レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「ミシシッピー殺人事件」


Media :FAMILY COMPUTER
Maker :JALECO,ACTIVISION
種 別:アクション・アドベンチャーゲーム
発売日:1986年

 ふと考えてみるとバイオハザードのシステムというのはやっぱり元々洋ゲー
アドベンチャーのシステムに乗っ取っているのではなかろうか?
煎じ詰めればバイオハザードというのは、ホラー・アドベンチャーとでもいう
べきジャンルのゲームだが、その「ホラー」を表現するにあたって非常に重要
な要素となっているのが、アクション部分である。
仮に、あれと同じシナリオをアクション要素のない旧来のアドベンチャーやサ
ウンドノベルで表現した場合、同じ効果は期待できないのではないだろうか?


 アクション+アドベンチャーの融合といえば、何といっても洋ゲーだろう。
おいらの場合、この手のゲームに一番親しんだ時期は富士通のハイパーメディ
ア・パソコンである頃のFM-TOWNSを購入した頃で、新ハードにつきもののソフト
不足を解消する為か、初期のFM-TOWNSのラインナップには、ルーカス・フィル
ム製のアクション・アドベンチャーゲーム、例えばインディ・ジョーンズだと
か、ザック・マックラッケンといったソフトが幅を利かせていた。
ルーカスフィルム以外にも、例えばキングス・クエストといったMADE IN USAの
目も眩むばかりの高難易度ゲームが目白押しで、見た目の派手さ、豪華さとは
裏腹に、着実にFM-TOWNSという決して幸せな一生を遅れなかったハードのただ
でさえ短い寿命をまるで恐怖新聞のように1タイトルにつき100日は確実に縮め
ることに成功していた。

 インディジョーンズや、ザック・マックラッケンなどというタイトルは、日
本ではあまりにマイナーな上に、何といっても10年も昔の話なので、友人に
借りて一通りプレイしたおいらでさえも具体的に説明することは難しく、特に
ザック・ラッケンに至っては「頭おかしい、頭おかしい、頭おかしい」という
強烈な感情がこのゲームに関する記憶の90%以上を締めている有様なので、
他の、まだしも多少は名のあるゲームを例にとって説明するなら、同じルーカ
スフィルム製で、日本では今回紹介するジャレコがファミコンに移植した「マ
ニアック・マンション」とほぼ同じシステムのゲームであるといえる。

 このゲームは、マッドサイエンティストのエド(これがまたどういう了見な
なのか、その昔、「りぼん」という少女漫画雑誌に連載されていた岡田あーみ
ん原作の「お父さんは心配性」の主人公、佐々木光太郎に顔がそっくりで、そ
の奇怪な行動をも含めてあーみんファンのおいらにとっては決して忘れること
のできない作品となった)の屋敷に少年少女が乗り込んでいく・・・という内
容のゲームで、謎解き要素とアクション要素がブレンドされた作品である。

 こちらはファミコンで発売されたとはいえ、必ずしもメジャーな作品とはい
えない為、再び他の作品で例えるならば、何といっても、今回紹介するミシシ
ッピー殺人事件だろう。
このゲームも(ユーザーが望むと望まざるとに関わらず)アクション要素とア
ドベンチャー要素が(見事かどうかはともかくとして)融合された作品であり、
後に続くマニアック・マンションも、ザック・マックラッケンやインディ・ジ
ョーンズも、亜流としてはアローン・イン・ザ・ダークやバイオハザードなど
もこの作品の進化形であるといっても差し支えはないのではないだろうか?


 ちなみにこのゲーム、今回のレビューを書くまでおいらはジャレコ製、つま
り日本製のゲームだと思っていたが、よく調べてみたらアクティヴィジョンの
クレジットがある為、これも実は洋ゲーの移植版のようである。

 さて、簡単に内容を説明すると、蒸気船でミシシッピー河を旅する探偵のチ
ャールズと助手のワトスンは、船内で起きた殺人事件に遭遇する。
果たして二人は、無事事件を解決することが出来るだろうか?
というあたりがメインストーリーになっており、「船もの殺人事件」という意
味では、後に発売される黄金の羅針盤と同質のものだが、良くも悪くもその内
容の面では天と地ほどの開きがある。

 このゲームの特異な点としては、ゲーム開始直後はまだ船の中で殺人事件は
起こっていない(事件そのものは既に起こっているのだが、誰もそのことは知
らない)にも関わらず、のっけから捜査に乗り出してしまう主人公二人のおっ
ちょこちょいぶりにあり、場合によっては被害者の死体を発見する前に、犯人
の罠にかかって自分が死んでしまう可能性すらある、そうなってしまうと主人
公は殺人事件に乗り出す探偵ではなく、殺人事件の単なる被害者というゲーム
史上かつて存在し得なかった役がまわってくる点にある。


 こういう状況なので、当然ゲームがはじまってまず最初にすることは、被害
者の死体を発見すること、つまり殺人事件が発生しているという事実を知るこ
とであり、既に説明書その他でそれを知っているプレイヤーと、どういう理屈
なのか不明だが、何の根拠もなくそれを知っているとしか思えない、ゲーム開
始直後からどこでも調査してしまうプレイヤーキャラ二人組は、船の中で死体
探しの旅に出ることになる。

 しかし、大抵の場合は先ほども書いたように、死体を発見するよりも先に自
分が死んでしまうか、何も起こっていないのに、ずけずけと他の船客の部屋に
立ち入り、露骨に嫌な顔をされる方が先になってしまう。


 ちなみにこのゲームはファミコン初期のアドベンチャーゲーム、そしてクソ
ゲーという意味では非常に有名な作品であり、もしかしたらファミコン初のア
ドベンチャーだったのかもしれない・・・と思っていたが、実は発売年度は19
86年であり、既に85年にポートピア連続殺人事件がヒットを飛ばしていること
を考えると、単なる「二匹目のどじょう狙い」のソフトだったことが分かる。

 このゲームを漠然とファミコン初のアドベンチャーではないか?と思ってい
た根拠は、ゲームの斬新さというよりは、このゲームの極端な完成度の低さ、
つまり発展途上ぶりにあった為、この完成度で二匹目のどじょうを狙ったジャ
レコ首脳部の読みの甘さを思うと他人ごとながら、何とも気の毒な気持ちにさ
せられる1本である。



AXL 2002

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