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北斗の拳-新世紀末救世主伝説-(MD版)


Media :MEGA DRIVE
Maker :SEGA
種 別:横スクロール・格闘アクションゲーム
発売日:1989年


 週刊少年ジャンプに連載されていた「北斗の拳」を原作としたゲームの1本
だが「北斗の拳」を題材としたゲームは決して少なくはないので、一番分かり
易い言い方をするなら「メガドライブ用の北斗の拳」ということになる。

 セガが発売した「北斗」ゲームとしては2本目にあたり、ストーリー的には
mark IIIで発売された「北斗の拳」の後の世界が描かれている。
尚、同じく第一作が序盤からラオウとの対決をなぞったファミコン版の北斗の
拳シリーズ(東映動画)と比べてみると、ファミコン版の2はメガドライブ版
より発売が2年早いだけあって(1987年発売)ゲームのスタート位置は同じだ
が(ファミコン、メガドライブ版共に最初のボスはバスク)表面上はファルコ
がラスボスになっているのに対して、メガドライブ版はファルコ以後もゲーム
は続き、カイオウとの闘いまでが描かれている。

 実は北斗の拳に関しては、ちゃんと原作を読んだことが無いので、カイオウ
以降の話があるのかさえ分からないのだが、そんな断片的にしか北斗の拳を知
らないおいらにとっても、このゲームの前作、つまりMARK III用として発売さ
れ、絶賛を浴びた「北斗の拳」の存在は雑誌などで読んで知っていたし、MARK
IIIを所有していなかった為、評判のよくなかったファミコン版しかプレイでき
ずにいたおいらにとっては、メガドライブで北斗の拳が出る!というニュース
は、充分に興味の持てる話だった。


 本作は、メガドライブ用のソフトとしては通算10本目にリリースされた作
品となり、発売時期は本体発売から約半年後のこととなる。
発売日にほぼ定価で購入したおいらはまず、パッケージの黒を基調とした劇画
調のイラストに清く正しく感動した後、厳かにカートリッジを挿入し電源ボタ
ンを入れた。

 メガドライブ用のソフトなので、ある程度予想はしていたとはいえ、ファミ
コン版とは比較にならないくらい美しい画面に嫌が上にも期待は高まる。
遂に夢にまで見た「正調・セガ版北斗の拳」との出会いの時がきたのだ。


 ゲームの内容を紹介しよう。
ジャンルは横スクロール格闘アクションゲームで、プレイヤーは北斗神拳の伝
承者「ケンシロウ」を操作する。
アクションはパンチ、キック、ジャンプが可能で、敵を倒す毎に赤いメーター
が僅かずつ上昇し、一定値に達するとケンシロウがパワーアップする・・・と、
実はこの辺のシステムはファミコン版にかなり違いものがある。

 ただし、ファミコン版との決定的な違いは、ひとつのステージをクリアした
ら強制的に次のステージに進むわけではなく、ステージはマップ上で選択が可
能。また、一度クリアしたステージに戻ることも可能、といういわばスーパー
マリオワールド方式になっており、そのステージのボスを倒すことにより、新
しいマップ(次の章)に進むことが出来る、という比較的自由度の高い章割り
の構成を取っていることだ。


 次においらの感想だが、先程も書いた通りビジュアル面では前作から劇的な
進化を遂げているし、ライバルとなるファミコン版1、2とは比べ物にならな
い程美しいのだが、殊ゲームとして考えると不満な点は決して少なくない。

 まず何といっても困るのが、他の北斗の拳ゲームに比べてパワーアップ前の
キックのリーチが非常に短いことで、一般的に、近距離の敵にはパンチ、遠距
離の敵にはキックと使い分けるのがこの手のゲームでのセオリーなのだが、本
作に関してはキックのリーチがパンチのそれとさほど変わらない上に、正面に
ストレートで出るパンチに比べて、斜め下から繰り出されるキックは位置が予
測しにくい上にパンチに優るメリットもないので、あまり存在意義がなくなっ
てしまっているということだ。

 これはパワーアップすることによって解消されるのだが、このパワーアップ
システムにも問題があるとおいらは感じる。
歴代のゲームと比べてみると、MARK III版にはそもそもパワーアップというシ
ステム自体がなく、ファミコン版では敵を倒した時に出す「あべし」という文
字を7つ集めることによってパワーアップする。
メガドライブ版の場合は、敵さえ倒せば特別なことをしなくてもパワーアップ
に必要なメーターは上がるのだが、この上がり方が非常に遅い。
「あべし7つ」なら、7人のザコをパンチで倒せば(キックで倒すと「あべし」
を出さない)パワーアップが可能だが、本作は2や3つのステージを普通にク
リアしたくらいでは到底パワーアップは不可能なくらいパワーアップまでに時
間がかかる。

 当然、パワーアップ前の状態では中ボスとの闘いで本来の力を発揮できない
為、一度クリアしたザコステージを何度も往復してパワーアップゲージを稼ぐ
というプレイ方法に偏りがちになる。
その上、このゲームは残機制ではなくライフゲージ制を取っているため、一度
でも残りライフが0になってしまえばその場でゲームオーバー。
裏技扱いでコンティニューがあるにはあるが、章のはじめに戻されてしまう為
中ボスやボスとの戦いは基本的に何度も場数を踏んで相手のパターンを知る必
要があるのに、1プレイにやたら時間がかかるのだ。


 最後に、余談になるが、このゲームにはそれ迄の北斗の拳ゲームにはなかっ
た演出が施されている。
それは、リンやバットといったサブキャラクターがステージの最後に待ってい
てケンシロウと文字で会話をしてくれる、というものである。
原作ファンにとっては嬉しい配慮だと思うのだが、いかんせんおいらは原作に
うとい上に、この会話なるものがあまりに断片的過ぎて原作を知らないと全く
何の話をしているのか見当もつかないのだ。

 例えば序盤のステージで出てきたバットはケンシロウに「リンをまたあんた
に会わせたかった」と言うのだが、それに対するケンシロウの公式回答は、「
男の顔になったな」というもので、まるっきり会話として噛みあっていない。
強引に不可読みすると「バカだな、バット・・・。リンのことなんか持ち出し
て。妬いているのか? 私はお前しか見ていないよ」という意味に取れなくも
ないのだが、こういう不謹慎な不可読みをするとファンの人に怒られそうだし、
それにこれはケンシロウとバットというより、パタリロ!に於けるバンコラン
とマライヒみたいである。

 ちなみにリンとの会話では、
「ケン、世界を救って!」
「この世界を救うのはオレしかいない!」

という、断片化ここに極まれリ、的な会話を拝むことが出来るのだが、これは
これで、ドラッグパーティに於けるバカップルの午前4時・・・といった感じ
がしないでもないが、まあこの辺の演出に関しては何もないよりは遥かにマシ、
ということで納得してしまおう。



AXL 2003

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