レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「ゼルダの伝説」


Media :FAMILY COMPUTER/同DISK SYSTEM
Maker :任天堂
種 別:アクションRPG
発売日:1986年2月21日


 ファミコンのRPGとしてはかなり早い時期にリリースされた作品。
ちなみに、ファミコンRPGの代名詞といわれるドラゴンクエストよりもこちら
の方が数ヶ月早く発売されている。
おいらはファミコン最初のRPGはハイドライドスペシャルだと思い込んでいた
のだが、実は、ハイドライドスペシャルが発売されたのは、同年の3月であり
やはり僅かにゼルダの伝説の方が早いのだ。

 ということはつまり、ゼルダの伝説こそファミコン最初のRPGなのか?とい
うと、ここに意外なる伏兵が現れる。
「頭脳戦艦ガル」だ。
この「スクロールRPG」と名付けられた悩ましく哀しみに満ち溢れたならず
者ゲームが発売されたのは、何と1985年の12月。
一般にガルというゲームは、RPGブームにあやかって、シューティングゲーム
に無理矢理RPGという名前を付けて売ろうとしたもの、だと思われているが、
少なくとも、ファミコンの世界ではRPGというジャンルそのものがまだ完全に
無名だったのだ。

 パソコンでは既にハイドライドの大ヒットがあったとはいえ、いわゆるドラ
クエなどのファミコンRPGの大ヒットで二匹目のドジョウ(?)を狙ったとい
うのは誤りである。

 しかし、ここで一つの問題が出てくる。
言うまでもなく、それでは「ファミコン初のRPGは頭脳戦艦ガルなのか?」と
いうことである。
いくらそれが事実だったにしろ、そんなことを認めてしまった日には歴史が変
わるくらい恐ろしいことである。
さらに調べてみたところ、ガル以前にRPGゲームが1本だけあったのだ。

 それは、1985年8月発売のドルアーガの塔のファミコン版。
あのゲームが厳密な意味でRPGなのか?という点に関しては少々微妙な問題が残
る。世界観は完全なファンタジーだが、少なくともドルアーガには「経験値」
やらレベルアップという概念が存在しない。
しかし、同時にガルにもそれは存在しないし(敵を破壊すればするほど連射速
度が上がる、という程度の成長要素はあったようだが)、ゼルダの伝説でも経
験値制は取られていない。

 経験値&レベルアップ=RPGと考えるのならば、最初のRPGはやはりハ
イドライドスペシャルとなり、それにこだわらないのであれば、やはりドルア
ーガの塔ということになる。
というわけで、どちらにしてもガル=ファミコン最初のRPGという驚天動地
の事実を認めることだけは避けられたので良しとしておこう。


 さて話をゼルダの伝説に戻そう。
21世紀を迎えた今日でも、スーパーマリオと並ぶ任天堂のキラーソフトシリー
ズの元祖が本作だ。
ファミリーコンピュータ専用ディスクシステム専用ソフトとして、本体と同時
発売された、他の同時発売ソフトは全て旧作のディスク版であり、ゼルダの伝
説だけが唯一のオリジナルソフトだったのだ。
つまり、ゼルダの伝説はその誕生の時からキラーソフトとしての宿命を背負っ
ていたことになる。


 物語は大魔王ガノンにさらわれたゼルダ姫を助ける為、主人公リンクが世界
に散らばったトライフォースを集め、ガノンを倒すというもの。
トライフォースはそれぞれ難易度の異なるダンジョンの奥深くに隠されており、
そのダンジョンをボスを倒すことで手に入れることが出来る。
また、モンスターが落とすお金を集めて新たな武器を手に入れたり、ライフゲ
ージを最大値を増やすことのできるハートの器を手に入れることが出来る為に、
難易度の低いダンジョンからひとつひとつ攻略していくことでリンクはより強
くなり、高位のダンジョンにも比較的楽に戦えるようになるのだ。

 画面はトップビュー、スクロールは切り替え式を採用しており、リンクの主
な攻撃は剣。
ボタンを押すとしばらくの間前に剣を突き出し、そこに当たり判定が発生する。
また、ライフゲージが満タンの時に限り、剣の先からフォースを発射すること
ができる。
他にもゲームを進めていく内に、一定時間敵の動きを止めることの出来るブー
メランや、離れた敵を攻撃できる弓矢、設置してから一定時間後に爆発し、敵
を巻き込む爆弾などを入手することができる。

 おいらは、ゼルダの伝説の最大の魅力は、これらの武器が単に敵を倒す為だ
けではなく、他の使い方もできるという点、例えば爆弾は、隠し扉や隠しショ
ップなどを発見する為にも使える。
この為、プレイが単調にならず、スーパーマリオブラザーズのような隠し要素
を探す楽しさもあるのだ。


 ところで、変な言い方だが、どうしてディスクシステム第一弾ソフトはゼル
ダの伝説だったのだろうか?
冒頭に書いたように、ファミコンユーザーにとってRPGというのは、この頃ま
だまだ未知のジャンルだった。
パソコン業界でも、ハイドライドのヒットで火はついていたものの、パソコン
ゲームの王様は依然アドベンチャーゲームだったのだ。
そう考えると1万5千円のディスクシステム本体(ファミコンは含まない)の
同時発売ソフトとして、RPGというのは大きな賭けである。
勿論ディスクシステムには、既存のゲームもディスク版として廉価で手に入り、
さらに500円で自由に書き換えできるというハードそのものに付随するメリ
ットがあったことも確かだが、新ハードと同時発売の唯一のソフトが新ジャン
ルのソフトというのは冒険である。

 ここから先はあくまでもおいらの推測になるが、まず、ディスクゲームのROM
ゲームの最大の違いの一つにユーザーデータのセーブができるかどうかという
ことがある。
これは、RPGやアドベンチャー、シミュレーション等のゲームには必須の機能だ
が、ファミコンでそれ迄リリースされてきたゲームはその殆どがシューティン
グやアクションなどのゲームセンター的なゲームばかりで、逆にいえばそれほ
ど切実に必要な機能だったわけではないのだ。

 つまり、この当時はまだ、ファミコンはファミコン、パソコンはパソコンと
いうゲームジャンルの住み分けが出来たのだ。
しかし、ディスクシステム登場以後、同様の機能をROMカートリッジで可能に
したメガロムやバッテリーバックアップの出現などのハード的進化、アドベン
チャーゲームのコマンド選択の標準化などのソフトな歩み寄りが起こり、パソ
コンソフトとファミコンソフトの明確な壁は急速に取り払われていくことにな
るのだ。

 現在、ゲームの主役は家庭用ゲーム機であり、当時と比べて遥かにパソコンが
家庭に普及しているにも関わらずパソコンゲーム業界にはもはや昔の面影はな
い。それどころかゲーセンターまでも家庭用ゲームというジャンルに吸収されて
しまった感があるほどに家庭用ゲーム業界は躍進した。
しかし、もし、ファミコンはファミコン、パソコンはパソコンというジャンル
の住み分けが、もっと続いていたとしたらどうなっていただろうか?

 少々おいらのうがち過ぎかもしれないが、まだまだパソコンゲームに比べて
ファミコンゲームは子供のおもちゃと思われていた、1986年初頭にセーブ可能
なシステムが登場し、その第一弾として、それまでパソコンの専売特許だった
RPGがリリースされたということには、意外と大きな意味があるのかもしれない。



AXL 2002

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