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三国志

Media :PC98,PC88,FM-7,X68000,Family Computer,Super Famicom,Gameboy等
Maker :光栄(現:コーエー)
種 別:戦略級シミュレーションゲーム
発売日:1985年


 信長の野望、蒼き狼と白き牝鹿と並ぶ光栄歴史三部作のひとつ。
とはいうものの、現在では蒼き狼〜の方は長らく新作もリリースされておらず
売れ筋商品という意味で言えば、信長、三国志に真三国無双でも加えた方がよ
さそうな気がしないでもない。

 それはともかくとして、当時歴史三部作と呼ばれたこの三作品は、単に歴史
を題材にとった戦略級シミュレーションゲームということだけではなく三者三
様に独自のシステムを持っていた。
例えば信長の野望では経済力が最重要視される。
戦力は人の力ではなく物量によって決するというのが、同シリーズ全国版まで
の特徴で、大名以外の配下武将は登場せず、また大名個人の戦闘力もそれほど
ゲームに影響を及ぼさなかった。
対して三国志は人の力がものを言うゲームだった。
初代三国志には250名を超える実在武将が登場し、それぞれに固有をパラメ
ーターを持っていた。
呂布や関羽クラスの猛将ともなれば、ザコ武将が率いる数倍の兵力など何なく
打ち破ることが出来たし、諸葛亮孔明のアドバイスはその的中確率が限りなく
100%に近い反面、知力の低い武将のアドバイスは、朝のテレビでやってい
る星座占い並に信用がおけなかった。
その上、信長の野望とは違い三国志では人(武将)が最低一人でも駐留してい
なければ国を治めることができなかった。
つまり、三国志では国の経済力以上に人に重きがおかれていたのだ。
そして、蒼き狼〜シリーズの醍醐味は「世代」だった。
蒼き狼の場合、国の経済力も武将の能力もそれなりに重要視されていたものの、
オルドという後宮システムの存在により歴史三部作で唯一、「人を生み出す」
ということが出来たのだ。
征服した敵国の姫を自分の妻に向え、子供を生ませることで一族を増やし、決
して裏切ることのない血縁武将で中心を固める。
または自分の娘と有力な家来を婚姻させることにより血縁に引き込む、そして
いくつもの世代を超えて遂にはユーラシア大陸を統一する、という壮大な内容
だった。

 こうして見ると、それぞれのゲームには各々はっきりとした特徴があった。
もっとも、後には信長シリーズはかなり三国志シリーズに歩み寄り、事実上、
舞台設定以外に於いてはほとんど差がなくなってしまったり、三国志シリーズ
はどういうわけか太閤立志伝へと歩み寄りシミュレーションゲームというより
リコエイションゲーム化してしまったが、そんな中で唯一己の牙城を守ってい
た蒼き狼シリーズが冷や飯を食わされるはめになってしまったのは何とも皮肉
なことである。


 さて、おいらがはじめて光栄の三国志で遊んだのは中学二年の頃。
当時のおいらは信長の野望全国版にハマっており、毎日とりつかれたようにこ
のゲームで遊んでいた。
一通り信長を堪能したおいらは、信長の野望がこんなに面白いのだから、同じ
会社が出している三国志だって面白いに違いない、と三国志購入を思い立った
のだが、問題もいくつかあった。

 ひとつはそれ以前、中学の理科の先生がPC88mkIIを持っているという噂を聞
いてその先生に直談判。
スクウェアのアルファと引き換えに、信長の野望と蒼き狼(いずれも初代)を
貸して貰ったのだが、説明書がついていないこともあいまって蒼き狼の方は何
をすればいいのか全く分からず途中で投げ出してしまった、ということがあっ
たのだ。

