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古伝降霊術・百物語〜ほんとにあった怖い話〜


Media :Sega Saturn,PC-Engine
Maker :HUDSON
種 別:ホラー・サウンドノベル
発売日:1997年


 百物語とは、百本の蝋燭を用意して参加者が順番に怪談を披露していき、話
が終わるたびに1本づつ蝋燭を消してゆく、そして最後の1本が消えた時に心
霊現象がおこると言い伝えられている降霊術のひとつである。


 ・・・というのは、子供の頃から知っていたし、怖いもの大好き人間のおい
らはぜひとも一度でいいから実際に百物語というやつをやってみたいものだ、
と思っていたのだが、問題は仮に友人を何人か集めたとしてもとてもじゃない
が、100もの怪談を集めることは不可能だったという点と、100本もの蝋
燭をどこから集めてくれば良いのか分からず、ついでいうと集められたとして
も狭い部屋でそんなことをしたら十中八九家が火事になるだろう点により、つ
いに一度も百物語を実行する機会に恵まれなかった。


 やがておいらも大人になり、いい加減「百物語熱」も覚めた頃に出会ったの
がこのゲームである、元々はPC-Engine CD-ROM2版で発売されたゲームらしい
のだが、後にセガサターンに移植されており、おいらがプレイしたのもサター
ン版になる、PC-Engine版との相違点はよく分からないので、このレビューに関
してはセガサターン版のみを対象にさせて頂くこととする。


 どういうわけかタイトルには名前が登場していないが、このゲームの主役は、
こわい話の第一人者、または、タレント界のチューブといわれる稲川淳二であ
る。
できることなら、100話全てを稲川淳二の音声で話して欲しかったのだが、
さすがにそんなことをすると他の仕事にも影響がでることは間違いないので、
100話中、稲川淳二が実際に喋ってくれるのは10本程度で、残りはサウン
ドノベル形式と、動画形式の2種類に分かれている。

 また、ノベル形式で単純に文章を読ませるタイプのものでも、途中に3Dマ
ップが出現し、例えば病院の怪談の場合、自分で病院内を探索し、ある地点に
移動することで続きが読めるようになる、といった手法で臨場感を高めている
ものもある。

 しかし、基本的には、弟切草などとは違い、ストーリー中にプレイヤーの選
択により結末が変わることはほとんどなく、話そのものは1本道となっている。

 要は、これらの100のストーリーを全て読めば(または視聴すれば)ゲー
ムは終了し、基本的には2度3度繰り返してプレイするようなものではない為
ゲーム性という部分ではかなり希薄なものになっていることは間違いない。

 また、ゲーム中に語られる怪談の8割は、一般からの投稿作品となっている
点も他のゲームとは異なる。確かに話としてはプロのライターが書いたものの
方が面白いのかもしれないが、殊怪談に限っては、一般に流布しているものの
方が、怪談そのものが本来もつ「いびつさ」による恐怖が損なわれることなく
残っている為、おいら個人としてはこの手法は嫌いではない。


 ところで、セガ・サターン本体には時計機能があり、電源を切っていても内
部電池により日時をリアルタイムに刻んでいるが、このゲームを起動すると、
時間帯によってその時間にあった怪談が突然はじまることがある。
これは、100話には含まれないものだが、例えば、午前2時にゲームをはじ
めて午前2時の怪談をオープニングでいきなり読まされるのはなかなか恐ろし
くて、怪談大好き人間のおいらとしては好きな演出である。

 他にも、ゲーム中には本編とは直接関係のないイベントが用意されていたり、
説明書には、お清め用に塩と水を用意しろなどと書いてある点も、ホラー好き
にはたまらないのだが、いかせんプレイヤーを選ぶゲームであるという点だけ
は間違いない。


 ところで、何度も書いたようにおいらはやたらと怪談が好きなので、稲川淳
二のこわい話も随分聞いてきたが、個人的に、彼の語るこわい話の中で一番怖
いと思った話は、このゲームに収録されている「目黒スタジオ」という話であ
る。話の詳しい内容については触れないが、怪談の中には「説明し過ぎ」な為
に興をそいでしまうものが多くある。

 例えば、あるアパートの部屋には幽霊が出るんです、どうしてかというと以
前その部屋に住んでいた人が不幸な事件で亡くなってどうたらこうたら・・・
という、幽霊が出る動機まで事細かに説明してしまう話の場合、実際に自分の
目の前に幽霊が現れれば恐ろしいかもしれないが、話として聞いた場合、元々
「怪談」なのだから幽霊が出てくることそのものはさして怖いとは思わないし、
出てくる理由から出てきて何をするかまで事細かに説明されてしまうと面白く
もなんともないのだ。
その点、「目黒スタジオ」という話は、話としては尻切れトンボのような話な
のだが、本来説明されるはずの部分が全く説明されず、それが余計に想像力を
かきたててくれる。

 おいらはやたら怪談が好きな割に霊現象の類は一切信じていないというひね
くれ者な為、稲川淳二のこわい話をリピート再生にして寝るという信じられな
いくらい悪趣味が癖がある。
そういうことをすると、たまに怪談の夢を見れるので密かに楽しみにしている
のだが、目黒スタジオの夢を見た時だけは恐ろしくて目がさめてしまった。




AXL 2002

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