レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「バルーンファイト」

Media :FAMILY COMPUTER
Maker :任天堂
種 別:固定画面アクションゲーム
発売日:1985年1月


 このゲームが発売された1985年1月、おいらは小学6年生だった。
前年の暮れにゼビウスが発売されたこともあり、ファミコンユーザーはおいら
のクラスでも男子を中心に急速に拡大しており、それまで時と場合によって、
LSIゲームのことを指したり、ゲームウォッチのことを指したり、はたまたドラ
キュラゲームはお化け屋敷ゲームなどのボードゲームを指していた「ゲーム」
という代名詞も、この頃から=ファミコン、もしくはアーケードゲームを指す
言葉に変わっていった。


 おいらがファミコンを購入したのは、1983年の10月のことで、おもちゃ屋の
にーちゃんの強い薦めによるものだったが、その頃はまだ対応ソフトも少なく
内心、「やっぱりぴゅう太の方が良かったなー」などと言いながら一生懸命少
ないゲームで遊んでいた。
この頃のテレビゲーム機というものは、こんな不平を言っている間に、ゲーム
機そのものが凋落して、結局何が何だか分からないままに終焉を告げてしまう
ものが殆どだったが、ファミコンの場合は運よくそのような苦難の黎明期を経
て、84年暮れのゼビウス発売あたりから待ちに待った実りの時期を迎えること
となる。


 その頃ファミコンは大変な品薄でなかなか手に入らない、という級友達の嘆
きを他所に「ふっふっふ、だからキミ達は甘いんだよ、今ごろになって買おう
なんて、おいらなんか5年生に買っちゃったもんね!見たまえこの「ゴム四角
ボタン」を!これぞ伝統のゲームウォッチの手触りであるぞよ、ダサいんだよ
丸プラスチックボタンなんて、ケッ!」などとと言いつつ悦に入っていたもの
だが、何によらずブームというものは、その性質上多数の軽薄短小なるお調子
者によって支えられているという側面を持っている。

 どこの小学校にも一人や二人はいたかもしれないが、おいらのクラスにも大
体1時間先くらいまでのことしか頭にはなく、ブームと見ればすぐにそれに乗
り、ブームが去ったと見るや「ワタクシは一度もそのようなモノに関わったコ
トはござりませぬ」などと恥ずかしげもなくいえるタイプのオトコが存在して
いた。

 ちなみにこ奴は、バレンタインの前にクラス中の女子にホワイトデーに倍額
のお返しをするからと頼みまくり、それでやっとお情けで貰ったチョコをクラ
ス中のオトコに自慢して歩くという最悪の種類の人間であり、万一個人に対し
て破防法を適用する機会があれば是非とも彼に!とおいらは今でも、心の底か
ら願っている。

 さらに余談だが、後年の彼はJリーグが開幕されるや「オーレーオレオレオレー」
を口ずさみ続け、カラオケに行けばMC-ATのボンバヘッドを恥ずかしげもなく
歌いまくり、現在は付き合いがないので分からないが、恐らく去年あたりは「
一生一緒にいてくれやー」などを重点的に歌いまくったであろう、と友人の間
で噂される、そんな奴である。


 とにかくそいつがあんまり偉そうにファミコン、ファミコン言うのが当時の
おいらには面白くなく、他の友人と相談の上、彼にこう話し掛けた。

「おい、知ってるか、今度任天堂から新しいファミコンソフトが2本出るんだ
ぜ!」
「あっ?そーなのー? じゃ、オレも買おう」
「そのファミコンソフトってのはな、バルーンファイトとアイスクライマーっ
ていうゲームですげー面白いんだぞ!」
「へー、そーなんだー」
「でもな、ちょっと問題があるんだ」
「え?なに?」
「そのソフトの値段なんだけど、両方とも7万4千8百円なんだ」
「えっ!? 7ま・・・!?」

 実に他愛の無い嘘だが、相手は人間としての底が薄すぎた為、あっさり引っ
かかった。
実際に店頭に並んでからでは嘘がバレてしまう為、発売される迄の間だけだっ
たが、彼はその嘘を信じ続け「どうしよう・・・買えないよ、7万円・・・オ
レ・・どうしよう・・昨日、お母さんに言ったら怒られちゃったよ・・・オレ
・・・・」などとナゼか涙声になってしまい、今となっては実にすがすがしい
思い出としておいらの心に残っている。


 このエピソードの中でも触れたが、このバルーンファイトというゲームは、
ファミコンブームが起こり始めた頃に任天堂から発売されたゲームであり、同
時発売のソフトとして「アイスクライマー」という兄弟作を持つソフトである。
この2本はどちらも非常に出来の良いゲームであり、現在でもその評価は高い
が、おいらくらいの世代に限って言えばファンが「バルーンファイト派」と「
アイスクライマー派」の二派に別れているという不思議な特徴を持つ兄弟ゲー
ムでもある。

 何故ならば、このゲームが発売された当時小学生くらいだったおいら達の世
代ではなかなか、2本一度に購入!という芸当は至難の業であり、またそれ以
前に発売されたゲームと違い、良作、話題作がどんどんリリースされた時期と
重なっているため、まずどちらかを購入して次の機会にもう1本を・・・と思
っていても、その頃になるとどうしても他のゲームに浮気をしてしまいたくな
る、という状況があったからだ。

 ちなみにおいらは「バルーンファイト派」のヒトであり、勿論理由はバルー
ンファイトだけを購入したからだ、だ。
簡単にゲームの内容を紹介すると、プレイヤーは風船を二つ持ったプレイキャ
ラを操り、同じように風船で空を飛ぶ敵キャラクターをやっつける。
この時、相手より高い位置から相手の風船に触れることで風船を割り、風船が
なくなって落下した相手をさらに蹴ることで相手を倒すことができる。
風船を割っただけで放っておくと敵キャラクターはポンプで風船を膨らまし再
び空に上がってくるので注意が必要である。

 このシステムは、マリオブラザーズに似たところがあって、敵を倒すのに2
つのプロセスを踏む必要がある点がゲームの戦略性を高めており、また、アイ
スクライマーにもいえることだが2人同時プレイも可能になっている。

 また、1人プレイ、2人同時プレイの他に「バルーントリップ」というモー
ドがあり、このモードの左スクロールするステージを障害物を除けながら進み
点数を競うという別のシステムになっている点も当時の任天堂のゲームとして
は非常に珍しい。


 ちなみに2人同時プレイにつきものの「対戦プレイ」だが、このゲームでは
プレイヤー同士でも敵キャラクターと同じように直接相手の風船を割ることが
出来る。
その為、早い話が相手の上空を取った方が有利になり、おのずと両者画面の一
番上で睨み合う格好となる。
勿論、そこに普通の敵キャラもちょっかいを出してくるし、時折雲から雷が発
生して邪魔をするので、非常にストイックでバーリトゥード的真剣勝負が可能
になっている。


 ところで、これは全くの余談だが、最近X-BOXの鉄騎というゲームのCMを
見た。ゲームソフトの定価に「1万9千8百円」とあるものを見て、反射的に
おいらは今回紹介したエピソードを思い出してしまい、しばらくは「嘘に違い
ない!」と信じていた。



AXL 2002

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