「ラサール石井のチャイルズクエスト」 Media :Family Computer Maker :namco 種 別 :RPG 発売日:1989年 ある意味、ゲームって凄いな・・・と思わせるソフトである。 どういうことかというと、このゲームの主役はタイトル通り、バラエティ系ア イドルグループの「チャイルズ」なのだが、2003年の今日にあってレトロゲー ムが好きな一部の人間だけ、といえど、あまり売れることのなかった「チャイ ルズ」という名前が通用してしまうのは、このゲームがあったればこそ、であ り、例えば「セイント・フォー」あたりになると一時的にせよ当時の知名度は チャイルズより上であったにも関わらず、現在となっては「チャイルズ」以下 の知名度に甘んじているのは、ひとえにゲームにならなかった為だろう。 もっともと中には、直接的な題材ではないにしてもまがりなりにもゲームに もなり、ゲームは名作として記憶されているのに忘れられてしまった「アイド ル・夢工場」あたりはもっと哀しい、とも言えるのだが。 さて、ナムコが「さんまの名探偵」に続いて発売した芸能人を使ったゲーム の第二弾がこの「ラサール石井のチャイルズクエスト」だ。 タイトルに「○○の」がつく映画はヤバイ・・・と昔、友人の一人が言ってい たことがあって、例えばマドンナが主演している映画に「マドンナの上海サプ ライズ」という作品があり、この映画はどういうわけが元ビートルズのジョー ジ・ハリスンが制作総指揮を行った映画だったのだが、各方面から酷評され、 後にジョージ・ハリスンが「いやー、マドンナにはユーモアのセンスってもん がカケラもないね」などと満面の笑みで語っていたりしたのを見たことがある のだが、要は「このヒトが出てますよ!」というのを強調しない限り、セール スに結びつかないような映画はその時点にしてヤバイ、ということであり、な かなか的を射た意見だとおいらは思う。 たとえ、有名俳優が主演をつとめていようとも、映画そのものに魅力があれ ばそんなキャプションはいらわけで、ターミネーター3だって決して「シュワ ちゃんのターミネーター3」などというタイトルにはならない筈で、松田聖子 がチョイ役で出演したハリウッド映画が日本のレンタルビデオ屋に並ぶ時には 必ず「松田聖子の」という文字がタイトルの先頭に躍っているのも全て「そう いうこと」なわけである。 では、「チャイルズクエスト」の場合はどうなるか? 「ラサール石井の」というのが非常に微妙である。 このゲームが発売された当時、購入者にとって購入を決断するべき材料はいく つもあった、例えばナムコファンなら「ナムコの新作だから」ということであ ったり、RPGファンなら、「RPGだから」ということもあるだろうし、ま た「さんまの名探偵」のユーザーなら、同じ流れの作品だから、ということも あるだろう。また、極少数かもしれないが「チャイルズのゲームだから」とい う理由で購入したファンもいたかもしれないが、そのような購買意欲をそそる 選択肢の中で「ラサール石井」という存在は微妙の一語に尽きる。 今も微妙だが、当時はもっと微妙だった。 その点からいえば、「○○の」の法則が唯一当てはまらないのが「チャイル ズクエスト」のような気がするのだが、それはさておき簡単に内容を説明して おくとプレイヤーはアイドルグループ、チャイルズのマネージャーとなり、彼 女達の人気を挙げ、最終的に「ときおホール」でのコンサートを成功させるの が目的となる。 RPGの戦闘にあたる部分は相手を「よいしょ」(残念ながら死語)するこ とで相手をファンにしてしまうという方法を取っており、レベルが上がれば強 くなるだけではなくチャイルズの持ちネタも増えていき、より高度なネタを取 得することで各地のコンサートを成功させることができるようになる。 ところが問題なのはRPG部分で、元々チャイルズがお笑い系ということも あり確信犯的なバカゲーが溢れており、かなりプレイヤーを選ぶゲームになっ てしまっているのだ。 これは「たけしの挑戦状」にも同じことが言えるが、タレントの持ち味をボ ケで表現しようとしてゲームそのものがバカゲーになり、結果として難易度が 理不尽に高くなってしまっており、普通に進めるのも一苦労だし、進めたとこ ろで脱力系のイベントばかりなので、正直よほど「チャイルズ」に思い入れが あるか、このゲームそのものの「ネタ」が好きな人でない限り先に進めるのが 難しい出来になっているのだ。 しかし、このゲームで特筆すべきは、「コンサート」というシステムの存在 である。 レベルを上げ、持ちネタを増やすことで、最初は小規模な公会堂すらガラガラ だったものがより多くの観客を集められるようになり、しかもその客を沸かす ことができるようになる、というシステムはそれ迄のゲームには無かったシス テムであり、実際かなり楽しいものなのだ。 逆にこのゲームがバカゲーを標榜せずある程度まともに作られていれば、R PGの新しい分野を開拓できたかもしれないのだが、セールス的にもあまり振 るわかなかったようで、結局続編らしき作品も発売されることがなかったのは 個人的には非常に残念だと思っている。 AXL 2003 |