レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

機動戦士ガンダム(プレイステーション版)


Media :PlayStation
Maker :BANDAI
種 別:3Dシューティングゲーム
発売日:1995年


 次世代機初のガンダムゲーム・・・と言いたいところだが、実はPSやSSが登
場した次世代機ブームに乗ってマッキントッシュをベースに家庭用インターネ
ット端末兼ゲーム機としてバンダイから発売されたピピン・アットマークの専
用ソフトの中にもガンダムものがあったような気がするので、もしかすると厳
密には二本目かもしれない。


 それはともかくとして、スーパーファミコンからプレイステーションへのハ
ードの以降は同時に2Dグラフィックから3Dグラフィックへの以降でもあっ
た。
そういう意味で、初の3Dゲームとなった(ピピンのガンダムの方は内容が不
明なので、一応初ということで話を進めさせていただきたい)ガンダムゲーム。
敵モビルスーツをポリゴンで表現し、アニメと同じコクピット視点の採用に、
ガンダム世代の元少年達はついに「ガンダムに乗る」という夢を手に入れた・
・・・かに見えたのだが。


 ゲーム内容の紹介に移る前に、少々余談になるが、実はこの「プレイステー
ション用ガンダム」について、おいらには少しばかり気になることがあるのだ。
プレイステーションが"PS-X"と呼ばれていた頃、つまり、ソニーがテレビゲー
ム業界に参入し、凄い性能のゲーム機を出すらしいぞ!と巷で騒がれ、「プレ
イステーション」という正式名称すらも発表されていなかった頃のことだ。

 その頃から既にプレイステーション(当時のPS-X)は売りの一つとして豊富な
ソフトラインナップを挙げており、発売予定ソフトのタイトルや、一部のゲー
ムについては開発中のゲーム画面が雑誌などで紹介されていた。

 そしてその中にはバンダイがPS-Xで発売予定の「機動戦士ガンダム」という
ソフトの画面写真も掲載されていたのだが、実はこの時掲載されていた写真は
後に発売された本作のコクピット視点のゲームなどではなく、3Dで描かれた
ガンダムと敵モビルスーツを真横から捉えた画面だったのだ。

 そんなわけで初めて本作の画面をCMなどで見たおいらは「あの時のガンダ
ムはどうなってしまったのだろうか?」と疑問に思ったことを覚えているのだ
が、その謎はさらに二年後に唐突に氷解することとなった。

 本作が発売されてから二年後、つまり1997年に同じくバンダイからプレイス
テーション用ゲームとして発売された、「機動戦士ガンダム・パーフェクト・
ワン・イヤー・ウォー」の戦闘時の画面がプレイステーション発売前に見た「
機動戦士ガンダム」の画面写真として紹介されていたものとほぼ同じだったの
だ。


 だとすれば、本来PS最初のガンダムは「パーフェクト」が予定されていたも
のの何らかの理由により開発が送れ、「機動戦士ガンダム」が先に発売された
のか、或いは元々「機動戦士ガンダム」というゲームは、非コクピット視点で
開発が進められていたが、途中でコクピット視点に変わり、現在の形で発売さ
れたものの、その時使われなかったシステムを流用して「パーフェクト」が開
発されたのか、個人的には非常に気になるところではある。


 さて、余談が長くなってしまったが、何はともあれ元ガンダム少年のおいら
は、「ガンダムの乗れる!」という魅力にあっさりとまいってしまい発売日に
本作を購入した。
思えば、おいらがはじめてプレイした最初のガンダムのゲームは1980年代はじ
めにバンダイが発売したLSIゲームのそれで、以降はガンダムゲームといえば
SDものが主流だったこともあり、このゲームに寄せた期待は非常に大きかっ
た。
もしできることなら、子供時代の自分に本体ごとプレゼントしてあげたら、子
供時代のおいらは喜び過ぎて死んでしまうんではないか、などとくだらない想
像をめぐらせてしまうほど楽しみにしていたのだ。

 ゲーム内容としてはプレイヤーは機動戦士ガンダムの主人公アムロ・レイと
なり、ガンダムを操って原作通りに数々の戦いを経験してゆく・・・というの
ステージクリアタイプの3Dシューティングゲームである。

 ・・・が、結果的にいうとゲームとして考えるとかなり辛い出来に仕上がっ
ていた。
なまじっかコクピットビューを採用している為に視野は狭く、それ故にゲーム
そのものにはいいようのない閉塞感が漂っている。
その上シューティングゲームとしてみるとストイックな代わりに爽快感がなく、
ただひたすら敵と戦うことに右往左往させられる、といったゲームに仕上がっ
ていたのだ。

確かに視点はコクピットビューは、当時としては「恐らく原作のアムロはこん
な風な視点で敵と戦っているんではないだろうか」と納得できるレベルのもの
ではあった。
その点から言えば、今までに発売されたどんなガンダムのゲームよりもリアル
であることは間違いなかった。

 リアルではあるかもしれないが・・・面白くはないのだ。
その点に気がついた時、おいらにははたと思い当たることがあった。
考えてみれば、アニメの中でジオンのモビルスーツと戦い続けるアムロにとっ
てガンダムに乗ることというのは「面白いこと」なのだろうか?

 作品を見返してもニヤニヤと笑いながら敵と戦っているアムロ、だとか、く
わえタバコでBGMをかけながら敵と戦うアムロ、といったシーンの記憶は皆
無である。
むしろ戦いが終わった後は、スネまくりのゴネまくりで、最終的には「親父に
だって殴られたことがないのに!」というようなことまで叫んでしまっている。

 そう、つまり本物のガンダムに乗ったからといって面白いとは限らないのだ。
時代を代表する一大エンターテイメント作品を「リアルさ」という方向でゲーム
化したこの作品は一見すると夢の実現であったかもしれないが、リアルさの果て
にあったのは「現実」というものであり、現実というのは決してエンターテイメ
ントとイコールではなかったのだ・・・というちょっとばかり侘しい結論を掴ん
でしまうにいたったのだった。



AXL 2003

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