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「フロントライン」

Maker :TAITO
Media :アーケード、FAMILY COMPUTER等
発売日:1982
種 別:縦スクロール型シューティングゲーム(?)


 本当にたった一人で最前線を突破し敵の要塞を破壊する白兵戦ゲーム。
よく考えると、たった一機で敵の全戦力と戦うというシチュエーションは、シ
ューティングゲームなどでは当たり前だが、フロントラインの場合、より現実
的な現代の戦争に題材を取っている為、その異様さがことさらに際立っている。
シチュエーション、画面構成などからいえばは後年カプコンがリリースした「
戦場の狼」の元祖的な作品だが、このゲームを紹介するに当たって「戦場の狼
の元祖的作品」という説明をいれなければいけないあたりに、このゲームの根
本的な悲しさのようなものを感じてしまう。

 カプコンの「戦場の狼」もやはりたった一人で敵軍を全て相手にし、画面上
に向かって進軍していく・・・という構成は同じだが、「戦場の狼」の主人公
には、ちゃんと「スーパー・ジョー」という名前がある。
日本語に訳せば「ちょ〜〜!ジョー」である。
女子高生あたりにかかると「ちょ・ジョ」などと略される恐れもあるが、とに
もかくにも彼は「カプコン版ランボー」のようなキャラクターとしてちゃんと
設定されており、敵を倒すだけではなく、味方の捕虜の救出も任務に含まれて
いる。

 単身捕虜の救出を任されるなど、いかにも「期待されている」という感じが
するし、「切れ者」という雰囲気も漂う。
捕虜救出が任務なのだから、大部隊を投入するよりも、隠密作戦の可能な単身
行動の方がリスクが少ない、という理屈も成り立つ。

 しかし、我らが、「フロントライン」の主人公にはそんなちゃんとした設定
は一切用意されていない。
猫でもないのに、名前すら無い。
ただ、ピストルを撃ち、手榴弾を投げる、そして戦車を乗り継ぎ、敵の要塞を
爆破するだけである。
敵が何者なのか、彼が何故に単身で乗り込まなければならないのか、そういっ
た説明は一切存在しない。

 しかも、悲しいことには彼自身、敵兵と服やヘルメットの色以外全く同じ姿
形をしているのだ。
もしかしたら、彼は敵軍の一員で、何らの理由によりたった一人でクーデター
を行っている、という見方すら出来る。


 まあ、逆に言えばそれくらいプレイヤーの想像力が入り込む余地があるのが
「あの頃ゲーム」の良さでもあるのだが・・。

 ちなみにこのゲームのアーケード版は非常に変わった操作系統になっていた。
レバー、ボタンの他に一昔前のガチャガチャ回すテレビのチャンネルを指先で
掴めるほど小さくしたようなトリガーボタンがついていたのだ。

つまり、このチャンネルモドキを回して、ピストルを撃つ方向を定め、押すこ
とによって発射するのだ。
実際に使ったことのない人にこの感覚を伝えるのは非常に難しいが、とにかく
これが使いにくかった。

 何故ならまず、プレイヤーは左手で握っているレバーで主人公を四方向に移
動させつつ、右手のチャンネルを回して敵のいる方向に合わせピストルを撃た
なければならないのだ。
さらに、手榴弾は主人公が向いている方向に投げるので、これも常に頭に入れ
ておかなければならない。
つまり、最低でも、プレイヤーは主人公が向いている方向と、チャンネルトリ
ガーが向いている方向を把握しつつ、前から来た戦車には前を向いて手榴弾、
背後の兵士にはチャンネルを下に合わせて、ピストルと、リアルタイムに応戦
し続けなければならないのだ。

 出来る人にとっては何でもないのかもしれないが、おいらにはかなり辛いも
のがあった、こういうことが出来る人というのは、得てして旗揚げゲームも異
常に上手かったりするわけだが、おいらはこのゲームも旗揚げゲームも全然駄
目である。
「赤上げないで、白下げない」とは何事だ!と激昂してしまうタイプなのだ。


 ちなみにファミコン版に移植された際に、ファミコンのコントローラーに合
わせて、主人公が向いている方向にピストルも手榴弾も発射できるようになっ
た為、ファミコン版での難易度はかなり落ちた。
操作系統が変わっただけで、難易度が落ちるあたりに、このゲームの問題があ
るのである。


 ただ、おいら自身、そう言いながらもアーケード版で結構遊んでいた。
このゲームには中盤以降、戦車戦が可能になるのだ。
主人公が乗り捨ててある戦車に乗り込み、敵の戦車を蹴散らして進軍していく
というシチュエーションが好きだったし、何よりも、白兵の主人公が戦車に「
乗り込むことが出来る」というギミックは非常に斬新だったのだ。
しかも主人公が乗り込める戦車には軽戦車と重戦車2つのタイプがあり、軽戦
車の場合は、敵の砲撃を食らうと主人公もろともその場で爆発してしまうが、
重戦車の場合は砲撃を食らってもしばらくの間煙を吹いているだけで、その間
に主人公が脱出すればミスにはならなかった。


 だから、主人公用の重戦車を見つけた時は、誰しも幸福な気分になる。
重戦車に乗り込んだ時はなんとも言えない安堵感に包まれる。
しかし、自分が乗り込む前に敵の砲撃により主人公用の重戦車が破壊されてし
まった時は、やり場の無い絶望感に打ちひしがれるのだ。


 ちなみにこのゲーム、最後の敵要塞だけは白兵状態の手榴弾でしか破壊でき
ない、今更そんなことを書いておく必要もないかもしれないが、昔からフロン
トラインについて語る場合は、きっちりとこの事を言わなければならない、と
いう暗黙の了解のようなものがあるので、やはりきっちりと書いておくのであ
る。



AXL 2001

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