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「御神楽少女探偵団」

Media :Play Station
Maker :HUMAN
種 別:推理アドベンチャーゲーム
発売日:1998年


 大正時代の日本を舞台に私立探偵御神楽時人とその助手達が繰り広げる本格
推理アドベンチャーゲーム。
恥ずかしながらこのゲーム、ネットでの評判を知らなければ恐らく絶対に購入
しなかったであろうタイトルだ。
赤地に黒抜きの印象的なパッケージはこのゲームが発売された1998年当時にも
ショップで見かけたことがあったし、その後も中古ショップの推理アドベンチ
ャーゲームコーナーで何度も目にしたが、買おうと思ったことは一度もなかっ
た。

 大正時代を舞台としていること、推理ものであることなどには充分興味はあ
ったのだが、いかんせんこのゲームは人を選ぶ。
登場人物達がいかにもなアニメ絵で描かれおり、「少年探偵団」ではなく「少
女探偵団」であることからも分かる通り見た目が非常にギャルゲーっぽいのだ。

 しかし、その見た目とは裏腹に、このゲームは推理アドベンチャーという、
使い古されたジャンルに今さらながらシステム面で野心的なアプローチをかけ
た意欲作である。

 通常、エンディングやシナリオが変化しないアドベンチャーゲームでは、い
わゆるコマンドを上から順番に実行することによりプレイヤーが何も考えてい
なくてもゲームが進行し、勝手に犯人を捕まえることができてしまう。
この欠点をフォローする為に、例えば時間という概念を持ち込み、いつまでに
解決しなければならないという時間的制約を設けて、どこかに移動する為に時
間を消費させることでゲーム性を持たせようとしたり、常設コマンド制ではな
く、サウンドノベルのような選択肢制にしたりと色々な試みがされてきたが、
そのいずれも今ひとつ定着しないまま、結局マルチシナリオのサウンドノベル
にお株を奪われる結果になってしまった。

 この御神楽少女探偵団では、その欠点を推理トリガーというシステムを採用
することによりクリアしようとしている。
このゲームは通常のアドベンチャーゲームと同じように移動を繰り返し沢山の
人に会って情報を収集していくが、その中には事件に重要な関わりを持つ証言
もあれば何の関係もない話も含まれる。
プレイヤーが重要であると判断した情報を誰かが話した時に、推理トリガーの
ボタンを押すと、推理トリガー使用可能ポイントが一つ減る代わりに推理ポイ
ントが増加する。

 推理トリガーの使用可能ポイントが0になる前に、推理ポイントを満点の2
0ポイントまで増やせばクリアとなり、20に達する前に推理トリガーを使い
切ってしまうとゲームオーバーとなる。

 このシステムの存在によりただ漠然と見ているだけでは絶対にクリアはでき
ないようになり、本当の意味でプレイヤーが推理に参加することを可能にして
いる。


 ただし、この推理トリガーにも多少の欠点は存在する。
それはある情報が次の情報への引き金になっているケースが稀に存在する、と
いう点である。
例えば、Aという人物にBという人物のことを聞いたとして、Bが「Aは昨夜、
夜遅くまで起きていた」と証言したとする。
Bが夜遅くまで起きていたかどうか、という事は事件に無関係というほどでは
ないにしろさほど重要な問題ではない、しかし、ここで推理トリガーを引いて
おくとAは続いて「そういえば昨夜こんなことがあった・・・」といって別の
重要な情報を提供するような場合があるのだ。

  この場合プレイヤーは、その後に提示される本当に重要な情報ではなく単
純に「Bが夜遅くまで起きていた」ことの重要度と他の重要と思われる情報を
比べなければならず、結果的に「引っ掛け問題」のようになってしまう。

 また、「重要だと思う情報」という定義も少々曖昧で、この点は後に発売さ
れた「逆転裁判」のただ証言者の矛盾を突けば良い、というシンプルなシステ
ムと比べるととっつきにくいことは確かだ。

 また、このゲームには一部にアニメーションが流れその最中に突然画面上に
方向キーやボタンの入力を促す指示が出ることがある。
犯人追跡や犯人からの逃避などのシーンに採用されるいわばアクションパート
にあたるが、これは往年のタイムギャルなどのLDゲームと全く同じシステム
で、制限時間以内に画面の指示通りにボタンを入力しないと即ゲームオーバー
となる。

 その上、入力指示が非常に見難く、方向キー以外にもPSの○、×、△、□
ボタンの入力まで指示される為に普段ボタンの位置など意識せずにゲームをし
ているおいらは非常にイラついた。

 さらにこのゲームのシステムの上で最も残念な点は、プレイヤー自身が操作
に介入できるシステムを作っているのに、やることと言えば重要な証言を集め
るだけで、それらの材料を元に行う「推理」そのものには一切タッチできない、
という点だ。

 このゲームは捜査篇と解決篇に分かれているのだが、犯人を言い当て、動機、
トリックなどを実際に解明する解決篇ではプレイヤーはただ見ていることしか
できないのだ。


 このように改善すべき点も多いのだが、シナリオは非常に良く出来ており、
またそのシナリオに実際に「参加できる」という点からいっても非常に良く出
来たゲームであることには変わりない。

 また、ギャルゲー然とした登場人物のイラストと現代そのまんまの言葉遣い
にさえ目をつぶれば大正時代の時代考証もなかなかしっかりと行われており、
江戸川乱歩作品や、リバーヒルの1920ファンには充分オススメできる。


 尚、このタイトル実はゲームが最後のシナリオの途中で終了してしまう。
この後に「続・御神楽少女探偵団 完結篇」という作品が存在しシナリオはそ
ちらに続いているのだが、問題はこの完結篇があまり生産されていないらしく
非常に品薄である、というとである。



AXL 2003

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