レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「ハイドライド」


Media :PC-88,FM-7,X1,MSX,Windows等
Maker :T&E SOFT
発売日:1985年

 その昔、日曜日の朝、テレビ東京で「パソコンサンデー」という番組が放送
されていた、おいらが見始めた頃は司会者は三波豊和で、後に小倉智明に変わ
っていたが、一般的に「嵐の前の塵」並にその寿命が短いといわれるパソコン
番組の中では群を抜いた長寿番組だった。
シャープの提供番組だった為に、パソコンといっても主にMZシリーズ、後には
X68000を前提とした番組だったが、この番組で、おいらが一番楽しみにしてい
たのは、パソコンソフトの売上ランキングだった。

 当時はまだパソコンを持っておらず、パソコンゲームがどんなものなのかを
想像して楽しむ為にはこの番組の存在は非常に大きかったのだ。
そんなソフト売上ランキングで、ぶっちぎりの強さを見せたのがアクションR
PGの金字塔、「ハイドライド」だった。
とはいっても、その頃のおいらにはRPGといわれてもなんのことだかよくわ
からず、とにかく司会者が連発する「凄い」という言葉を真に受け、「言葉の
意味はよくわからんが、とにかく凄い自信だ。」と思っていた。

 それからしばらくして、MSXを購入したとき、おいらは同時購入のゲームと
して迷わずにMSX ROM版のハイドライドを選んだ。
これでやっとおいらも「あの凄いゲーム」を体験できる・・・と、しかし、始
めてプレイした感想は「さっぱり訳がわからない」であった。

 ゲーム内容はファンタジーの世界を舞台に、主人公が悪の魔王にさらわれた
プリンセスを助ける為に、3人のフェアリーを探し出し、最後は魔王を倒す・
・・という王道中の王道RPGである。
しかし、このゲームにはそもそも「会話」というものが存在しない。
会話が存在しないのに「謎」だけはふんだんに用意されていた。

 例えばおいらが唯一覚えている「謎」は、何人目かのフェアリーを助け出す
為には、敵モンスターのウィザード(魔法使い)の発射する魔法弾を受け続け
なければならない・・・というものだ。
ただし、先ほども書いたように会話がないので、ゲーム中にヒントとなるもの
は何もない。
これのどこか「謎」なのだろうか?
何をどうすれば、この「謎」を解いて、「フェアリーを助ける為に、ウィザー
ドの攻撃を受け続けなきゃいけないんだ!」という結論に到達することができ
るのだろうか・・・?
つまり、このゲームの「謎」というのは、その「謎」そのものが既にして「謎」
なのである。
そういう意味では「謎」に満ちたゲームであるといえる。


 おいらはこの手のややこしいゲーム大嫌いで、かつすぐにあきらめてしまう
という根気のカケラもないヒトだが、おいらの友人にやたら、コアなゲーマー
がいて、わざわざゲーム雑誌の編集部に電話してまで次々に「謎の謎」を解明
していき、彼の助けを借りてついにゲームをクリアしたのだった。


 ところで、このハイドライド、実はファミコンにも移植されている、移植を
行ったのは東芝EMIレーベルの愛称「トエミ・ランド」。
・・・痛々しいネーミングだが、それはともかく移植された作品は「ハイドラ
イド・スペシャル」というタイトルで、リリース前に「作品の内容はハイドラ
イドとハイドライド2の中間」とアナウンスされていた。

 実はこのアナウンスがされた当時、パソコン版のハイドライド2がまだ発売
されていなかったのだ。
それだけに前作のファンは一時はかなりの期待を寄せたようだが、出来あがっ
たスペシャルは完全に1と同じ内容で、「2の要素」は魔法が使えるが使える
ようになった、というそれだけのことであった。

 面白いのは、パソコン版では名作の扱いを受けているハイドライドだが、フ
ァミコン版になると途端にクソゲーのレッテルを貼られていることである。
別に特に移植版の出来が悪かったわけではない。
これはその直後に発売されたドラゴンクエストの為にファミコン初のRPGと
いう印象が全く残っていない上に、やはりハイドライドはユーザー年齢層の低
いファミコンに受け入れられるようなゲームではなかった、ということである。

 いや、ノーヒントでやれ!といわれたら、今のおいらでも受け入れたくない
ゲームだが、おいらにとっても初めて買ったパソコンらしいパソコン、のMSXで
最初にプレイしたゲームであり、難易度はともかくとして、少なくともアクショ
ンやシューティング一辺倒だったファミコンやアーケードゲームよりは深い世界
の広がりが感じられ胸をときめかせたゲームであることには変わりがない。



AXL 2001

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