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「マザー2〜ギーグの逆襲〜」

Media :SuperFamicom,Gameboy ADVANCE
Maker :任天堂
種 別:2D RPG
発売日:1994年


 場所見知り。
恐らくそんな言葉はないと思うが、自分に当てはまる言葉のひとつだ。
程度の差はともかく誰しもそうかもしれないが、あまりにも自分の持っている
「世界」と違う場所にいるとどうにも落ち着かないのだ。
「世界」などという言葉を使うと大げさに聞こえるが、場違いなところに行か
なければならない、居なければならない、というのが非常に苦手なのだ。

 おいらの場合、マザーを初めてプレイした時に感じた感覚はそれに近いもの
があった。
マザーシリーズは、コピーライターの糸井重里氏が作ったゲームであり、それ
までのゲームに比べて非常に特異な世界観を持っていたゲームである。

 RPGという形式を取り、基本的なシステムは従来のものを踏襲しつつも、
実は他のどのゲームにも似ていない、独特のマザーワールドを作ることに成功
している。


 マザー2の舞台は現代のアメリカ。
主人公の家の近くに隕石が落ちてきたことをきっかけに、彼は旅に出る。
世界のどこかで彼を待つまだ見ぬ仲間(ともだち)に逢い、世界を救う為に。

 こんな感じではじまるプレ・ストーリーは決して珍しいものではないし、武
器屋、防具屋、道具屋といったRPGではお馴染みの施設を現代らしい店名に
変え、場合によってはデパートという形で一ヶ所に集めてしまったりもするが、
ゲームの根幹としては、例えば、時代劇RPGで武器屋が刀屋になっていたり、
道具屋が団子屋になっていたりするのとそれほど大きな差はない。

 しかし、このゲームは決して他のどのゲームにも似ていない。
それはシステムやストーリーによってではなく、登場人物達の会話や、フィー
ルドと街を一体化した独特の優しい色使いのグラフィックから醸し出される「
世界観」によって最も雄弁に語られている。


 この世界観こそが、マザーシリーズ最大の特徴であり、今尚、多くのファン
を魅了して止まない点だとおいらは考えているが、正直、マザー1ではじめて
この雰囲気に触れたおいらは少なからず戸惑った。


 それは、それ迄にプレイしてきたどのゲームにもなかった雰囲気であり、マ
ザーの世界は、まだ一度も訪れたことのない未知の世界に感じられたからだ。
その違和感を、時には煩わしく思い、時には反感を感じながら、プレイを続け
ていく内にふとココロがニュートラルになっている自分に気付くことが何度か
あった。

 それは、このマザーというゲームの世界観に自分がどっぷりと浸かった瞬間
であり、あの独特のグラフィクで描かれる街の住人になった瞬間だった。

 しかし、またある瞬間にこの世界を拒絶し、或いはゲームに拒絶されて、マ
ザーの世界を自分とは異質なものに感じる。

 マザーシリーズをプレイしていた頃のおいらはこの感覚を何度となく味わっ
た。ゲームを終えた後もマザーの世界を懐かしく回想することもあれば、うと
ましく思うこともあった。


 はじめてマザーに触れてから、もう10年以上が経過したが、今尚、おいら
はこのゲームの自分の中での評価を決めかねている。
たった一つ言えることがあるとすれば、このゲームは他のどんなゲームにも似
ていない、ということだけで、それは逆に言えば他の多くのゲームが根底で持
っているある種共通した「雰囲気」すらも相容れない、完全に異質なものであ
る、ということだけだ。

 最近、ゲームボーイアドバンスでマザー3の発売がアナウンスされた。
機会があれば、再び新しいマザーの世界で冒険し、1、2とプレイしても出す
ことができなかった自分の中でのマザーに対する評価を言葉にしてみたいと思
っている。



AXL 2003

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