レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「ポールポジション&ポールポジションII」

Media :アーケード、スーパーカセットビジョン、Play Station,
GAMEBOY ADVANCE
Maker :namco
種 別:擬似3Dカーレース
発売日:1982年,1983年(II)


 このゲームを「3D」などと言おうものなら、プレステ世代の今のゲームキ
ッズ達によってたかって口の中にデュアルショック2を突っ込まれ、耳の穴ま
でメモリーカード(8M)で塞がれてしまうような気がするのだが、1982年当
時にあってこのポールポジションというゲームは、

「これこそが3D!」であり、
「ゲームの未来系!」であり、
「予選通過、グランプリスタートです!」というくらいに物凄いゲームだった
のである。

 とにかくこのゲームが登場する迄は殆どのカーレースゲームはトップビュー、
つまり「上から見た図」として描かれているもので、その為に現実的なヘアピ
ンカーブなどは再現不可能、さらには、フォーミュラタイプのレーシングカー
を遥かに凌駕するスピードを出す救急車が追い越しをかけてくるのは日常茶飯
事・・・というちょっぴり歪んだ世界での「F1レース」しか体験することの
なかった当時のゲーム少年達にとって、このポールポジションというゲームの
登場は衝撃的以外の何者でもなかったのだ。


 ポールポジションは、レーシングカーのコクピットを模した大型筐体で供給
されており、ビハインドビュー(自分の車の背面を捉えた視点)によって立体
的にサーキットが再現された画面で、アクセル、ブレーキ、二段階ギアを駆使
してコースアウトしないようにカーブを曲がり、ライバルカーを避けて規定時
間内にコースを周回することを目的とした本格的F1レーシングゲームだ。
尚、IとIIの違いはコースの数(Iが一種類に対してIIは二種類になり自由に選
択が可能)と一部グラフィックの変更となっているが、II以降続編が作られな
かったこともあり、一般的にはIIの印象が強い。


 当時として斬新だったのは、レース本戦の前に必ず予選が行われその時の成
績によって本戦時のスタート位置が決まるという凝った作りだ。
ちなみに、本戦時に最も有利な位置、つまり一番前のスタート位置をポールポ
ジションと呼ぶらしく、それがゲームタイトルの由来にもなっている。

 さらにこのゲーム、喋るのだ。
それまでにも喋るゲームがなかったわけではないが、大抵の場合は短い掛け声
だったり、英語での音声だったりしたがポールポジションははっきりと女性の
声で「予選スタートです」だとか「予選通過グランプリスタートです」と告げ
てくれるのだ。

 大抵の場合、100円玉を握り締めた日曜の昼下がり・・・というような状
況でこのゲームをしてプレイしていたおいらはこの声を聞くたびに「予選通過、
グランプリスタートなのだな・・・」と、何故か感慨深くその一言一句を噛み
締めつつハンドルにしがみついていた。


 ちなみに当時、このゲームをプレイして何よりも驚いたことは、「車という
ものをあまり速度を出しすぎるとカーブをうまく曲がれない」という当たり前
の現実を目の前につきつけられたことだった。
何といってもそれ以前のほとんどのゲームにはカーブらしいカーブというもの
が存在していなかったし、自動車運転経験の無い(これは今もそうだが)小学
校3年生にとってはそれまで考えたこともなかった現実だった。

 それまでのレーシングゲームというのは敵車を避けることだけが全てで、敵
車を上手に避けられるのであればスピードは1km/hでも早い方がいいに決
まっていた。
ところがこのゲームではカーブを曲がる為には減速したりコース取りをしたり
という非常に高度なテクニックが求められるのだ。


 また、最近のレースゲームのように敵車と接触しても多少減速するだけだっ
たり、あまつさえ意図的に敵車を追突させることによってスピードアップが図
れるような軟派な作りではなかったので、敵車やコース外の看板にぶつかる度
に自分の車は清く正しく火を吹いて爆発し、きっちり数秒のタイムロスとなる
為に難易度の面から言えば、結構なものがったのも確かだ。


 しかしそれでも凛と澄んだBGMに、コースの遥か向こうに見える背景(こ
れはちゃんとカーブによって見える位置が移動するのだ)の山々の美しいグラ
フィックは、喩え口にデュアルショック2を突っ込まれたとしても見とれるほ
どに美しく、ゲームセンターでこの筐体を眺めながら「ああ、あれが家にあっ
たらなあ・・・」と何度思ったか知れない。


 ところがどういうわけか、このゲームは他のナムコのゲームに比べると知名
度の割に移植回数が非常に少ない。
勿論、1982年当時としてはパソコンにも移植できないような複雑なゲームだっ
た為だが、結局ファミコンにも移植されることなく、有名なところでは最近に
なってやっと年代Play StationとGAMEBOY ADVANCEのナムコミュージアムに収録
されたくらいだ。

 ところがよくよく調べてみたら、1984年にエポック社からカセットビジョン
の後継機として発売されたROMカートリッジ式家庭用ビデオゲーム機「スーパー
カセットビジョン」にポールポジションIIが移植されていたのだ。
個人的なことを言わせて貰うとスーパーカセットビジョンというのはかなりの
盲点で、前のカセットビジョンの頃はまだ高速船やアタリ、アルカディアとい
ったいわばROMカートリッジ式家庭用ビデオゲーム機ブームの頃に当たっていた
ので、おいらもある程度は知っていたが、後継機のスーパーの方となると、本
体発売が既に1984年、いわばファミコンブーム前夜であり、他のほとんどのメ
ーカーは撤退済みで当時年がら年中ゲーセンとおもちゃ屋に出没していたおい
らですら「そういうゲーム機がある」くらいのことしか知らなかった。

 そのスーパーカセットビジョンにnamcoは参入しており、ポールポジションII
の他にマッピーとスカイキッドを発売している。
マッピー以外はなんというか微妙なチョイスであることろがちょっと気になっ
たりもするのだが、当時のゲーム機としてはポールポジションIIが移植された
というのはなかなかに大変なことであり、エポック社としてもこれを機に一発
逆転を狙いたいのは山々だったことと思うが、残念なことにこのポールポジシ
ョンIIは合計で30本リリースされたスーパーカセットビジョン専用ソフトの30
番目、つまり一番最後を飾ることになってしまったようである。



AXL 2003

HOME