レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

キングスナイト


Media :Family Computer
Maker :SQURE
種 別:縦スクロール・シューティングゲーム
発売日:1986年


 80年代のファミコン少年達にとって「兄弟」の存在は重要である。
何故ならば、ファミコンのソフトはそれこそ星の数ほどあるが使えるお小遣い
の方は限られている。
もし、兄弟がいれば、彼らの収入に頼ることによって、より以上のゲームを楽
しむことが出来るからだ。


 実はおいらにも6歳下の妹が一人いるのだが、その点においてはこいつは全
く使えない女だった。
たまに、自分の小遣いでファミコンソフトを購入してくれるのは良いのだが、
奴のゲーム選択眼は何というか実に奇想天外なものがあるのだ。

 まず、最初に購入したゲームが忘れもしない「キングスナイト」
最近、妹に聞いたところによると、これは未だに彼女の「心のゲーム」である
らしい。
次に買ったのが「おにゃん子town」で、その次が「バードウィーク」だ。
非の打ち所のないクソゲー選択眼を持ち、まともにクソゲーを愛せる神経を持
った女、その名もうちの妹。

 不憫に思ったおいらは妹を騙してスターフォースを購入させ、横取りしてし
まった、という心温まるエピソードもあるのだが、それはさておき今回紹介す
るのは、うちの妹が「心のゲーム」と太鼓判を押すスクウェアのキングスナイ
トの方なのだ。

 タイトルやパッケージから連想されるイメージ、そして今となってはスクェ
アというメーカー名から一見すると誰がどう見てもRPGにしか見えないこの
ゲーム、実は縦スクロールシューティングゲームである。

 ただし、プレイキャラは戦闘機などではなく、さらわれたお姫様を助け出す
為に立ち上がった4人の勇者達。
それぞれナイト、ウィザード、モンスター、シーフという構成バランスの上で
微妙な影を落とすこの4人を操り、プレイヤーはひたすら上へ上へと進むのだ。


 このゲームの最も特異なところは何といってもシューティングゲームであり
ながら主人公が4人存在するところだ。
それもキャラ選択式でも交代制でもない、言うなれば並列制とでもいうべきシ
ステムになっている。
どういうことかというと、勇者達はそれぞれ全く別の場所から集合地点を目指
して移動している、という設定になっており、4人それぞれのステージをクリ
アした後で初めて集合することが出来る、というものだ。

 システム上、例え最初のキャラが死んでもゲームオーバーにはならず2人目、
3人目とプレイを続行することができる。
これだけならそれほどおかしくはないが、このゲームのクソゲーたる所以は、
このゲームを「心のゲームだ」と語った妹がその直後に夢見るような瞳で呟い
た言葉の中に隠されている。

「だってさあ・・・あのゲームって、キャラが死んでもゲームが続くのに、結
局一人でも死んじゃうとクリアできないんだよ、凄いじゃんっ!」

 どこがどのように「凄いじゃんっ!」なのかはもはや永遠の謎だが、とにか
く本当にそういうシステムになっているのだ。

 一人でも死んだ時点でクリア出来ないにも関わらず平気な顔で次のキャラの
ステージが始まる、つまり最悪の事態を迎える迄プレイヤーにはそのことは知
らされないのだ。

 それに妹の言葉に補足しておくと、単に4人全員が揃っただけではクリア不
可能で、4人それぞれが1つづステージ内のどこかに隠されている魔法を手に
入れないとやっぱりクリア不可能という、殆どゲームセンターあらしかファミ
コンロッキーのライバルのお父さんの会社が開発したとしか思えない意地悪設
計になっているのだ。


 さらに追い討ちをかけるようにゲームの根幹を成す縦シューティングが非常
に難しい、というか操作性が悪い。
おいらの腕ではまともに1面クリアすることも不可能で、その上全員生存だの
隠しアイテム(魔法)ゲットなど夢のまた夢である。


 では、このゲームを絶賛する妹にそれが出来たか?と言うと、奴も腕はおい
らとどっこいどっこいなので、1面クリアすらおぼつかない。
にも関わらず、自腹を切って定価でこんなものを購入してあまつさえ「心のゲ
ームだ!」と断言する妹に、おいらは100年かかっても勝てないような気が
する今日この頃である。



AXL 2003

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