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ガルフォース-ETERNAL STORY-

Media :FAMILY COMPUTER DISK SYSYTEM
Maker :HAL研究所
種 別:縦スクロールシューティングゲーム
発売日:1986年


 つくづく言葉とは便利なものである。
例えば、どこかしら影を背負っていそうな中年男性が「俺も昔はやんちゃして
てさあ・・」などとのたまった場合、彼の言う「やんちゃ」はお爺ちゃんの盆
栽の鉢を壊した、だとか、親に黙って給食費でゲームを買ったなどというレベ
ルではなく「実刑判決」が伴っている場合が少なくない。
しかし、そこで「やんちゃって具体的に何をやったんですか?傷害ですか?窃
盗ですか?詐欺ですか?」などということを口にするような手の込んだ自殺の
方法を選ばない限りにおいては「やんちゃ」という一見無害な言葉の交換だけ
で本当であれば殺伐とせざるを得ないような会話も穏便に済ますことができる
のだ。


 ところで、話は変わるが先日久しぶりに妹に会った。
確か以前に妹と顔を会わせたのは正月のことだったので、かれこれ半年振りに
なるが、半年振りに兄と再会した妹の口から出た言葉は「最近、どう?」でも、
「っていうか、結婚する気あんの?」でもなく、「ガンダムSEED見てる? い
や、あれだけはマジで見といた方がいって、人生損するから」であった。

 おいらもガンダム世代と呼ばれるお年頃なので、ガンダムという作品そのも
のには愛着はあるのだが、せいぜいちゃんと見たのは逆襲のシャアまでで、そ
の後はなんとなく「先生、さようなら、みなさんさようなら」という思いが激
しく胸に去来するようになり、以後の作品に関してはゲームを通じての知識し
かなく、当然、現在の最新作となるSEEDを観た事もない。
面白いかつまらないかは分からないが、今更、ガンダムを毎週楽しみにする人
生というのもあまり建設的とは言えないよなぁ・・・と思いつつ、そのことは
忘れていたのだが、さらに最近、たまたま入院することになった友人が一人い
て、見舞いも兼ねて久々に再会された彼の第一声も果たして病状のことでも近
況のことでもなく「ってか、お前、ガンダムSEEDはちゃんと見てるか? あれ
マジで面白れーぞ!」という何らかの魂のシャウトであった。


 まがりなりにも30歳男性と25歳女性がそれぞれ久々に再会した兄又は友
人への第一声がこれなのだ。
この人達はこれから先、ちゃんと大人になっていけるのか、ということが非常
に不安な今日この頃ではあるのだが、学生時代のことを思えば、おいらとて決
して彼らを笑っていられる立場ではなかったのだ。


 思えばおいらも「昔はやんちゃしてた」のだ。
敢えて「やんちゃ」という言葉を使い、「やんちゃだった頃」のことは意図的
に忘れようと努力しながら人生を歩んできた為、「どのくらいやんちゃだった
のか?」など、具体的な事柄にはあまり触れなくないのだが、少なくとも「や
んちゃ」していなかった人にはまるっきり何のことだか分からない原作を持つ
のが今回紹介するゲーム、「ガルフォース・ETERNAL STORY」である。

 まず、原作の方から説明しておくと、大本の原作はSF小説で、ゲームの直
接の原作となるのは、小説をオリジナル・ビデオ・アニメ化した同名の作品だ。
オリジナル・ビデオ・アニメというジャンルが今でもあるのかないのかは分か
らないが、この頃(1985年前後?)から出てきた新しいアニメーションの媒体
で、それ迄はテレビ放映か、全国レベルの映画としてのみ世間に出ることが出
来たアニメが、テレビ等を介さずにビデオ版のみがリリースされる、というパ
ターンのことだ。
ガルフォースの場合も都内映画館での単館上映くらいはあったと思うが、基本
的にビデオアニメとして世に出た作品であり、その為、ファミコンディスクシ
ステムという当時としては「メジャーな舞台」に登場した本作も原作を知って
いる人、となると必然的に「やんちゃ」な人である可能性が高い、というなか
なかに込み入った事情を持つ。

 実はやんちゃだった割に、原作のストーリーの方はかなり忘れているのだが、
キャラクター以外の面ではゲームとは直接的な繋がりがほとんどない為、7人
の女の子が主人公として出てくるSF戦争もの、というかなりアバウトな解説
でご理解を願っておきたい。

 ゲーム内容の方は、縦スクロールシューティングなのだが、ステージを攻略
し、ボスを倒していく、という一般的な楽しみ以外にも、ボスを倒すことで捕
虜になっている(?)仲間を一人づつ救出することが出来、しかも、パイロッ
トを変更することで、そのキャラ固有の攻撃パターンを使用することが可能に
なるのだ。

 原作とのリンクはキャラクター以外希薄であると言わざるを得ない本作だが、
このキャラクター救出に伴う攻撃パターンの増加というシステムは非常に面白
いとおいらは思う。
下手をすれば、ゲーム内容に置いてけぼりにされかねない他のキャラクターの
存在をうまくゲーム内容に反映させ奥行きを持たせている点は他のキャラゲー
にも見習うべき点は多いのではないだろうか。

 シューティングゲームとして見ると、空中物、地上物の両方を一種類のショ
ットで破壊できる、いわば「スターフォース・タイプ」のシューティングで的
キャラクターの造形や行動パターンなどは、スターソルジャーの影響が強いよ
うな気がする。
その点でオリジナリティに乏しい点は否めないものの、「破壊する楽しさ」や
「爽快感」といいった点では充分に及第点を付けられる作品に仕上がっており、
個人的には、同じディスクシステムの名作シューティング「ザナック」と共に
かなり長い間書き換えもせずに楽しめたソフトである。


 ただ、純粋にシューティングゲームとして見た場合には、あまりにも自機が
大きすぎる上に、敵の攻撃パターンが非常にハードな為、難易度的には決して
低くない。
攻撃パターンはともかく、自機の大きさに関しては、このゲームそのものが、
ある程度敵の攻撃を受けることにより左右のウィングがひとつづつ外れて本体
だけになったところで被弾するとミスになる、というゲームシステムに直結し
ている点や、別の仲間をパイロットに指定した場合にそれぞれウィングが展開
して別の攻撃が可能になるなど、「メカもの」としてはなかなか嬉しい演出を
してくれた結果であり、ファンとしては痛し痒しといったところだ。



AXL 2003

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