レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「モンスターバッシュ」

Maker :SEGA
Media :アーケード
発売日:1982年
種 別:画面固定型アクションゲーム


 小学生時代、個人的に怪奇ゲームはゲームの華だ、と思っていたことがある。
あまり同意を得られそうにない意見であることは否めないのだが、個人的に怪
談だとか妖怪の類が大好きだったので、当然それらを題材としたゲームには特
にココロを惹かれた。

 ファミコンが発売された当時、ライバル機と目されていたカセットビジョン
にも「モンスターマンション」なるゲームがあり、当時これを10分30円く
らいでプレイさせてくれるおもちゃ屋に毎日のように入りびたっていた。
このゲーム欲しさにカセットビジョンを購入しようかと考えていたこともあり、
後にファミコンを購入した後も怪奇ゲームの無さに地味に落胆し続け、やっと
発売されたデビルワールドに飛びついてはみたものの、あのゲームは、怪奇ゲ
ーム特有の「突き放し感」とでもいうのか、「怖さ」みたいなものが少々希薄
だった為に再び地味に肩を落とし、今度はパソコン雑誌やパソコンショップの
ウィンドウなどで、スタジオ・ウィングの「白と黒の伝説」という必要以上に
気合の入った怪奇ソフトを恨めしそうに見つめ続けるという、我ながら気味の
悪い少年時代を過ごしていた。


 そんな小学生時代、ゲームセンターで特にお気に入りだったのが本作、モン
スターバッシュだ。
画面固定のアクションゲームで、舞台は怪物たちが巣食う屋敷。
サイドビューで描かれた屋敷の中をハシゴを使って移動しながら、そのステー
ジのボスを倒すことが目的となっている。
ボスは1面がドラキュラ、2面がフランケンシュタイン、3面はどういうわけ
かカメレオン(カメレオン男?)となっており、4面以降はループとなる。

 主人公はボタンを押すことでビームのようなものを出すことが出来、これで
ステージ内のザコを倒すことができるのだが、ボスの場合は簡単にはいかない。

 屋敷の中には必ずひとつ十字架が置いてあるのだが、この十字架が点滅して
いる間に十字架に触れる必要があるのだ。
点滅している十字架に触れることによって主人公も点滅を始め、その時一発だ
けボスを倒すことのできる強力なビームを発射することができるようになる。
一度発射してしまうと再び点滅している十字架に触れるまで、チャージするこ
とが出来ない上に、時間が経つと十字架は点滅を止めてしまい、その場合も強
力なビームは放てなくなってしまう。

 十字架の点滅は光が刺すことによって始まるため、外に月が出ている間、も
しくは屋敷にあるろうそくに主人公が触れ、火を灯す必要があるのだ。
つまり、主人公がボスを倒すことの出きるのは、屋敷内に光が灯っており、尚
且つ点滅している十字架に触れた後の一回しかチャンスがないということにな
っており、この変わったシステムがこのゲームをより印象的なものにしている
のだ。


 このゲーム目当てにゲームセンターに通っていた1982年当時、おいらは小学
校三年生くらいで、ご意見無用の闇の仕置き人であるところの「補導員」と呼
ばれる人々の目を極端に恐れつつも、友人を誘い合ってはゲーセンに通ってい
た。

ところが、そんなある日、おいらはゲーセンに入るやいなや派手に所持金を使
い果たしてしまい、まだゲームに興じている友人達の間を周っては若干恨めし
そうな目で、彼らのプレイを見ていた。

 その時、友人の一人がおいらの肩を叩いて、モンスターバッシュの台に誘い、
自分は2P側の席に座ってにっこりと笑っておいらに50円玉を手渡したのだ。

 彼は、あっという間に全財産を使い果たしてしまったおいらを哀れに思い、
おいらの大好きなモンスターバッシュを奢ってくれようというのだ。


 彼の友情に感謝しつつ喜び勇んで50円玉を投入し、1Pボタンを押すおい
ら。
彼は楽しそうにおいらのプレイを見ていたが、おいらのキャラがミスをした直
後彼の表情は露骨に強張った。


 そう、彼は別においらに1ゲーム奢ってくれたわけではなくて、このゲーム
の二人用で腕を競おうではないか、というような万感の思いを込めて虎の子の
50円玉をおいらに手渡したのだ。

 満足な会話もままならないほど騒音かまびすしいゲーセンならではの非劇で
あったが、ものの10分でおいらが全財産を使い果たしてしまったことを哀れ
に思った彼は、そのままおいらのプレイを力ない笑いと共にいつまでも見守っ
ていてくれた。



AXL 2003

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