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「邪聖剣ネクロマンサー」


Media :PC-Engine(Hu-Card)
Maker :HUDSON
種 別:非リアルタイムRPG
発売日:1988年


 PC-Engine初のRPG。
当時の家庭用ゲーム(ファミコン)の売れ筋は何といってもRPGで、特に1
988年1月はドラゴンクエスト3が発売される直前というRPG絶頂期にあたっ
ている。
このゲームは、ファミコンの対抗馬として発売されたPC-EngineにRPGファ
ン呼び込む為にハドソンがリリースした2D本格RPGだ。

 同時期に発売されたファミコンのドラクエ3と比べると良くも悪くもストイ
ックな作りになっている点が非常に印象的である。
ドラクエのシナリオというのは基本的に「サクセスストーリー的」であり、画
面や演出も明るく楽しいものが多いのに対してネクロマンサーの世界観は全体
的に暗い。
これはファミコンRPGとの差別化の為にPCエンジン最大の武器である美し
いグラフィック能力を最も効果的に使おうと、このゲームを「ホラーRPG」
に位置付けてしまったことに端を発しているのだが、単に敵モンスターのグラ
フィックがおどろおどろしいだけでなく、城や町に住む人々もドラクエに比べ
ると基本的に皆、低血圧で口数が少ない。

 破滅に瀕した世界の人々、という意味ではこちらの方がよりリアルなのだが、
その為に全編を通して重苦しい雰囲気のある独特のゲームになっている。


 イシュメリア王国を舞台に、主人公は二人の仲間と共に伝説の剣ネクロマン
サーを探し、魔王を倒す、というストーリーだが、この二人の仲間というのが
なかなか面白い。
プレイヤーが冒険に出る時に複数いる候補の中から二人だけを選ぶことが出来
るのだが、一度選んでしまうともう入れ替えが効かず最後までその二人と共に
冒険をしなければならないのだ。

 勿論、候補となるキャラクターには戦士タイプ、魔法タイプ、僧侶タイプと
いった分かり易い性格付けがなされているのだが、一人だけ「私には何の取り
得もありませんので、そこんとこよろしく!」という、何だかゆすりがましい
事を言うロミナというキャラクターがいて、小心者のおいらは「自分でわざわ
ざこんなことを言うとは、こいつには絶対、隠された秘密があるに違いない!
序盤は絶対に役に立たないだろうけど、後半になった時、こいつを選んでおか
ないときっと恐ろしいことになるに違いない!」と勝手に思い込んで泣く泣く
「一番役に立たない人」を選んでしまった。

 さて、重苦しい雰囲気、リアルで不気味な敵キャラクターのグラフィックな
ど見た目は当時としては非常に特色のあるゲームだった本作だが、肝心のシス
テム部分に関しては至ってオーソドックス。
ごく普通のドラクエタイプのパーティRPGとなっている。

 寄り道的なイベントもほとんどなく、ただ一直線に「ネクロマンサーを探し
て魔王を倒す」ということだけに集約されているシナリオも非常にシンプルだ
が、ひとつだけ特徴的なのが、ゲームバランスである。

 エリア毎にザコ敵の強さが調整されているのだが、この強さが非常に極端に
なっており、例えばあるエリアで一番強いザコを簡単に一掃できるくらい強く
なったとしても次のエリアに進むといきなり最弱のモンスターにも苦労させら
れるようになってしまう。
そのエリアで武器や防具を揃え、ある程度レベルを上げるとこれまた楽勝でき
るようになるので、次のエリアに進むとまた最弱モンスターに・・・、といっ
た具合で、何というか「諸行無常 盛者必滅」という無常観を取り込んだゲー
ムとなっている。

 これはある意味では成長が目に見えて分かり易い、というカタルシスが味わ
える反面、ある程度まで進むと先が見えてしまう、つまり「ここでどんなに頑
張ったところで次のエリアに進めばどうせ今の努力など何の意味もないんだ」
とプレイヤーに思わせてしまうデメリットがあり、この辺はなんとなく平成の
大不況を生きる世のお父さん達のように哀愁漂うゲームとなってしまっている。


 ちなみに、おいらはこのゲームは中盤くらいまでしかプレイしていない。
早い話が上記の馬車馬人生に嫌気がさしてしまったのだ。
尚、先に書いた「何の取り得もないパーティキャラ」の秘密は、後半の成長度
が著しい、ということだったらしく、終盤では貴重な戦力になってくれるらし
い。
しかし、おいらの場合、そこに到達する前に諦めてしまったので、このキャラ
クターは地球連邦軍に於けるホワイトベース隊の如く「永遠の厄介者」として
記憶されてしまったのだ。



AXL 2003

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