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「マイケル・ジャクソンズ・ムーンウォーカー」



Media :MegaDrive,アーケード
   (今回のレビューはメガドライブ版を元にしています)
Maker :SEGA
種 別:アクションゲーム
発売日:1989年


 突然だが、洋楽ファン的にはマイケル・ジャクソンというのは非常に評価し
辛いオトコである。
分かり易くいうと洋楽ファン同士の会話で、「アーティストでいうと誰が好き
なの?」と聞かれた際に、「やっぱりマイケル・ジャクソンだね!」などとは
口が裂けても言ってはならないような気がするのだ。

 何故ならばマイケル・ジャクソンはアイドル的過ぎるといおうか、あまりに
も安易な存在で、なるべく人の知らないアーティストを見つけてこっそり楽し
むことを信条とし、メジャーなものや安易でないものに惹かれる自分自身の感
性こそ一般大衆よりも優れたものであるという優越感に浸ることに無常の喜び
を感じる洋楽ファンにとって、マイケル・ジャクソンという存在は決して相容
れないものなのだ。

 なんだか、洋楽ファンに喧嘩を売っているような書き方になってしまったが、
おいら自身の少年時代を振り返るとモロにそういう奴だった、というだけなの
であまり気にしないで欲しい。

 例えば有名過ぎるという点では、「ビートルズが好き」と言ってしまうのも
安易かもしれないが、「ビートルズの場合は、ビートルズ以外の色々な音楽を
長い間聞いてきたけど、結局最後はビートルズの良さが分かったよ。」という
「原点回帰」をタテマエに出来るだけの懐の深さも洋楽ファンの評価もあるの
でまだ良いのだが、「マイケル・ジャクソン」だとそれも難しい。

 かといって、モンキーズやベイシティローラーズのような「創られたアイド
ル」ではなく、彼自身が間違いなく稀有な才能を持ったアーティストなので、
ますます評価し辛くなるのだ。


 ちなみに、どうしても「マイケル・ジャクソンが好き」といいたい場合は、
「マイケル・ジャクソン、いや、マジマジ。昔モータウンサウンドにハマって
さぁ、ジャクソン5とか聞いてたんだけど、マジいいんだって。」という言い
方をする。
「モータウン」とか「ジャクソン5」といった一般人にとっては世迷言にも等
しいまどろっこしい知識を軽くひけらかしつつ、「安易なチョイスじゃないっ
スよ!」というところと、「オレも頑張ったッスよ!」というところをきっち
りアピールしておかないと仲間に入れてもらえないからだ。


 さて、そんなマイケル・ジャクソンが今から10年程前に1本の映画を作っ
た、その名も「ムーンウォーカー」おいらはこの映画を実際に何かの拍子に観
たことがあるが、覚えているのは、彼自身のビデオクリップをつなぎ合わせた
もので、その合間に全く理解不能なストーリーが進行し、最後はマイケル・ジ
ャクソンがロボットになる、ということだけである。

 映画だけを観てもストーリーが皆目不明なので、補足すると映画でのマイケ
ルの役どころはそのままマイケル・ジャクソン本人。
彼は実は宇宙から来た平和の使者で、世界中の子供を守る為に悪者と戦い最後
はロボットに変身して悪者をやっつける、というものである。

 これは言うまでもなくマイケル・ジャクソン本人の原作で、彼自身の願望を
そのまま映画にしたとしか思えないほど安易かつ彼に似合いすぎのストーリー
である。
ちなみに、おいらも小学校の頃、授業中ノートも取らずに「実は自分が正義の
味方だったらいいのに」とよく無駄な想像をめぐらせていたが、マイケルの場
合、それを実際に映画化するだけの財力とネームバリューを持っていたために、
このような残念なことになってしまったらしい。


 しかも、さらにその荒唐無稽な映画をゲーム化したのが、今回紹介するマイ
ケル・ジャクソンズ・ムーンウォーカーである。
内容を簡単に説明するとプレイヤーはマイケル・ジャクソンとなり、敵を倒し
つつそのステージにいる子供全員を救出してボス(?)を倒せば1ステージク
リアとなる。

 もはやこのゲームに関してはいわれ尽くしてきたことだが、何よりもプレイ
キャラであるマイケルジャクソンが凄い。
攻撃はかなり弱そうな「オカマキック」と指をぴっと挙げて首を横に向けた「
キメ・ポーズ」で、もはや何が攻撃なのか皆目わからないが、ゲームというの
は「そのアクションを取っている時に攻撃判定が付けば攻撃になってしまう」
という卓袱台返し的な開き直りでの攻撃方法となっている。

 さらに華麗に被っているシルクハットを飛ばしたり、クルクルとターンして
も攻撃になり、ターン中にボタンを押すとスペシャル攻撃として画面中に存在
するザコキャラ全員と踊り始める。

 踊り終わると大抵のザコは何故か死ぬが、たまに死なないのもいて、謎が謎
を呼んでいる。

 そしてそれらアクションにか必ずマイケルの「ホォーウ!」や「シャッ!シ
ャッ!」という、あの掛け声というかシャウトというか、鳴き声がつくのであ
る。

 ちなみに、ゲームそのものは敵を多く倒すことよりもステージ中にいる子供
全員を見つけて救出することで進んでいく。
ゲーム設定的には、敵に囚われた子供達を救出する為にマイケルが敵地に潜入
する・・・ということになっているのだが、なんとなく、マイケルが所構わず
勝手に押し入って無理矢理子供を誘拐しているように見えてしまうが、この辺
はまあプレイヤーの思い入れでいいだろう。


 このゲームは、マイケルのアクションへの徹底的なコダワリや、マイケル自
身の「人となり」も手伝って、いわゆる「バカゲー」というレッテルを貼られ
てしまっているが、同じようなステージがいくつか連続で続く冗長さを我慢す
れば、当時のゲームとしてはかなりレベルの高いゲームに仕上がっている。

 細部まで書き込まれたグラフィックや、緻密に再現されたアクションだけで
なく、アクションゲームとしての操作感もなかなか悪くない。
勿論、マイケルファンなら、「スムーズクリミナル」、「ビートイット」、「
アナザー・パート・オブ・ミー」、「ビリー・ジーン」、「バッド」と当時の
メガヒットのナンバーもBGMとして再現されているので結構お得なゲームで
ある。

 おいら自身も、ろくなゲームがなかった初期メガドライブ時代にずいぶんと
遊び込んだゲームなので、このゲームに関してはバカゲーという印象はない、
ハイクォリティで良質なゲームだが、題材のアクが強すぎただけである。



AXL 2001

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