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「じゃりン子チエ〜ばくだん娘のしあわせ探し〜」


Media :FAMILY COMPUTER
Maker :KONAMI
発売日:1988年
種 別:コマンド選択型アドベンチャーゲーム


 浪速が誇る国民的人気漫画「じゃりン子チエ」を原作としたファミコン用ア
ドベンチャーゲーム。
簡単に原作を紹介しておくと、主人公チエは大阪は頓馬区西萩という街に住む
バイタリティ溢れる小学5年生の少女。
チエの父親テツは町内で「オケラのクズテツ」と呼ばれるバクチ狂いで、ボク
シングの世界チャンピオンを戦意喪失状態にまで陥れたことがあるほどの腕っ
ぷしの持ち主だが、全く働かずチエが自宅でホルモン屋を経営して家計を支え
ている。

 チエのお母はん、つまりテツの奥さんのヨシエはんは、才色兼備の良妻だが、
原作開始当初は家出をしている設定となっており、連載開始早々に家に戻り、
洋裁学校の先生をしながらチエと共に家計を支えている。

 この一家を、テツに匹敵する格闘能力を持つ「霊長類最強のばーさん」であ
るところのおバァはん、心臓が弱くおバァはんにびびりながらもテツの更正(?
)を信じて小遣いを与えつづけるおジィはん、さらに元賭場の経営者で、今は
お好み焼き屋のオッサンとなった百合根や、屋台のカルメラ屋、そしてテツの
小学校時代の恩師、花井拳骨といった個性溢れるキャラクターが周りを固めて
いる。

 さて、この漫画を原作とした本作だが、発売は1988年。
今から13年前のことだが、この頃は一言でいうと「下手なアドベンチャーゲー
ムはかなりアレだった頃」である。

 このじゃりン子チエもごたぶんに漏れずその難易度は決して低くない。
では、難易度が高いのか?と言われると素直に「はい、そうです。」といえな
い部分がある、つまるところ「かなり不親切なゲーム」なのである。
どうもコマンド総当りを阻止する為だけに、1回コマンドを選んだだけでは、
全く反応しないキーワードが2回連続でコマンド使用することによりフラグが
立つ、というようなことが日常的に行われるので、よほどの根性がないと先に
進むのは難しい。

 さらに、世の「ばくだん娘のしあわせ探しフリーク」達を悩ませたのが本作
に挿入されているミニゲームの数々で、「野球」、「パチスロ」、「カブ」、
「競馬」の四種類があり、全てをクリアしないと先に進むことは出来ない。

 失敗すると即ゲームオーバーとなるが、コンティニューは章ごとのパスワー
ド制なので、場合によっては、かなり前に戻ってやりなおさなければならない
こともある。

 しかも個々のミニゲームの難易度も決して低くはない。
少なくとも1回や2回やったくらいでは絶対にクリアできないし、「パチスロ」
に至ってはかなり運に左右される。
これだけでも当時のユーザーですらかなりやる気をそがれるのに、当時KONAMIが
ファミコン用アドベンチャーゲーム"AKIRA"などで新機軸のひとつとして採用し、
「ユーザー不在で勝手に盛り上がっていた」360度マルチスクリーン(アドベ
ンチャーゲームの特定の場面で、主人公の位置からみて360度全ての位置を見
回すことが出来る、というもの、原理としては、巻物のような横長の紙に360
度分の風景を全て書き込みその両端を繋いで円筒状にしたような感じ、といえ
ば分かりやすいだろうか。ただし、プレイヤーサイドからするととんでもない
場所にアイテムが落ちていたり、調べる系のルーチンワークが一気に増大する
のでかなり純粋に「いい迷惑」だった。)が採用されており、ユーザーの攻略
意欲を効果的に削いでいた。

 このようにアドベンチャーゲームとして見ると「かなりアレ」な本作だが、
過去に「じゃりン子チエ」がゲーム化されたのは、この「ばくだん娘〜」だけ
であり、尚且つ本作が一時期中古ショップのワゴンセール常連となっていたと
いうような事情からファンなら一度はプレイしたことのあるゲーム、ともいえ
る。

 さて、それではコレクターズ・アイテムと割り切って、「キャラクターゲー
ム」として見るとどうなのか?というと、これが意外と悪くない。
ストーリーは、3章構成になっており、それぞれ第一章からプレイキャラが、
チエ、小鉄、テツと変わり、ストーリーも全て原作のアレンジとなっている点
が非常に好感を持てる。

 一部関西弁がおかしかったり、原作では「ワシ」としか言ったことがないコ
ケザルが「ボク」といっていたりするなど、重箱の隅をつつけないこともない
がそれでも、かなり忠実に原作を再現している。
特にエンディングは、ファンなら一度は見ておくべき(かなり大変なことは確
かだが・・)と太鼓判が押せるほどの出来である。

 が、同時にじゃりン子チエのことをあまりよく知らない、またはテレビや漫
画で何度か見たことがある程度、のユーザーには恐らく何が何だかまるで分か
らないのではないか、という気もする。
コレクターズ・アイテムの宿命といってしまえばそれまでだが、難易度の理不
尽さと相まってこのゲームの「イチゲンさんお断りぶり」にさらなる拍車をか
けている。

 余談だが、JR大阪駅のおみやげ屋さんには、今でも「じゃりン子チエ」のお
守りホルダー(チエ、テツ、小鉄の3種類)や、「チエちゃん焼き」といった
お土産用キャラクターグッズが販売さているのでファンは要チェックなのだ。



AXL 2001

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