サクラ大戦 Media :Sega Saturn,Windows,DreamCast Maker :SEGA,RED 種 別:ドラマティックアドベンチャーゲーム 発売日:1996年 一般にバンゲリングベイがクソゲーの代名詞のように言われるのは、そもそ もユーザーがゲームのジャンルを勘違いしていることに起因している、とおい らは思っている。 つまり、あのゲームは本来シミュレーションゲームだとおいらは思うのだが、 ユーザー側はそれをシューティングゲームとして評価しようとするから、不当 ともいえるほど低い評価に甘んじなければならなかった、という悲劇が起こっ たのだ。 仮にあのゲームがもっと後になってから発売されていれば、また評価も変わ ったはずである・・・といようなことを考えつつ生きてきたおいらではあるの だが、見事にその轍を踏んでしまった。 それは今回紹介するサクラ大戦というゲームをプレイしたときのことだ。 簡単に内容を説明すると、舞台は架空の大正時代、主人公は帝国華撃団の隊長、 大神一郎となり、華劇団を率いて帝都壊滅を目論む組織、黒之巣会と戦いを繰 り広げながら、普段は帝国劇場の踊り子である隊員の少女たちと触れ合い、彼 女達を側面からバックアップする・・・といようなゲームなのだ。 帝国華劇団は表向き、帝国劇場の歌劇団。 実は特殊部隊という二つの顔を併せ持つ組織で、日常のパートは帝国劇場を舞 台にアドベンチャーとして語られ、戦闘シーンは光武と呼ばれるロボットを駆 る戦術級シミュレーションゲームとして表現される。 ここでおいらはかなり大きな勘違いをしてしまった。 このゲームのメインは戦闘シーン、つまりSLG部分であると、誰に頼まれた わけでもないのに勝手にそう思い込んでしまったのだ。 何故そう思ったのだ?と聞かれれば、「基本的に世間とはそうしたものだから」 としか答えられないのだが、大体にしてキャンペーンタイプのSLGシーンの あるゲームというのは、SLG&RPGというジャンルに分類され、「敵と戦 う→レベルが上がる・お金が貰える→自機を強化する→敵と戦う」というゲー ムだと強烈にインプットされているおいらにとって、このゲームは最初実に不 可思議なゲームに映った。 まず、この手のゲームには絶対ある筈の「レベル」という概念が存在しない。 次に、光武そのものを改造、強化することができない。 これでは面白くないではないか、と思ったおいらはサクラ大戦ファンにしてみ れば大馬鹿野郎真っ只中であろう。 おいらは基本的この手のSLG&RPG(だと勝手に思っていた)での最大 の楽しみは自分の手間と時間をふんだんに費やして卑怯なまでにセコセコと自 機を強化してから、圧倒的な戦力差で敵軍を葬ってにっこり笑う、ということ なので、レベルがない、ということに気づいた時点で平たくいって焦りまくっ た。 そしてその時になってはじめて説明書というものを開いてみた。 そこで分かったことは、アドベンチャーパートで発生するイベントで各隊員の プレイヤーに対する信頼度が上下する、ということ。 そして信頼度が高ければ高いほどSLGパートで有利になる、つまり光武が強 くなる、ということ。 最後に、信頼度とは別に恋愛度というものがあり、信頼度はチャプターが進む たびに一旦リセットされるが、この時、信頼度が恋愛度に還元され、恋愛度は リセットされることなく蓄積されているということだった。 ああ、なるほど・・・とおいらは手を打った。 つまりこのゲームではレベルだとか、改造だとかいう概念がなく、その部分が 恋愛アドベンチャー要素になっているのだ。 アドベンチャーパートではシナリオにそって進み、LIPSシステムと呼ばれ る時間制限付きの選択肢を選び、ところどころで自由行動パートが入る。 自由行動パートでは、行動回数が制限されているがプレイヤーの自由に帝国劇 場内を散策することが出来、そこでイベントに遭遇することがある・・・とい ういわゆる「同級生方式」になっている。 つまりこのゲームは「同級生+SLGRPG」なのだ、とおいらはここでも 大きな勘違いをしてしまった。 確かにこのゲームは「同級生+SLG」的な部分はあるのだが、そもそもRP Gに相当する部分はない。 アドベンチャーパートで信頼度を稼ぐことで戦闘時に有利な補正を受けるこ とはできるが、その補正はあくまでも一話限りで次のチャプターに入るとリセ ットされてしまうのだ。 