レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

機動戦士Zガンダム・ホットスクランブル

Media :Family Computer
Maker :BANDAI(GAME STUDIO)
種 別:擬似3D+2Dシューティング
発売日:1986年


 事前広告で煽りまくった割には・・・というパターンで、この辺はハドソ
ンのチャレンジャーやらバンゲリング・ベイに相通じるものがある作品。
バンダイお得意のアニメの版権もの、しかもその後15年以上にわたってホ
ステスと同棲するダメ男のように骨の髄まで寄生し続けることになるガンダ
ムものの初期の作品だが、このゲームの場合ちょっと違うのが、バンダイが
自身でゲームを制作しなかった、という点であり、このゲームの最大のウリ
も実はその点になるはずだった。

 考えてみればバンダイはそれ以前にも、「超時空要塞マクロス」のゲーム
化の際もどういうわけかナムコに制作を依頼し、「ナムコがマクロスのゲー
ムを作る!(販売はバンダイだけど)」ということで当時のファミコン少年
達にそれなりに騒がれていたのだ。
そして、本命ともいえるガンダムものの制作を依頼したのは、何とゼビウス、
ドルアーガの塔などナムコ時代に名作を世に生み出したゲームデザイナー、
遠藤雅伸率いるゲーム・スタジオ。
ゼビウスの遠藤雅伸がガンダムのゲームを作る!という衝撃的なニュースに
当時のファミコン少年達は胸を熱くして発売日を待ち焦がれていた。

 発売元のバンダイも遠藤雅伸作という点を最大限に宣伝しており、テレビ
CMでもゲーム画面と無心にパソコンのキーボードを打つ遠藤氏の映像を使
うという、今にして考えるとちょっと不気味なCMを打っていた。

 最近では「連邦vsジオン」にも同じ事が言えるが、よく考えてみるとバン
ダイが発売する版権ゲームに於ける最大のセールスポイントを「バンダイが
制作に携わっていない」という点に位置付けるというのも凄い話である。


 さて、そのように胸を熱くして発売日を待った少年達がこのゲームの発売
当日どのような思いを胸に抱いたかは、ある程度想像はつくが正確なところ
まではおいらにはよく分からない。
どういうわけか、おいらはこのゲームにあまり期待しておらず、従って発売
日に新品購入!という、21世紀の今日から振り返ると何らかの「難行」或
いは「苦行」とでも形容すべき行為を行わなかったからだ。

 おいらの場合、単に原作であるZガンダムそのものを殆ど見ていなかった
為にわざわざゲームまで買おうと思わなかったのだ。
Zガンダムは、前作機動戦士ガンダムから7年の歳月を経てテレビ放映され
た完全新作のガンダムであり、当時のおいらは、1/144スケールのジム・キャ
ノンを自作する為には、1/100スケールのガンキャノンのキャノン砲を用いる
のが良い(ちょっと勿体無いけど)ということを自分で発見して喜んでいた程
度のガンダム少年だったのが、Zガンダムの第一話を見たっきり、どういう
わけか続きを観る気がしなくなってしまって、次にたまたま観たのが最終話
だった・・という程度の付き合いしかなかった為に、Zガンダムのゲーム、
そのものに余り魅力を感じることができなかった。

 今にして思えば、当時のおいらにとってはストーリーそのものが重すぎたの
が原因のような気がするが、当時は、ハイザックはなんか違う、連邦軍のザク
は絶対ダメ!などと言いつつ、黙ってテレビを消していたように思う。


 そのおいらがこのゲームをプレイしたのは、発売から随分経ってからのこと
で、つまりは中古ショップでの販売価格がいい感じに下がってからだった。

 このゲームは、スペースハリアーばりの擬似3Dステージと、テクザーのよ
うな2Dステージに分かれているのが特徴だが、どちらのステージもそれぞれ
スペースハリアー、テクザーの出来損ないのような感じで、いわゆるオリジナ
リティに乏しい。

 特にZガンダムが、ウェイブライダー(飛行機)形態とMS(ロボット)形
態に変形可能な特徴を持つことから、2Dステージはまるっきりテクザーと言っ
ても差し支えないほどに似ていた。

 そもそもおいらはテクザーというゲームがあまり好きではない。
基本的に迷路状になっているものは、何であれ嫌いなのだが、テクザーという
ゲームはパソコン界でこそ知名度は高いが、後にスクウェアがファミコン参入
第一作としてゲームアーツから版権を借りてまで発売したファミコン版はそれ
ほど知名度が無く、おいらの周りでは、誕生日か何かにテクザーを買って貰っ
た友人が嬉しさの余り逆上して作文の時間に「テクザーを買ってもらって」と
いう、知らない人から見たらかなり純粋に電波系なタイトルの作文を書き始め、
周囲の友人の制止をも無視してあれよあれよという間に、45分で原稿用紙2
枚半の大作を書き上げてしまった、ということ以外にはこれといって目立った
反響もなく、逆にいうと、「パソコンでこんなに動く!!」という衝撃こそが
あのゲームの人気の正体だったのではないかと、ちょっぴり陰口の一つも叩き
たくなってしまうのだが、要は、最初からファミコンゲームのZガンダムがそ
のテクザーの真似をしたって面白くなるはずがないのだ。

 その上、原作に殆ど思い入れも知識もなかったものだから、このゲームをプ
レイした時のおいらの白けっぷりときたら、ファミコン黎明期の正月に既存の
ソフトを買い尽くしてしまい、正月だというのに買うソフトがなく、止むなく
「五目ならべ」を買って涙を浮かべつつ一人遊んだ元旦の昼下がり・・・とい
うようなものに迫る勢いで盛り下がり、唯一、良かったのは原作でエンディン
グ曲として使われていたBGMだけだったのだが、それ単にその曲が良かった
に過ぎず、このゲームの構成要素である「バンダイ」、「遠藤雅伸」、「ホッ
ト・スクランブル」のどれにもリンクしていないことは明々白々たる事実であ
った。



AXL 2002

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