レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「ボコスカウォーズ」


Media :Family Computer,MSX(?),PC-88(?)
Maker :アスキー
発売日;1985年(ファミコン版)
種 別:シミュレーションRPG(?)ゲーム


 おいらが中学生の頃、うちの近所にファミコンソフト専門のレンタル店があ
った。当時、ゲームのレンタルというのはユーザーにとって非常に革新的なこ
とだった。
普通なら5000円以上払わなければ、そのゲームをプレイすることすら出来
ず、買った後でそれがつまらないゲームだったことに気づいてもどうすること
も出来ない。
しかし、レンタルが利用できればたくさんのゲームを試用し、本当に自分に合
ったゲームを選ぶことができる・・・はずなのだが、どういうわけか、おいら
はこのレンタル店をほとんど利用しなかった。

 なんというか、ゲームというのは、ショップで購入し、パッケージを開けて
本体に差込み電源を入れる、オープニング画面が表示され、BGMが鳴り響く
迄の僅かゼロ・コンマ何秒こそが最大のカタルシスである、というわけの分か
らない持論を持っていた為である。

 発売日を指折り数えて待ちわびて、発売日の当日は学校から走って家まで帰
り、小遣いを握り締めておもちゃ屋の扉をくぐる、そして、夢にまで見た新作
ゲームが自分の夢を超えるほどの出来なのか、それとも大きく落胆させられて
しまうのか、電源を入れてから画面が表示されるまでのほんの僅かなタイムラ
グは、ゲーム少年にとっては、ギャンブラーにとってのスロットが回転する瞬
間、カードが配られる瞬間に感じるカタルシスと同種のものである、という思
い込みがあり、事前に買ってもいないゲームを試用するというのは、自らこの
最大の楽しみを壊してしまうことになる。

 というかなり 風変わりな理由から、おいらはあまりこのレンタル店を利用
せず、友達から借りたゲームもあまり本気になってプレイすることはなかった。


 今回紹介する「ボコスカウォーズ」というゲームは中学1年の頃に、このレ
ンタル店で借りてプレイしたものだったか、それとも友人に借りてプレイした
ものだったかははっきり思い出せないが、どちらにしても、自分で購入したゲ
ームではない、ということだけは確かだ。
対価を払っていないゲームに対しては、良くも悪くもファーストインプレッシ
ョンに影響される部分が大きく、リスクがない分、多少の難点には目も潰れる
が、思い入れがない分、表面的な評価になり易いことを予め断っておきたい。


 今回紹介するボコスカウォーズはファミコンでは1985年に登場したゲームで
シミュレーションRPGの先駆け的な作品である。
主人公は、スレン王となり、敵対するオレゴス王によって木に変えられた部下
達を元に戻し、戦力を増強しつつオレゴスの王の城に攻め込み、オレゴス王を
倒すことが目的となっている。
ちなみに、どうやって木に変えられた部下を戻すのかというと、単にスレン王
が木に触れるだけだ。
その時に、兵卒や騎士などの元の姿に戻る者もいるが、画面に登場する全ての
木が部下達の変わり果てた姿というわけではないらしく、中には「最初から本
当の木」だった為に、スレン王が触れても何事もおこらない場合も多い。

 この時、スレン王であるプレイヤーはほんの僅かだが、待ち合わせ場所で友
人だと思ってかけてみたら実は相手は全くの別人だった、時に感じる気まずさ
と悔しさの微妙にブレンドされたあの感情をもれなく味わうことができる。

 しかし、恐らくはシステムに組み込む為に「木に変えられた」という設定に
したのだとは思うが、征服した敵の家来達を残らず木に変える、なんともすご
い設定である。
同じ頃出たメガヒットゲームのスーパーマリオブラザーズでも、キノコ王国の
人々はレンガに変えられてしまった!などと、かなり衝撃的なことが説明書に
書いてあったが、その割には、マリオは何の躊躇もなくレンガを破壊しつつ進
んでいくというのはいかがなものだろうか。


 次にこのゲームの最大の特徴だが、こうして徐々に仲間を増やしつつ進軍す
る為、基本的には進めば進むほど仲間が増えていくことになり、場合によって
は、画面中味方だらけ、ということにもなりかねない。
こうなると操作が複雑になりそうだが、操作法はヤバイ程シンプルで、それら
全ての「軍団」を一括して方向キーで操作するのだ。
簡単に言えば、「上」を入力すれば画面内の全ての味方ユニットが同時に上に
動き、「右」を入力すればこれまた全員同時に右に移動する。
ただ、この方法だと、途中障害物などにひっかって、取り残されるユニットが
出てしまいそうだが、素晴らしいことに本当に取り残される。

 スレン王だけを操作するだとか、補足的な特殊操作法もあり、一応、そうい
った仲間も救出できないことはないのだが、実はこのゲームに限っていえば、
そこまでして救出するほどのメリットもなく、ただでさえ神経を使う行軍がさ
らに煩雑になるだけなので、いっそのこと見捨ててしまうのが、江戸っ子の真
髄であるとの意見もある。

 ちなみに戦闘はスレン王、もしくは、味方ユニットが敵と重なった際に発生
する。この戦闘もボコスカウォーズの大きな特徴のひとつだが、現在のシミュ
レーションRPGでは、普通のRPGのようにHP、攻撃力、防御力、素早さ、
等いくつものパラメータに、武器や防具の補正がかかるのは当たり前の話だが
ボコスカに関しては、戦闘力というパラメータしかなく、HPすら存在しない。

 ならば、戦闘力が高い方が必ず勝つのか、ということ決してそんなこともな
く、推測だが、戦闘結果は、戦闘力によって多少補正されるものの基本的には
ランダムではないかと思う。
「戦闘力の差が戦力の決定的な差ではないということを教えて」くれる素敵な
システムだが、正直、ストレスが溜まるのは避けられない。


 それにこのゲームの場合、スレン王以外の味方ユニットには、兵卒と騎士と
いう2つのユニットがあり、さらにこれらのユニットが戦闘で3回勝つことに
よりそれぞれ重兵卒、重騎士とクラスチェンジし数値の上ではより強くなるの
だが、重兵卒、重騎士になったところで、戦闘での最大の要素が運であること
には変わりはない為、せっかく苦労して育てた上位クラスのユニットが敵の兵
卒に一瞬で殺されてしまうこともある。


 そしてこのゲームのクリアを最も難しくさせている最後の要因は、敵のボス
であるオレゴス王を倒すことができるのは、プレイヤーキャラであるスレン王
だけ、という事実である。
これが何を意味するのかといえば、オレゴス王の前までどれだけ味方を多く引
き連れていったとしても、最後に勝負を決するのは、スレン王とオレゴス王の
ランダム要素に大きく左右された一戦のみということであり、要はオレゴス王
の前まで進軍することが出来れば、それ迄の戦果など全く問題にならないとい
うシミュレーションとしては卓袱台返し的なシステムにあるのだ。

 言うまでもなく、おいらもオレゴス王とスレン王の一騎打ちで負け、以後こ
のゲームには触っていない。



AXL 2002

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