやっぱり聖飢魔2を挙げたい、という方向で軌道修正を図ってみたいと思
う。

 聖飢魔2がデビューしたのは、1986年のこと、往年のハードロックバンドKISS
そのままのメイキャップで一世を風靡し、そもそもデーモン小暮が「あんな感じ
のヒト」な為に、世間的にはイロモノバンドとしての認知度の方が高いような気
もするが、実はちゃんとしたハードロックバンドなのだ。
ファーストアルバムの「誰も聞いてくれるな!」といわんばかりの泥臭いマニア
ックぷり、セカンドアルバムの完成度、サードアルバムの「かなりセールスを意
識してみました」な感じ、どれを取ってもいろんな意味で正統派である。
とかなんといいながら、実は4thアルバム以降は一度も聞いたことがないのでそ
の後にリリースされた曲に関しては全く知らないのだが、とにかくファーストか
らサードまでは完璧なのだ。

 その聖飢魔2をゲームにしたのがこの作品「悪魔の逆襲」である。
このヒトコトが出るまでに、既に58行を費やしてしまったことに対して多少自責
の念はあるのだが、このメルマガはこれから先もきっとこんな感じだと思うので
許して欲しい、結局、情報誌ではなくて読み物なのだ。

 このゲームをリリースしたのは、今をときめくソニーブランドの尖兵、CBSソニ
ーであり、同時に参入第一作である。
ゲーム業界でのソニーブランドといえば、今では、SCEIと相場が決まっているが、
最初に参入したのはCBSで、後にEPICがこれに続いた、CBSとEPICがゲーム業界と
いう土俵でどこがどう違うのかは永遠の謎だが、SCEIが登場するのはPlay Stati
on以降の話だ。

 深謀遠慮とはこのコトか!と今になってつくづく思うのだが、今にして思えば
最初に参入したCBSやEPICというのは、ゲーム業界においては完全な「鉄砲玉」
だったのだ。
任天堂一強支配の頃に、CBSやEPICは喜々として箸にも棒にもかからないゲーム
を次々にリリースしまくっていた、2社で勝手に第二次アタリショックを起こそ
うとしていたフシもある。
こうやってチクリチクリと任天堂にダメージを与えつつ、自社ハード発売と共に
SCEIを参入させ、基本的には「いい子ちゃん」なゲームばかりをリリースし始め
たのだ。

 そんな悪夢のソニーブランドの尖兵、その名も「悪魔の逆襲」。
もうこれ以上ないほどにピッタリなネーミングである。
ゲームの内容を簡単に説明すると、プレイヤーは主人公のデーモン小暮を操り、
ゼウスに捕らえられた構成員(メンバー)を救出することが目的のアクションゲ
ーム。
しかし、メンバー1人を救出する為には、一定数のアイテムを集める必要がある
のだが、これがもう「バカも休み休み言え」と言いたくなるような数で、例えば
信者(ファン)を250人だとか、リンゴを50個だとか、考えただけで気が遠
くなってくる。

 これだけやって、やっと一人救出である。
当時の構成員の数なんかもう完全に記憶の彼方だが、仮にデーモンを除いた残り
が4人としてもこの4倍。
しかもコンティニューは裏技扱いなので、基本的には、ワンプレイクリアを求め
られる。
このように非常に良からぬシステムを採用しつつも、その他の面に関しても全く
隙がない。

 操作性はやっぱり悪い。
操作がしにくいということではなく、ジャンプ時の姿勢制御が難しく、なかなか
思った場所に移動できない上に、マップそのものがアスレチックな感じでジャン
プ移動を多用させるタイプのものになっているというクソゲーではありがちなパ
ターンが採用されている。

 画面構成もヤバイ。
先ほど書いた夥しい数のアイテムが数ステージに分けて「ぶちまけて」あるもの
だから、「画面中アイテムだからけ」というか「パックマン一歩手前」というよ
うな惨状を呈している。
ここら辺はダウボーイを彷彿とさせる。

 そして最後にBGMだが、これがひどい。
BGMは、聖飢魔2のヒット曲、「蝋人形の館の「インスト部分のそれも冒頭だ
けをアレンジしたものが延々リピートでかかり続ける」のだ。
こればっかりは一度聞いて頂かないと分かって貰えないが、大体5分以上連続で
聞いてると頭がどうかしてくる。


 そんなわけで、勿論、クリアはしていないのだが、おいらの友人に「クルクル
ランドをやらせたら日本一!」が口癖という、やたら下らないゲームを命がけで
やりたがるオトコがいて、以前二人で、2時間ほどぶっ通しでこのゲームに挑戦
したことがあるが、それでも、最初の構成員すら救出できなかった。
ちなみに彼とはそれ以前にも、「5時間連続チャンピオンシップロードランナー
の夕べ」(ただし二人だけ)というようなものに無理矢理つき合わされ、泣いて
泣き濡れたこともある。


 というわけで、クソゲーという方向で評価するなら、かなりレベルの高いクソ
ゲーであり、普通に評価するとろくでもないゲームである。



AXL 2002

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