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必殺仕事人

Media :FAMILY COMPUTER
Maker :バンプレスト
種 別:アドベンチャーゲーム
発売日:1990年


極悪非道の悪行を
闇で裁いて仕置きする
誰が言ったか裏家業

その名も必殺仕事人


 電源を入れると表示されるテキストはまるでテレビ版必殺のオープニングナ
レーションのようである。
(ただし、全て平仮名だが)

 ちなみに「必殺仕事人」とは、池波正太郎原作の時代小説をテレビ化した
昭和47年の「必殺仕掛人」に連なるシリーズドラマで、「仕事人」は必殺の
中でも非常に高い人気のあるシリーズである。
(主に)幕末の江戸を舞台に、殺し屋という裏家業を持つ者達が、頼み人の晴
らせぬ恨みを金で晴らす、というのが定番ストーリーになっている。

 余談だが必殺シリーズのタイトルはほぼ「必殺○○人」の形でついているが
中には「必殺商売人」というのもあり、名前だけ聞くと浪速テイストが爆発し
ているような感じである。

 さらに必殺シリーズ中最大の問題作として、「翔べ!必殺うらごろし」とい
うものがあり、これは何と超常現象を扱ったというもの凄い時代劇である。
さらに、和田アキコが「男だか女だか分からない役」で出演しており、彼女(
?)の殺し技は、「相手の顔を殴りまくって頭を一回転させる技」らしい。
この裏殺しの出演者でもう一人いい味を出しているのが家政婦シリーズでお馴
染みの市原悦子で、彼女の役名はなんと「おばさん」(!)仲間内からもそう
呼ばれているらしい、そして彼女の殺し技は「世間話をして相手が油断してい
るところを殺す」(!)という巣晴らしすぎるものであるらしい。

 ついでに言うと、「仕事人」でもお馴染みの簪(かんざし)屋の秀(三田村
邦彦)が主演の「必殺まっしぐら」は何と「スーパーマリオブラザーズをフュ
ーチャリングした必殺」で、簡単な筋を説明すると、秀は岡惚れ(片思い)し
ている花魁(おいらん)を身請けする為に仕事をしており、つまり、秀はマリ
オ、仕事料として受け取る小判は「コイン」、当然、花魁は「ピーチ姫」への
オマージュ(?)となっており、何が凄いかというと、まっしぐらの最終回、
秀は敵の親玉と戦うのだが場所は何故か、「橋の上」で、敵の親玉はモロ肌を
脱いで、着物の中から100や200はあろうかという金槌(ハンマー)を次
から次へと「放射線状」に投げまくる、のだ。

 そんな問題作も多く抱える「必殺」シリーズだが、仕事人は、初代「必殺仕
事人」を皮切りに「新・必殺仕事人」、「必殺仕事人III」、「必殺仕事人IV」
「必殺仕事人V」、「必殺仕事人V激闘編」、「必殺仕事人V旋風編」、「必殺
仕事人・風雲竜虎編」(どんな「編」だ?)、ときて、「必殺仕事人・激突!」
まで続いている。

 実は、「風雲竜虎編」あたりで視聴率が低迷してしまい、起死回生を謀り、
かなり前衛的な「必殺剣劇人」なるものを放映したが、これがコケてしまい、
(評価は分かれているみたいだが、おいらもあまり面白く感じなかった)一旦、
必殺シリーズは終了している。

 その後、しばらくブランクがあった後に、それまでの金曜夜10時枠から木
曜日に移って「激突」が1作のみ放映され、映画版「主水死す!」によって、
現在のところは一応完結している。



 さて、今回紹介するこのゲーム、どういうわけか非常に知名度が低い。
メーカーがバンダイ系列のバンプレストで、仕事人のグラフィックが何故か全
てSD(!)になっているという点から、別の意味で非常に危険な匂いがする
ことなどがその原因ではないかと思うのだが、必殺ファンのおいらは発売日に
定価で購入してしまった。

 画面は誰がどう見ても、ファミコン世代の2DRPGのように見えるのだが、
実はアドベンチャーゲームで、戦闘などは殆ど存在せず、主水を始めとする仕
事人を使って情報を集めながらゲームを進めていく。
ストーリーは、阿片(麻薬)をバラまく巨悪に仕事人達が立ち向かう・・・と
いうもので、非常に良く出来ている。
実際、そのまま映画版必殺が1本作れそうなほどの出来の良さで、仕事人達以
外にも、お馴染みのせん、りつ(主水の妻、姑)や、おいらの憧れの的である
ところの「筆頭同心田中様」も出演している。

 ただ、唯一笑ってしまったのが、ゲームスタート直後のオープニングテキス
トで、曰く

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時は文政
華やかな文化栄えし頃
人々はその快楽に浸りきっていた

が、しかし、その快楽の裏には
多くの人々の犠牲があったのである。
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ここまでは、多少苦しいながらも意味は分かるのだが、問題はこの後である。

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そして若き者もまた
その満たされぬ愛の想いに荒れ狂い
巷に怒涛の嵐を巻き起こしていたのだった!
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 どんな状況だ?

なんとも物凄い文章である。
魔文とでもいうのだろうか、意味が全く通らないのに、何だかスゴイことにな
っている、ということだけは理解できる。
まさに「言葉の意味はよく分からんが、とにかくスゴイ自信だ!」の見本のよ
うな文章なのだ。


 ちなみに文政年間とは西暦でいうと1818年から1829年までを指し、明治元年
(慶応4年)は1868年にあたる。
オリジナルの必殺も、ほぼこの時代を舞台としているが、たまに2時間スペシ
ャルで、元禄時代になったりしていた。

 ゲームの方は主人公である中村主水(藤田まこと)、念仏の鉄(山崎努)、
三味線屋の勇ニ(中条きよし)、簪(かんざし)屋の秀(三田村邦彦)、おり
く(山田五十鈴)、何でも屋の加代(鮎川いずみ)といった定番仕事人を始め、
鍛冶屋の政(村上弘明)、組紐屋の竜(京本政樹)、西順之助(ひかる一平)
といった比較的後期の仕事人までカバーしている。
また、ゲームの最後にはお待ちかねの「殺し」のシーンがあり、カードバトル
ながらも、好きな仕事人を選んで敵の親玉軍団を闇に葬ることができる。


 結論からいうと、必殺ファンであれば、持っていて絶対に損はない作品に仕
上がっており、隠れた名作といっても差し支えないと思う。
勿論、ファミコンというハードの特性上、喋るわけでも、実写取り込みや動画
が入っているわけでもないが、SDキャラとはいえ、ファミコンでよくぞここ
まで!というほど、各キャラクターの似顔絵は似ているし、ストーリーも原作
の味を損なうことのないハードボイルドなものである。

 贅沢をいうなら、このような「映画的」なものだけではなく、数十話の短い
エピソードをオムニバスで揃えた「テレビ的」な必殺も作って欲しかったと思
っている。



AXL 2001

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