 もし三国志もそんなことになったら目もあてられないし、何よりも三国志は
ズバ抜けて値段が高かった。
信長の野望全国版も9800円というアレな値段だったが、三国志に至ってはファ
ミコン本体と同額、つまり1万4800円という平たくいってコンチクショウ的な値
段が設定されていたのだ。
余談だが、とにかく高かった当時の光栄製ゲームだったがこの上にトップマネ
ジメントの1万9800円というのが君臨していた。
おいらは当時、てっきりこのソフトはビジネス用アプリケーションソフトだと
思っていたのだがつまるところこれも単なる経営ゲームに過ぎなかった。

 1万5千円といえば、当時のファミコンソフトが3本は買える値段であり、デ
ィスクシステムなら30回は書き換えゲームが遊べる値段でもある。
それに三国志購入前のおいらは三国志演義などこれっぽっちも知らなかったし
面白くなかった日には悔やんでも悔やみきれない。
こんな少年ユーザーの心理を見越してか、当時の光栄はなかなかにびっくりす
るような商法を行っていた。

 それが「抄本三国志」というソフトである。
このゲーム、基本的には同社の「三国志」と同じゲームなのだが、値段の方は
8800円に押さえられている。
ただし、ゲーム開始時に選択できるシナリオに制約があり、多人数プレイもで
きないようになっている、いわば「with パワーダウンキット」なゲームだった。
こういう商法はフォトショップなどの高額アプリケーションの世界では現在で
も行われているが、ゲームでこんなことをやったのはおいらが記憶する限り後
にも先にもここだけのような気がする。
しかし、考えてみればまだこの時は、抄本を無視して三国志を購入すれば、抄
本は買わなくてもいいだけ良心的・・・というか、本来はそれが当たり前なの
だが、最近の真三国無双に於ける猛将伝商法に至っては、全てを楽しむ為には
両方のソフトを買わざるを得ず、さりとて"with パワーアップキット"のような
同梱版を敢えて作らないところにもそこはかとないクヌヤロウ感を覚えてしま
う。


 というようなわけで、おいらは迷いに迷った末に、三国志(高い方)を購入
した。
結論からいうと、非常に面白かった。
1万4800円という値段は客観的には今でも高かったと思うが、あの内容に比べる
と悔しいけれど、お前に夢中、である。
しかし、その反面、手放しで楽しめるようになるまでのハードルも決して低くは
なかった。
早い話が、登場する武将が誰が誰なのか全く分からないのだ。
先程も書いたように当時のおいらは劉備も曹操も、関羽も張飛も、孔明すら知ら
なかった、聞きなれない中国名の武将達がわんさと出てくるこのゲームに感情を
移入しながら楽しめるようになったのはかなり後のことで、実ははじめてこのゲ
ームをプレイした時は「わー、このおじいさんはなんだか優しそうな顔をしてい
るな」と思って董卓を選んでしまったくらいなのだ。

 それでも、付録としてパッケージについていた、武将名鑑や三国志にまつわる
故事の解説などが呼び水となり、吉川英治の三国志を読破してしまうくらいにハ
マってしまった。


 三国志シリーズは現在でも続編が開発され続けている人気シリーズだが、おい
ら個人の好みでいえば、この初代が一番である。
直接の続編である三国志IIもかなり出来の良い作品だったが、あのゲームには、
武将同士の相性値を設定してしまった為にゲームとしては逆に面白みを削いでし
まう結果になってしまったように感じられるのだ。
例えば、関羽だったら劉備と相性がいい反面、曹操などとは相性が悪くすぐに忠
誠度が下がってしまう。
その為、結果的には、個々の君主は三国志演義通りの家臣団を編成するようなプ
レイに偏らざるを得ず、自由度は前作より下がっているように感じられた。
この作品では、相性値の扱いを史実通りにするかランダムの仮想モードにするか
を開始時に選ぶことがでたのだが、仮想モードにしても相性値そのものがなくな
るわけではなく、ランダムに相性が決定されてしまうので、こちらはこちらでな
かなか相性の良い武将をみつけることが出来ず苦労した覚えがある。
IIは、仮想モードとは別に、相性値の縛りをなくせるような設定のモードがあれ
ば、と今でも悔やまれる作品である。



AXL 2003

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