レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

ビックリマン・ワールド


Media :PC-Engine HU-CARD
Maker :HUDSON(移植) ウェストン(ワンダーボーイ・モンスタワールド)
種 別:横スクロール型アクションRPG
発売日:1987年


 PC-Engine本体と共にデビューしたソフトの内の1本。
他に発売されたソフトでは「カトちゃんケンちゃん」や「THE 功夫」が印象深
い。
ところで本作の原作に当たるビックリマンだが、おいらは殆ど見たことがない
のでまるでよくわかっていない。
このレビューを書くにあたってプレイキャラの名前を思い出そうとしてみたも
のの、思い出す以前に一度も名前を見た記憶がない為にそれすら分からない。

 一応、原作(?)であるビックリマンチョコレートについて簡単に書いてみ
ると、これはウェハースの中にナッツ入りのチョコレートが挟まれたお菓子で
おまけとしてシールが一枚ついていた。
このビックリマンワールドに登場するキャラクター達は元々、そのシールに描
かれたキャラクター達で、はじめは確たるストーリーが存在したわけではなく
単にキャラクターだけが点として提示されたに過ぎない企画ものだったが、こ
のお菓子が子供達の間で大人気となるにつれ、雑誌。テレビアニメ、ゲームな
どにより、キャラクターという点の間にストーリーという線が引かれていった
・・・というのがビックリマンの正体ではないかと思っている。

 次に、ではどうして、このお菓子の名前が「ビックリマン」だったのか、と
いうことだが、これについては多少の自信を持って理由を説明することができ
る。
元々「ビックリマン」というお菓子は、最初から一連のメディア展開したキャ
ラクターのイラストが描かれていたわけではなかった。
このお菓子自体はその10年以上も前から存在しており、その時に「おまけ」
として付いていたシールに描かれていたのは、キャラクターなどではなく、何
というワンポイントものの「ビックリ的シール」だったのだ。

 「ビックリ的シール」というのは、簡単にいうと、貼り付けるだけで他の人
をビックリさせることができるようなシールのことであり、簡単に説明すると
透明なステッカーの中心にガラスがひび割れたような結構リアルなイラストが
描いてある、これを家の窓に貼っておくと、後でそれ発見したママが思わず、
「んまッ!」と言ってビックリしてしまうような、要は子供向けのイタズラシ
ールだったのだ。

 イタズラ用シールだから「ビックリマン」非常に分かり易いネーミングだと
思うが、この時点では、むしろ前半の「ビックリ」がキモであり、後半の「マ
ン」は語呂をよくするために無理矢理くっつけた程度の意味しか持ち得なかっ
たが、後年キャラクターもののシールが大ヒットするに及んで、このネーミン
グのキモは「ビックリ」からヒーローものの代名詞としてよく使われる「マン」
へと移行していき、「ビックリ」の方は語呂を維持する程度の意味しか持たな
くなった・・・という実に盛者必滅会者定離な事情を持つお菓子なのだ。

 ここまでゲーム本体には全く触れずに50行も書いてしまったことにいささか
の焦も感じていない、と言えば嘘になるが、もう一言だけ付け加えさせて頂く
とおまけ以前に、このビックリマンチョコレートは非常に優れたお菓子であっ
たことを付け加えさせて頂きたい。

 というのは、このウェハース付きチョコレートはおいらが知る限り30円で
販売されていたのだ。
30円というのは、大体にしてガムだとか飴だとかに付けられる値段設定であ
り、30円以下で食べられたチョコレート菓子というのは非常に貴重であった。
この点からも、ビックリマンチョコレートと、名称不明だが同じく30円で棒
が両端に2本ついており、二つに割って食べることもできたソーダ・アイスは
非常に優秀なお菓子だと思っているのだ。


 さて、いい加減ゲームの話をしよう。
このビックリマンワールドというゲームは、アーケードゲームの「ワンダーボ
ーイ・モンスターランド」という作品のアレンジ移植作品である。
元々、オリジナル設定のゲームだったものをキャラクターだけビックリマンに
変更して移植したのが「ビックリマンワールド」である為、ゲーム性やグラフ
ィックなどはほとんどオリジナルと同じものが使われている。
思えば、これより前にファミコンでハドソンから発売された高橋名人の冒険島
もワンダーボーイシリーズのアレンジ移植作品であることを考えると、このビ
ックリマンも「高橋名人の・・・」で良かったような気もするのだが、敢えて
ビックリマンにしたところを見るとハドソンが名人人気に見切りをつけていた
のか、ファミコンの印象の強い高橋名人を事実上の自社ハードとなるPC-Engine
では使いたくなかったのか、もしかしたら複雑な事情があったのかもしれない。

 オリジナルのモンスターランドは、アーケードゲームでありながらアクショ
ンRPGを持ち込み、しかもそれを成功させたという点において非常に偉大な
ゲームだった。
この頃、世はまさにRPGブーム真っ盛りであり、例えばワードナの森などR
PGを業務用としてアレンジしたゲームもいくつか登場していたが、アーケー
ドゲームの宿命ともいえる回転率とのせめぎあいの中で、その殆どが不完全燃
焼に終わってしまった、という背景があった。

 RPGというのは元々が、その場を動かなければ何時間でも何日でもゲーム
は終了しないし、町から出なければモンスターと会う心配もなく必然的にゲー
ムオーバーになり得ない、またはわざと自分より弱い敵ばかりを選んで戦うこ
とも出来る、といった業務用には不向きな特徴をいくつも持っており、殆どの
業務用RPGは、その問題を「制限時間」を設けることによりクリアしようと
した。

 例えば完全な安全地帯である町が存在したとしても、制限時間はノンストッ
プで迫りくる為、いつまでもそこに留まるわけにはいかない、制限時間をオー
バーすれば強制的にゲームオーバーとなり、後はコンティニューで復帰しない
限りまた最初からやり直しになってしまう、というパターンだ。

 その為、例えどんなにうまくゲームを進めても、何回かのコンティニューは
必須になってしまうという点と、逆にいえば無制限にコンティニューしていけ
ば誰でもクリアできてしまう、という点が、ワンコインでどれだけ長く遊べる
かに最大の意義を見出すべし、という情報が既に遺伝子段階で組み込まれてし
まっている多くのアーケードゲーマーに受け入れられなかった理由ではないか
とおいらは勝手に思っている。


 ワンダーボーイの場合、RPG的要素にのみ流されることなく、アクション
ゲームとしても完成された作品であり、単にコンティニューを繰り返し冗長に
プレイしていればクリアできるというものではなく、逆にアクションゲームの
合間に邪魔にならない程度に成長要素が入っている為に、経験値稼ぎなども必
要とせずゲームに集中することができた。


 元々、単体のアーケード作品としても人気のあったゲームだけに、さらに当
時の子供達に大人気だったビックリマンをミックスすることにより、このゲー
ムはPC-Engineを代表する名作ゲームとなっていったのだ。



AXL 2002

HOME