レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

は〜りぃふぉくす-雪の魔王編

Media :PC88,PC6001mkII,MSX
Maker :MicroCabin
種 別:テキスト入力型アドベンチャーゲーム
発売日:1985年

 最近のPCゲームは、環境への配慮のためなのか経費節減のためなのか分から
ないが、めっきりハードケースのパッケージが減ってしまった。
おいらがはじめてパソコンのゲームを購入したとき、何よりも驚いたのはその
内容ではなく、無意味とも思える箱のデカさと重厚さだった。
その時購入したのはMSXのROMカートリッジだったので、商品の中身そのものは
ファミコンのそれと変わらないのに、箱だけはやたらとでかく、材質もプラス
チックなどでできており、紙でできたファミコンソフトしか知らなかったおい
らは、一体どういう了見でこんなご大層なパッケージが必要なのかと思ったも
のだが、今にして思えば、機種によって媒体の変わるパソコンゲームの場合、
一番大きな媒体(おいらの時代では5インチフロッピーディスクか)に合わせて
箱を作る必要からあのようなカタチになったのだろうとは思うのだが、ファミ
コンゲームしか知らない友人にその巨大な箱を見せるときは誇らしく思えたも
のだ。

 さて、そんな古き良き時代にマイクロキャビンから発売されたアドベンチャ
ーゲーム「は〜りぃふぉっくす雪の魔王編」を紹介しよう。
「は〜りぃふぉっくす」という不自然な平仮名表記を見ただけでも、このゲー
ムが1980年代半ばをおいて他に発売されるタイミングがなかったであろうこと
は十分に想像がつくが、内容の方もその表記方法からイメージされる通り、80
年代的に一見カワイイ系のゲームで、主人公の子ギツネが女の子に会うために
旅に出る、というストーリーになっている。

 この「は〜りぃふぉっくす」の箱も他のパソコンゲームの例に漏れず5インチ
フロッピー基準の大きさで、おいらが購入したMSXのテープ版ではいささか不釣
合いなほど大きな箱に入っていたが、パッケージの材質は現在主流となってい
る紙パッケージで、しかも、現在のパソコンゲームのそれをちょっと安っぽく
したようなもので、パッケージのイラストの色も紙質のせいか微妙にくすんで
いたことを覚えている。
この頃は同じパッケージでもエニックスなどの大手メーカーのものは、それな
りのものに仕上がっていた反面、規模の小さなメーカー製のものは、家内製手
工業的なハンドメイド感を漂わせるものも少なくなかった。
ソフトメーカーがまだソフトハウスと呼ばれ、ゲームがまだオフィスではなく、
事務所兼住宅のような場所で製作されたいた時代の話だ。

 先ほども書いたようにおいらが購入した媒体は、MSXのテープ版なので、ゲー
ムをはじめる為には、データレコーダを使ってパソコンにゲームを読みこませ
なくてはならない。
32KBのメモリを使用するタイプのもので、当時主流だった1,200Bpsのデータレ
コーダを使うとざっと一回あたり10分ほどの待ち時間が必要で、特にはじめて
プレイするゲームでのこの時間は、「はたして、正常にデータは読み込まれる
だろうか?」というドキドキ感や、「いったい、これからどんなゲームがはじ
まるのだろうか?」というワクワク感から用もないのに固唾をのんでひたすら
モニター画面を見つめているのが常だった。


 は〜りぃふぉっくすを購入したおいらは、早速カセットテープをデータレコ
ーダにセットし、パソコンにロードコマンドを打ち込み、テープをスタートさ
せた。いつもなら、ここで、アナログモデムでインターネットに接続した時の
ようなピー、ガーという音が聞えてくるはずなのだが、おいらの予想に反して
データレコーダのスピーカーから聞えてきたのは機械音ではなく、男性の声だ
ったのだ。


「シーン1、シタンの町・・・・」

 そう言った男性の声色は、「ちょっとそこの横丁で、魂を抜かれてきたよボ
カア・・・」といわんばかりの、生気ゼロとでも形容すべき無機質なもので、
おいらはしばし呆然としてしまった。
このゲームは、全体が何章かに分かれており、テープ版の場合、章が変わる毎
にデータを読み込む必要があった為、メーカーの方で続きをプレイするユーザ
ーに分かりやすいように、と各データの前にこういった声のリーダーを挿入し
ておいてくれたのだと思うが、少なくともおいらにとっては製品版のゲームの
カセットテープに人の声がする、などということは後にも先にも経験したこと
がなく、それもいかにもプロといった感じのお姉さんの声ではなく、何らかに
魂を引かれたとおぼしき男性の声だったところがたとえ感じたくなくても時代
を感じさせてくれる。

 ある意味において、このゲームのストーリーや、パッケージイラスト、敢え
て平仮名で統一したタイトル表記すらも台無しにする形ではじまったゲームで
はあるが、詳細なストーリーを説明しておくと、本作自体が無印の「は〜りぃ
ふぉっくす」というゲームの続編にあたるもので、前作のストーリーは、病気
になった子ギツネを救うために母ギツネが冒険をするという内容だったが、本
作ではその母ギツネもすでに亡く、子ギツネ自身が主人公となっている。
子ギツネは前作で知り合った人間の少女マリに会いに行くが、マリが雪の魔王
にさらわれたことを知り、マリを助けるために旅に出る・・・というのが序盤
の物語になっている。

(2004.3.6追記 ヒロインのマリさんは雪の魔王にさらわれたわけではなく、
       村人が生贄として雪の魔王に差し出してしまった((^^;;)
       というのが正確なストーリーでした(^^;
              情報を提供してくださったレゲーFANの白神さんに感謝
       いたします(^_
^))

 主人公が子ギツネのため、登場するキャラクターも人間より動物の方が多く、
またキツネとしての特性(?)を利用していざという時には姿を変えたりする
こともできる(ただし、葉っぱというアイテムを消費する)など、いかにも童
話的な物語となっている。
それ以外の部分では比較的オーソドックスなテキスト入力型アドベンチャーゲ
ームに仕上がっていて、この種のゲームにつきものの言葉探しで苦労させられ
る理不尽さもそれなりにはあるが、当時のゲームとしては根気さえあればヒン
トなしでもクリアできるという点で比較的難易度の低いゲームだったように思
う。

 おいらが前作である無印をプレイしていないので、どうしても本作を基準に
おいてしまうが、このゲームの面白さは子ギツネの視点で世界を見ることがで
きる、という点ではないだろうか。
たとえば、ゲームでは動物たちとは「はなす」ことでコミュニケーションを取
れる反面、人間とは直接言葉を交わすことができない。
人間の視点からみればなんでもないようなことが、子ギツネの視点からは時に
危険なものに変わることもある。
その不自由さともどかしさを越えてゲームを進めることができたときに感じる
喜びは普通のアドベンチャーゲームとはまた違った味わいがあるのだ。



AXL 2004

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