レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「ウィングマン」

Media:PC-88、FM-7、X1、MSX等(FD及びテープ版)
Maker:エニックス
種 別:テキスト入力型アドベンチャーゲーム


 桂正和の同名コミックスを原作としたパソコン用アドベンチャーゲーム。
おいらが小学校の頃はちょうどファミコンの全盛期で、その時期にわざわざパ
ソコンを買ったのは、当時まだファミコンには存在しなかった「アドベンチャ
ーゲーム」がやりたかったからだ。

 アドベンチャーゲームというゲームも最近はあまり耳にしなくなってしまっ
たが、主にテキスト(文章)により話が進行するタイプのゲームのことで、現
在だと「かまいたちの夜」などのサウンドノベルタイプのゲームがアドベンチ
ャーゲームに近い。

 さて、おいらがプレイしたのはMSXのテープ版ウィングマンだが、一番驚い
たのは当時のMSXとしてはかなりクォリティの高いグラフィックだったという
ことである。
MSXは当時の8BITパソコンの中では目に見えてグラフィッククォリティが低く
他機種から移植されたゲームでも、MSX版となると非常に絵が汚く、ほとんど
何が描いてあるのかを判別するのがやっと・・という、一言でいうと「たわ言」
のような画像表現力しか備えていなかった。
MSX版のウィングマンも勿論、他機種と同じ・・というわけにはいかなかった
が、それでも他のMSXゲームに比べればかなりクォリティの高いグラフィック
だったことは間違いない。

 内容は、主人公のウィングマンこと広野健太が、原作でおなじみのあおいさ
んや美紅ちゃんと一緒に学園内を探険する・・・というものだが、たまに敵の
キータクラーが出現するとアクションゲームによる、戦闘シーンに移行する。
この戦闘シーンも慣れればそれほど難しくはなく、とかくやたらと難易度の高
いゲームが多かった当時のゲームとしては、アドベンチャーゲームの内容と共
にかなりバランス取れた作品だったような気がする。

 この当時のアドベンチャーゲームは現在のようにコマンド選択方式が採用さ
れておらず、全てキーボードからテキストを打ちこんで話を進めていく必要が
あったが、例えば前に進みたい時に「まえ いく」だと受付けないくせに、「
まえ すすむ」だとゲームが進行・・・という、悪徳業者の契約書のようなト
ラップがそこかしこにしかけてあった為、ストーリーを楽しむ以前にユーザー
は「言葉探し」に苦労していた。

 ウィングマンはプログラム的にもかなりその辺りを柔軟に対応しており、逆
にストーリーに直接関係のないお遊び的なフィーチャーも数多く取り入れられ
てられていた為、「言葉探し」は苦労ではなく、それだけでも充分に楽しい「
遊び」になっていた。
ちなみに、この「ストーリーに直接関係のないお遊び的なフィーチャー」とは
どういうものであるか?そこのところを、きっちりはっきり説明したまえ君よ。
というイジワルなツッコミをいれたいという読者の為に具体例を示しておくと
例えば女の子に向かって「ふく とる」とか、そういうことである。
なんだね、その冷ややかな視線は?
キミにだって覚えがあるだろう?えっ?

・・・などという一人芝居はともかくとして話を先に進めよう。
勿論、アダルトゲームではないので、取れはしないが、その行動に対してちゃ
んとリアクションが用意されているのが当時としては斬新でとても楽しかった
のである。

 ところで、このゲームは一時期ファミコンにも移植の噂がたった事がある。
結局、発売はされなかったが、ファミコン用となると文字入力が不可能なので
当然、コマンド入力方式になってしまったはずである。
しかし、コマンド式だとこのゲームは一気に無味乾燥なゲームになってしまう
ような気がする、テキスト入力タイプのゲームは、クリエイター側が意図的に
難易度をあげようとすれば理不尽なやり方でいくらでも難易度を上げられる、
という欠点があるが、同時に、自分自身がそこにいるかのような臨場感を味わ
える、という点ではコマンド式よりもずっと上だと思っている。
特にこのゲームはテキスト入力型アドベンチャーの醍醐味が味わえるという意
味でも屈指の名作だと思う。




AXL 2001

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