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「バッドランズ」

Media :アーケード、MSX
Maker :KONAMI
種 別:レーザーディスク内蔵型ガン・シューティング
発売日:1984年

 スペースインベーダーの大ヒット以来、アーケードゲームのグラフィックは
それこそ日進月歩の勢いで進化を続けた。
荒いドット絵、単色グラフィックだったものが、カラー8色になり、32色、
64色と色鮮やかになり、グラフィックもよりキメの細かい絵に変わっていっ
た。

 当時のゲーム少年だったおいらは、いつの日か実写やアニメをそのまま動か
せるようなゲームが登場するのではないか、と密かに胸をときめかせつつゲー
センに通っていたのだが、1980年代前半のある日、「その日」は唐突にやって
きた。

 はじめて見たのは、今回紹介する"BAD LANDS"ではなく、タイトーのタイム・
ギャルだったと思うが、トップライト筐体の中で、アニメのような・・・とい
うよりも「アニメそのまんま」の絵が動いていたのだ。

 勿論、当時のCG技術はまだそこまでのレベルに達しているはずもなく、実際
には、予めアニメの入ったレーザーディスクプレイヤーが筐体の中に入ってお
り、画像の出力はもっぱらLDに頼っており、コンピュータがやっていたこと
と言えば、ジョイスティックやボタンなどの入力情報を判断して次の動画の表
示する指令を出すくらいのことだったのだが、「いつの日か」がいきなりやっ
てきた衝撃はかなりのものだった。

 LDゲームとしておいらが記憶しているのは、タイムギャルとこのBAD LANDS
そして、幻魔大戦くらいのものだが、その頃は一時的にLDゲームがちょっと
したブームになっており、他にも何本かリリースされたようである。

 確かに画像表現は申し分なかった。
しかし、LDゲームというものがその後あまり普及せず、何故か90年代に入っ
てから脱衣麻雀ゲームに流用されたり、どういうわけか突如としてパイオニア
がレーザーアクティブというLD応用の家庭用ゲーム機を発売してみたりした
ものの、3DO以上に何が何やら分からないうちにうやむやになってしまったのは
やはりそれなりの理由がある。

 当時のおいらも最初の2、3日は夢中になってこれらのゲームを遊んでいた
が、段々とこの手のゲームに大して懐疑的になっていかざるを得なかった。
何故かといえば、結局のとこと「これは本当にゲームなのか?」という根本的
な疑問の残るジャンルだったのだ。

 例えばタイムギャルを例にとると、このゲームは普段は今のようなムービー
シーンのようなものでアニメが表示されストーリーが自動で進行していくが、
ヒロインがピンチに陥ると突然画面に方向キーの入力指示が示される。
前から岩が転がってきたから、右にスティックを入れろ、という感じで一応
はゲームの内容とリンクしているのだが、その入力が少しでも遅れればミス。
時間内に入力できれば次のシーンへ進むと、ゲーム的な要素はたったのこれ
だけなのだ。

 そのゲーム性たるや、その昔寂れた映画館に行くと黄色いペプシの販売機
と共に必ずあるといわれた「赤挙げて!白下げないで、赤下げない!」で有
名な旗挙げゲームとなんら変わるところがないのだ。

 まるっきり余談だが、日本での販売代理店がサントリーに移ってからは結
構認知されてきたペプシコーラだが、それ迄は何らのマイノリティ・レポー
トとでも形容すべきドマイナーな存在で、おいらが子供の頃などはあれを飲
もうと思ったら寂れた映画館に行くか、寂れた遊園地に行く以外、方法がな
いほどで、なんとなく行った先のレストランや遊園地などでコーラがペプシ
だった日にはそれだけで悲しい気分になってしまったものだが、最近はかな
りお洒落なところにも進出してきおり、先日小洒落た映画館でもコーラはペ
プシのみで、こよなくコカコーラを愛するおいらにとっては非常に不満だっ
たのだが、この話をこれ以上続けてるとどう転んでもBAD LANDSの話にはなら
ないのでこの辺にしておこう。

 つまり、LDゲームの最大の問題点は見た目は派手だがゲームとしては非
常に底の浅いものだった、という点につきるのだ。
これはLD黎明期にアーケードに登場した作品に限らず、約10年の時を経
て登場したレーザー・アクティブにしてもその根本的な問題は一向に解決さ
れることはなかった。

 タイムギャルの場合、確かに当時としては考えられないくらいのクォリテ
ィのアニメ画面でゲームをすることはできたが、それはゲームと呼べるよう
なシロモノではなかったのだ。

 さて、ここからやっとBAD LANDSの話になるが、このBAD LANDSという作品
タイムギャルよりは幾分マシだった記憶がある。
タイムギャルは先ほど書いたようにジョイスティックを使って画面の指示通
り方向指示を出すゲームだったが、BAD LANDSは開拓時代のアメリカ西部を舞
台としており、主人公は早打ちのカウボーイ。
タイムギャルと同じくアニメによりストーリーは勝手に進行していき、彼が
ピンチに陥った瞬間、例えば、いきなり目の現れた男は銃を抜いた瞬間にボ
タンを押せば、先のステージに進み、押すのが遅ければミスとなる。

 早い話が、タイムギャルを簡略化したシステムだったのだが、こういうジ
ャンルの場合、簡略化した方がまだしもゲームをしているような気分になれ
る。
タイムギャルのようになまじ方向キーがあると、例えば前から危険が迫って
いる場合、右に避けるべきとこを左に避けてもミスになってしまう、などの
ゲームの都合による制約が多くなり、やらされているという感じが強くなっ
てしまうのだ。
その点、入力デバイスがショットボタン一つのBAD LANDSは、はじめからプレ
イヤーの出せる指示が物理的に限定されている分、諦めもつく。

 ただし、それでも本当に面白いゲームだったか?というとやはりLDゲー
ムという制約上、単なるタイミング当てゲームでしかなかったことは確かで
後半のステージになるとあからさまに引っ掛け問題のようなステージも多く
なることからストレスが溜まるゲームであったことは確かだ。

 例えば、ある小屋の中から女が出てくる、その女は小屋から出てきてしば
らくすると巨大な怪物へと姿を変えるのだが、これは変身中にショットしな
ければならず、変身前に打っても変身後に打ってもミスになってしまう。
その上、変身時間は非常に短いので予めそのことを知っていなければまずク
リアできないといった具合だった。


 そのようなわけで、ゲーム業界ではあまり受け入れられることのなかった
LDゲームだが、これは決してLDとゲームの相性が悪かったわけではなく
本来、LDゲームにできないことまでやらせようとしてしまった結果なので
はないかとおいらは思う。

 例えば、90年代に登場したLDを利用した脱衣麻雀ゲームというのは、単
に映像をタレ流すだけ、というLDの特性を誠にうまく利用したゲームだっ
たといえるだろう。
このようにLDにやらせることとコンピュータがやるべきことの住み分けが
出来ていればもっと他の可能性があったかもしれない。



AXL 2002

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