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「マンハッタンレクイエム」


Media :PC88,PC98,X68000,Windows95等
Maker :リバーヒルソフト
種 別:コマンド選択型推理アドベンチャーゲーム
発売日:1987年



 刑事JB.ハロルドの活躍を描くJBシリーズの第二作目で、「殺人倶楽部」に続
く作品。
プレイヤーは刑事JB.ハロルドとなりニューヨーク、マンハッタンで事件の謎を
追う。また、前作、殺人倶楽部に登場したサラ・シールズという女性が今回は
被害者として登場するという設定は前作からのファンにとっては衝撃的だった。

 JB.ハロルドシリーズをはじめとして一連のリバーヒル製アドベンチャーゲー
ムというのは非常にプレイする人を選ぶ。
というのも、リバーヒル・アドベンチャーの特徴として、相手の住所、年齢、血
液型まで聞くことのできず膨大なコマンド数に加えて、毎回たくさんの登場人物
が出てくる為に、実行する必要のあるコマンドの数は他のアドベンチャーゲーム
の比ではないし、逆に何も考えていなくとも、それらのコマンドを順番に実行し
ていけば何とかエンディングまでたどり着くことが出来るからだ。

 コマンド選択型アドベンチャーゲームは、パソコンの推理アドベンチャー、「
オホーツクに消ゆ」で登場して以来、アドベンチャーゲームの家庭用ゲーム機進
出に引っ張られる形でテキスト入力式に変わるスタンダードとなったが、上から
順番にコマンドを入力していきさえいけばゲームをクリアすることが出来る、と
いう新たな問題にぶつかることになり、停難易度のものについては電子絵本など
とも揶揄されることになった。
リバーヒルの場合、入力すべきコマンドの数を膨大にすることで、簡単にはクリ
アできないようにし、電子絵本と揶揄されることはなかったものの、プレイヤー
が何ら推理力を発揮することなく力技でクリアできてしまうという点に於いては
他のコマンド式アドベンチャーゲームと同じであり、突き詰めていけばゲーム性
は希薄であり、むしろ作業的なゲームとなってしまった。

 では、JBハロルドシリーズの魅力はどこにあったのかといえば、ゲームを通し
て語られるストーリーそのものであり、またはゲーム内外を問わず徹底的に凝っ
たディティールにあった、とおいらは考えている。

 シリーズを通してのシナリオライター鈴木理香さんの魅力に関しては前作、殺
人倶楽部のレビューで触れたので今回ディティールに関して書いてみたいのだが、
当時、リバーヒルのゲームを遊んだプレイヤーにとって忘れることができないの
は、何といってもあの豪華な付録の数々だろう。
マンハッタンレクイエムでは、探偵手帳が付録としてパッケージに入っており、
これに各登場人物の顔写真のシールがついていた。
プレイヤーは、ゲーム中で会った人々の顔をシールの中から見つけ、手帳の顔写
真の欄に貼り付けるのだ。
そして、彼、もしくは彼女から聞いた情報を手帳に書き込んでおくことで、ゲー
ム中に語られる膨大な情報を整理し把握することができるようになっていた。
最近のゲームでは、こういった機能も、ゲーム内に取り込まれており、新しい情
報が加わるとゲーム内のメモや手帳に自動で追加されていくタイプのものが一般
的だが、実はこのアナログ的な作業こそがリバーヒルアドベンチャーの真骨頂で
あり、プレイヤーにとっては臨場感を盛り上げる為の何よりの起爆剤となってい
た。

 最後に、このマンハッタンレクイエムには、殺意の接吻という姉妹作が存在す
る。
この殺意の接吻はJBハロルドシリーズとしては三本目にあたる作品だが、マンハ
ッタンレクイエムを持っていることが前提となっており(後に発売されたWin95版
では殺意の接吻のみでプレイ可能)提供されるのはシナリオが入ったディスクの
み。
グラフィック部分に関しては、全てマンハッタンレクイエムの流用の為、マンハ
ッタンレクイエムが無いとプレイすることが出来ない、いわばアペントディスク
だ。
シナリオのみということで価格は5000円台に抑えられていたものの(この頃のJB
ハロルドシリーズは7000円台だったと思う)、これに関しては賛否両論あるよう
だが、おいら個人としては非常に面白い試みだと思った。

 というのも、登場人物や背景などのグラフィックは全て全て前作と同じなのに
そこで展開されるストーリーや、登場人物の名前、性格づけなどが全て変更され
ているということは、前作は非常にイヤな奴だったキャラクターがやたらと善人
になっていたり、逆に前作ではいい人だった人物が悪人になっていたりと、マン
ハッタンレクイエム後にプレイしてみると、他のゲームでは決して味わうことの
できない不思議な感覚を感じたものだ。

 これは、経費のかかるグラフィック作成などの部分を全てはしょって、シナリ
オを入れ替えることで、使用済みのグラフィックを再利用する、いわばゲームの
リサイクルという野心的な試みで、シナリオ面に絶対的な自信を持っていたリバ
ーヒルの真骨頂だとおいらは思うのだが、残念ながらこの方式が採用されたのは
殺意の接吻のみで第四作となったDCコネクションでは独立したパッケージに改め
られているが、ゲーム界でも不況が叫ばれている今こそ再考の余地がある方法で
はないだろうか。



AXL 2003

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