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軽井沢誘拐案内

Media :PC-88,FM-7等
Maker :ENIX
種 別:コマンド選択式推理アドベンチャーゲーム
発売日:1984年


 堀井雄ニ推理アドベンチャー3部作の内の1本。
順番としてポートピア、オホーツク、そしてこの軽井沢が最後の1本となって
いる。
ポートピアや、オホーツクが後にファミコンに移植されたのに対して、この軽
井沢誘拐案内だけは現在に至るまで一度も家庭用ゲーム機に移植されたことが
無い。

 理由はちょっぴりえっちな内容を含む為だと思われるが、推理ゲームの出来
としては他の2作に勝るとも劣らない。
また、ポートピアとオホーツクがシナリオ的に、プレイヤーが刑事となり、北
海道、または関西などの都市を殺人犯を追う為に駆け回る、という比較的に似
たタイプのゲームであるのに対して、軽井沢誘拐案内の主人公は一介の青年で
ある。

 恋人、クミコの妹、なぎさから端を発した失踪(誘拐?)事件に巻き込まれ
最終的にそれを解決することが目的となるが、舞台となるのは、オホーツクや
ポートピアのような広い範囲ではなく、「軽井沢」のみに絞られる。

 さらに、軽井沢では、RPGのようなフィールドマップにキャラクターが表
示され、テンキーで実際に移動して操作を進める必要があり、物語が章で構成
されている(MSX版のオホーツクは、テープ読み込みの都合上、既に採用されて
いたが・・・)など、堀井アドベンチャーのクォリティはそのままに、実験的
な試みがなされている。

 「オホーツクに消ゆ」のようなハードボイルドタッチの作品を期待したファ
ンには、「80年代的ふぁっしょなぶる」な雰囲気を持つ軽井沢は少々肩透かし
だったかもしれないが、おいら的には前2作に比べると小品的な印象はあるも
の、その分、より人間臭い世界が魅力的だった作品である。

 まるで関係ないが、堀井雄ニの描く若い女性はやたら語尾に「だわよ」とい
う言葉を使いたがるが、その元祖は恐らくこの軽井沢に登場するヒロイン、ク
ミコではないかと思う。
クミコの会話中に占める「だわよ含有率」はかなりのもので、そのお陰で15
年以上経った今でも、おいらの頭から「だわよ」の言葉が去ることはない。

 また、多少ネタバレを含んでしまうが、この「軽井沢」には後の堀井作品の
暗示的な試みがいくつかほどこされている、というのも見逃せない点である。

 まず、第六章はなんとまるごと1本RPGになっているという点。
アクションではなくドラクエと同じ、非リアルタイムRPGで、ドラクエ2に
先駆けてパーティプレイ(?)が可能。
30分から1時間程度で終わる小品だが、実はこのRPG部分がめちゃくちゃ
面白くて、当時おいらはこの第六章だけを何度となくプレイした記憶がある。
このRPG部分は、グラフィックからもかなりウルティマの影響が強いと思わ
れるが、フィールドマップ、絶妙なゲームバランスなどは後にファミコンで発
売されるドラクエに受け継がれていった。

 さらに蛇足かつ強引ながら付け加えると第四章は、ちょっぴりえっちな章な
のだが、この部分は、ENIXからパソコン用に発売された「TOKYO NAMPAストリー
ト」に通じるものがある(かな?)

 実は色々と諸事情というものがあって、この「おいら的あの頃ゲーム」で、
TOKYO NANPAストリートを取り上げることは(多分)不可能なので、この機会
に声を大にして言っておきたいのだが、ナンパゲーム、アダルトゲーム、ギャ
ルゲー、どのような呼び方でも構わないが、そういったジャンルのゲームの中
で最高峰に位置するのが、「TOKYO NANPA ストリート」である。

 あの時代に、いや、現在まで含めてあれほど良く出来たナンパシミュレーシ
ョンゲームは他に存在しない。
現在、恋愛ゲーム、ナンパゲームのメインになっているシナリオという存在を
無視して、システムだけであれくらい完璧に仕上げてしまったゲームをおいら
は他に知らないのだ。

 ちなみにこちらのゲームで堀井雄ニが担当したのはプログラミングで、実は
あまり表立って名前が出てこない為に分かりづらいのだが、あのゲームを一度
でもやれば一発で分かる。
なにせ「ボタンを押した感じがドラクエと一緒」なのだから。


 というわけで、いつものように段々何の話なのか分からなくなりつつあるの
で、強引に話を戻すと、この軽井沢誘拐案内に出てくる、喫茶店のマスターは
何故かおいらには「五木ひろし」にしか見えず、秘密クラブ内の踊っている男
女はどう見ても「コブラツイストのかけあいをしているようにしか見えない」
というかなり、マニアックな考察へと発展してしまうのだが、そんなことはお
いといて、軽井沢誘拐案内、アドベンチャーゲームファンなら一度はやらなき
ゃいけない名作である。



AXL 2001

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