レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

がんばれゴエモン!からくり道中


Media :Family Computer
Maker :KONAMI
種 別:画面切り替え型横スクロールアクションゲーム
発売日:1986年


 このゲームのことを思う時、おいらはいつも人間の潜在能力についてだとか、
思い込みというものの凄さだとか、欲シガリマセン、勝ツマデハ、だとか、と
にかく色々なことを考えたくなってしまうのである。

 このゲームは、現在まで続くコナミの看板キャラクターゲームの一つ、「ゴ
エモン」シリーズの実質上の初代作品にあたる作品であり、同年発売のアーケ
ードゲーム「Mr.五右衛門」なるタイトルのアレンジ移植作である。
移植作にも関わらず実質上の初代だ、と書いたのは、元になった「Mr.五右衛
門」と後に続くゴエモンシリーズは設定、ストーリー、システムなどの上での
繋がりがなく、実質的に今のゴエモンを基礎となったのはアレンジされたファ
ミコン版のゴエモンの方だからである。
「Mr.五右衛門」についてはまたいずれ項を改めて触れることにするが、アーケ
ード版のこのタイトルは当時の印象からいえば、浮世絵のキャラクターや、時
代ものという珍しさはあったもののそれほど人気があったわけでも注目されて
いたわけでもない。

 しかし、ファミコン版となると話は別で、なかなか派手にCMも流し、ゲー
ムに搭載されたとある秘密兵器の威力によってファミコン少年達にも発売前か
らそれなりに注目されるタイトルだったのだ。
その秘密兵器とはファミコン初の2MビットROMである。
この年にはじめて登場した1メガロムのさらに倍の容量。
その上、同じ年に大容量を売り物に発売されたディスクカードと比べても2倍
以上の容量を持っていたのだ。

 大体にしてあの頃のゲーム少年というのは、高度長期の子供達と似たところ
があって、「大きいことはいいことだ!」という信念を持ち(大容量の)消費
を美徳だと考えていた為、衝撃の度合いは大きかった。


 今までのゲームでもあそこまで出来たんだから、2Mだったら凄いことが出
来るぞ!と純粋に真っ直ぐに信じていた。
そういった期待を背負って発売された「がんばれ!ゴエモン」は、アクション
ゲームながらクリアまでに丸一日かかる(友人談)という途方もないスケール
の作品となってしまったのだが、おいらが言いたいのはここから先なのだ。


 先程から2M、2Mと書いてきたがこの単位はバイトではなくビットのもの
であり、2Mビットとは256Kバイトと同等なのだ。
256Kバイトがどれほどのものか、と言えば、今やほとんど誰も使わないの
黙ってひっそりとパソコンの全面に配備されている2HDフロッピーディスク一枚
の5分の1以下となる。
PS2用のメモリーカードの32分の1の容量ということなのだ。

 今時の家庭用ゲームでは、DVD-ROMでのゲーム供給が当たり前で、PS2用のゲ
ームなのに媒体にCD-ROMの表記があると、子供達が露骨にケッ・・・という顔
をしてしまうご時勢から考えると、256Kバイトなどは蟻の欠伸にも等しい容量
であるといわざるを得ない。

 しかし、時代が変われば人の価値観も変わるもので、今から17年前にこのゲ
ームが発売された当時は同じ256Kバイトでも、それが夢の大容量であることを
誰一人疑う者はなく、先程も書いたようにアクションゲームとしては「キミキ
ミ、気持ちは分かったから、今日はお母さんと早くお家に帰りなさい」と言い
たくなるくらい異常に長いゲームが仕上がってしまったのである。
おいらがこのゲームのことを思う時に考えてしまう、人間の思い込みの凄さと
いうのはつまりはそういうことで、仮にPS2のメモリーカードを使ってゲーム
を作れば「がんばれ!ゴエモン」換算で、丸一ヶ月以上。
つまり、プレイ時間100時間どころか、500時間以上というアクションゲ
ームとしてはちょっとヤな超大作だって作れてしまう筈なのだ。


 いつもレビューとか言いながら、実はそのゲームで思い出した全く別の話が
したいだけ、というのはおいらのレビューの悪い癖なのだが、今回もちゃっか
り言いたいことを言って気が済んだところで本題に戻りたいと思う。


 先ほども書いた通り、アレンジ移植とはいえ一応はアーケード作品の「Mr.五
右衛門」をベースにしたものになっており、プレイヤーは義賊、つまり正義の
泥棒という危うい自己矛盾を孕んだ一個体であるところの「ゴエモン」を操り、
岡引や同心をはじめ、それぞれ複雑な事情を抱えゴエモンを狙っているに違い
ない敵キャラの追跡をかわしつつ、店で通行手形を買うか、各ステージのどこ
かにある3D迷路に隠されたものを入手して三つの通行手形を集める。
通行手形が集まると次のステージに進むことが出来、その際に夜中の民家の前
を小判をバラ巻きながら走るという義賊ものでお馴染みの派手な演出を見るこ
とが出来る。

 キャラクターもコミカルでなかなか面白いゲームであることは確かなのだが、
この作品には一つ重大な欠点がある。
それは内容が膨大過ぎてゲームクリアまでに時間がかかり過ぎる、という点だ。
このゲームは各ステージをクリアして城にたどり着くのが目的だが、城にたどり
ついたからといってそれで終わりではない。
一つの城をクリアしてはじめて「ひとつの国をクリアしたこと」になるのだ。
ちなみに最初の「国」は九州で、目的地は江戸らしい。

 例によっておいらはクリアしたことがないので、それが感覚的にどの程度なこ
とで具体的に何時間くらいかかった、ということに関しては想像する以外にない
のだが、ただ、当時「丸一日かかった」話してくれた友人の力無い様子から察す
るにそれが24時間という数字に限りなく近かったのではないかと推察すること
しかできないが、2Mという意気込みが逆にクリアを妨げる最大の障害になって
しまったことだけは間違いなさそうである。



AXL 2003

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