おいらは勝手に、恋愛度による補正も入るものだと決めてかかっていたので、 このゲームを頑なにSLG&「RPG」だと信じていたが、実はこのゲームで は恋愛度による戦闘力補正はない。 ちなみにおいらがやっとその事実に気づいたのはゲームを半分進めてからの ことで、平たくいって愕然とした。 なにぜおいらは「卑怯なまでにユニットを強くしたい」ということの為だけに 一旦途中まで進めたゲームをやり直して、以後はなるべく信頼度を貰えるルー トを探しながらロードを繰り返してプレイしていたのだ。 そのおいらの苦労は、恋愛度を上げるということの役には立っても、ゲーム バランス破壊ギリギリの強力ユニットを作るということにはほとんど役に立っ ていなかったことになるのだ。 ここまで読んで、サクラ大戦をプレイしたことのないヒトは、じゃあこのゲ ームは一体何が面白いんだろう?と首をかしげたことだろうし、逆にサクラ大 戦ファンのヒトビトは「このオトコの頭は大丈夫か?」と首をかしげることだ ろう。 つまり、おいらのやってきたプレイ方法はサクラ大戦本来の楽しみ方とは全 く合致していないのだ。 このゲームのジャンルはあくまでも「ドラマティックアドベンチャー」であっ て、決してSLGではなく、いわんやRPG要素などははじめから入ってはい ないのだ。 プレイヤーはあくまで帝国華劇団隊長、大神一郎として、華劇団が遭遇するド ラマを楽しみ、隊員たちとのほのかな恋愛を疑似体験することこそがこのゲー ムの正しい楽しみ方なのだ。 後半にくっついているSLG画面はあくまでもおまけに過ぎず、そもそもや たらと簡単に出来ている。 ファンにしてみれば、その簡単なSLGパートの為にわざわざユニットを強化 したいというおいらの気が知れないであろうことは想像がつくが、頭からこの ゲームをSLG&RPGだと決めてかかったおいらにとっては、「ドラクエ8 のラスボスが仮にレベル1で倒せる程度の弱さだったとしても、それを理由に (おいらにとっては至福の時であるところの)レベル上げをしなくていい、と いう理由にはならない」という比較的一途な思いによって、ひたすらレベル上 げの方法を模索していたのだ。 このゲームが「アドベンチャーゲーム」に分類される最大の理由は、「良く も悪くもシナリオ次第」という本作の宿命に根ざしている。 アドベンチャー部分での目的は選択肢を選び、隊員の信頼度を上げることだが、 それは今まで書いてきたように戦闘パートを決定的に左右するものではない。 かといって、選択肢次第でシナリオの内容が全く違ったものになるかといえば そういうものではないので、あくまでもはじめから用意されたシナリオをゲー ム的に楽しむ為の手段として、LIPSシステムや戦闘パートが「後付けされ た」という印象をおいらは持った。 このゲームはいわゆる原作付きゲームではないが、元々こういうシステムの ゲームが作りたいということからシナリオが作られたわけではなく、シナリオ ありきでゲームとしてシステムを付けたのではないだろうか。 SLGパートの存在についても、ストーリー上で必須となる黒之巣会と華撃 団の戦いを表現するために選ばれて手段であって、それが存在することでSL Gに馴染みのないライトユーザーを弾かない為に難易度がかなり低く抑えられ ているのではないだろうか。 また、キャンペーンタイプのSLG&RPGというのは、確かに下手に進めて しまうと途中で取り返しのつかないことになることがよくある為、それを理由 にゲームが投げ出されることのないように敢えてポピュラーなレベル方式を導 入しなかったのだとおいらは見ている。 何故ならばこのゲームにとって最も重要な要素はシナリオであり世界観であ る以上、それ以外の要素がプレイの障害となってはならないからだ。 これが「良くも悪くもシナリオ次第」と書いた理由だが、ではその肝心のシ ナリオはどうなのだ?と言われれば、やはりあれだけ売れるだけのことはあり なかなか面白い。 だから、ジャンル表記通りアドベンチャーゲームとして見ればよく出来た作品 だとおいらも思うのだが、反面、そうなると戦闘パートの存在そのものを煩わ しく感じてしまうのも確かだ。 帝国華撃団対黒之巣会というストーリー上重要な主題を描く以上、その存在 は仕方がないことなのかもしれないが、個人的にはゲームはゲームとしてシス テムをまとめて欲しかった、というのが正直な感想である。 AXL 2004 |