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「謎の村雨城」

Media :Family Computer専用ディスクシステム
Maker :任天堂
種 別:アクションゲーム
発売日:1986年


謎の村雨城は1986年に任天堂ディスクシステムの第二弾ソフトとして発売され
た。
江戸時代、突如現れ5つの城を占拠した謎の生命体ムラサメを倒す為、密命を
帯びた剣道指南役の青年剣士鷹丸が五つの城とそこへ至る道中を舞台に繰り広
げる大活劇アクションゲームである。


 ところで、何事であれタイミングというものは大切なものである。
どんなに不利な状況であってもタイミングさえ合えば挽回できることがある反
面、九分九厘うまくいっていてもタイミングをひとつ間違った為に全てが台無
しになるという事例は枚挙に暇がない。

 その意味で、最悪のタイミングでリリースされてしまったのが本作「謎の村
雨城」ではないか、とおいらは思うのだ。

 考えても見てほしい。
同じくディスクシステム専用のオリジナルタイトルとして生まれたゼルダの伝
説や後発のメトロイドなどは、発売から20年近くが経過した今日でさえ最新
ハードに於いて続編がリリースされ続けているにも関わらず、同じ立場にあっ
た筈の謎の村雨城には一本の続編も作られていないのだ。

 勿論、任天堂がディスクシステムで発表されたオリジナルゲームの内、続編
が作られなかったのは何も村雨城だけではないし、例えば「パルテナの鏡」や
「中山美穂のトキメキハイスクール」も単発で終わっているが、ディスクシス
テムの初期に発売された本作は、ディスクシステム自体の普及という使命をも
帯びたキラーソフトの一本であったことを思えば、本来、もっと脚光を浴びな
くてはならない存在であった筈である。


 そして、謎の村雨城というゲームそのものは、基本的にはそんな重責にも耐
えられた「凄いゲーム」だった筈なのだ。
何かにつけて「ゼルダの伝説」と比較されてしまう本作だが、おいらは「ゼル
ダの伝説」と「謎の村雨城」が目指したものは全く別もものであり、誤解を恐
れず言えばむしろ「ゼルダの伝説」の方が当時に於いては色物視され、失敗す
る可能性の大きいゲームであったと考えている。


 そもそもゼルダの伝説は(さして注目されなかったハイドライド・スペシャ
ルを除外すれば)ファミコン初のアクションRPGであり、アクション、シュ
ーティングが二大ジャンルとして君臨していた当時のファミコン市場に於いて
は殆ど実績のなかったジャンルのソフトである。

 対して謎の村雨城の場合、時代劇という舞台の特殊性はあるものの、馴染み
のあるアクションというジャンルであり、尚且つそれをディスクシステムとい
う大容量を活かしていささか異常なほど大きなボリュームに広げてたことで本
作とディスクシステムというハードの優位性を示そうと試みたのではないかと
おいらは考えている。

 ディスクシステムは今までのカセットに比べて大容量だから、こんなゲーム
もできちゃいます!というディスクシステムの宣伝を兼ねたラインナップとし
ては、ゼルダの伝説よりも手堅く、正統であるとおいらが考えるのはこういっ
た理由からである。


 しかし、実際にはゼルダの伝説の方が多くのユーザーに受け入れられてしま
った為に、後発の「謎の村雨城」にもゼルダと同じようなアクションRPGと
しての要素が期待されてしまう、という実に皮肉な結果が待ち受けることにな
る。
また、両作品が共に「壮大なゲームである」という点を強調していたことや、
アクションタイプで、画面切り替え式のスクロールを採用していた点などの見
た目の類似点も多かった為に、RPGとしての要素を持たない純然たるアクシ
ョンゲームだった村雨城はゼルダを経験したユーザー達からみれば、いかにも
凡百なゲームに映ってしまった。

 仮に、ゼルダと村雨城の発売のタイミングが逆であったらならば、また村雨
城の評価も変わっていたかもしれない、とは思うものの、もしそうだったとす
ると、謎の村雨城がある程度正当に評価される代わりに、ゼルダの時のような
ディスクシステムの爆発的な普及には至らなかったかもしれない。


 と、いうのもこのゲーム、かなり難易度が高いのだ。
任天堂製のゲームである、ということを考え合わせればその難易度は異常とす
ら言えるくらいで、おいらの場合は言うまでもなくクリアどころか最初の城に
到達するのがやっとだった。
そんなこともあり、正直に言えば当時のおいらも「ゼルダの後にこれかよ!チ
ェッ!」と舌打ちしてしまったユーザーの一人なのだが、実際に手にする迄の
期待度からいえば、中学生にして時代劇及び落語好きというじじくさいスキル
を欲しいままにしていたおいらにとっては、ゼルダの伝説よりも遥かに期待を
寄せていた作品だった。

 ファミコン初の時代劇ゲームはサンソフトの「いっき」だったが、コミカル
な代わりに少々気の抜けた雰囲気の「いっき」とは違い、本格時代劇的な雰囲
気のある村雨城は非常に面白そうなゲームに見えたのだ。

 しかし、実際には面白いかつまらないかはともかくとしても、全然先に進む
ことが出来ず、同じようなマップが「永遠・・」という言葉が頻繁に脳裏を過
ぎってしまうくらいに続くこのゲームに馴染むことは出来ず、そそくさと別の
ゲームに書き換えてしまった。

 おいらの記憶では元々はゼルダと村雨城は同時発売になる筈で、ディスクシ
ステム発売前からこの2本は本体とセットで宣伝、広告されていたと思うのだ
が、結果的に村雨城が本体、ゼルダから二ヶ月遅れの発売になってしまった、
ということを考えると、かなりスケジュールに押されていたか、ゼルダの方に
注力してしまった為ではないかと邪推してしまうのだが、任天堂ゲームとして
は他に類を見ない程の難易度の謎も案外その辺に秘密があるのかもしれない。



AXL 2003

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