レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「ヴォルガードII」

Media :FAMILY COMPUTER
Maker :db-SOFT
種 別:横スクロールシューティングゲーム
発売日:1985年


 クソゲーに非ず。
クソゲー論(そんなものあるのか?)に関して以前から納得いかないことがあ
る。それはあるゲームが発売された時、リアルタイムでやったプレイヤーと、
そのゲームが発売されてから一定以上の期間を経て遊んだプレイヤーでは、そ
のゲームに対する評価に大きな隔たりがある、ということを無視してあれもこ
れもクソゲーのレッテルを貼っている、ということである。

 例えば、今、ファミコンのゲームをやったとして本当に面白いと思えるもの
は、確かに少ない。
しかし、今やってみてつまらなかったから、これはクソゲーである、という意
見は全く的はずれなものなのだ。
問題はそのゲームが発売された当時、それをプレイした自分がどう思ったか、
ということである。
何故、発売時期にプレイしなければいけないか、というのは、コンピュータゲ
ームというのはその性質上、ハードやソフトウェア技術の影響をモロに受ける
メディアだからである。
今のプレイヤーの嗜好に合わないからクソゲーだ、という理屈は、零戦が現代
の戦闘機に比べて旧式化しているから、零戦は出来損ないだ、と断定するのに
等しいのだ。


 というわけで、「名作」とまではいかないまでもなかなか面白かったヴォル
ガードIIである。
まず、簡単に内容を説明すると、このゲームは横スクロールのシューティング
ゲームであり、自機は戦闘機、水平に発射されるショットと放物線を描いて投
下されるミサイルを同時に発射することができる。
敵は主に空中兵器と地上物に分かれており、ステージの終わりではズイガム・
ボルドという要塞との一騎打ちが待っている。
また、ステージを進めると、「2号機」が登場し、2号機と接触することによ
り、ロボットに変形することが可能になる。

 さらにこのゲームはいわゆる残機制ではなく、ダメージ制が採用されており
母艦の補給を受けることによりダメージを回復することができる。

 ここまでは比較的オーソドックスな作りなのだが、一点だけ非常に変わって
いる点がある、それは、このゲームには「ダメージ」以外に「パワー」という
パラメータがあることである。
この「パワー」はショットを一発発射するごとに微妙に減少し、母艦の補給を
受けるか、特定のアイテムを取る、または「敵を破壊すること」で回復してい
く。
このパワーを一定以上溜めた状態で母艦の補給を受けることで、レーザーやバ
リアといった特殊武器が装備される、というシステムなのだが、この点だけは
明らかに失敗であると思う。


 つまるところ、「撃てば撃つほどパワーは減る」わけである、一応敵に当た
れば僅かに回復する為、弾を撃っても「百発百中であればパワーは減らない」
のだが、そうなると、「撃ちまくって弾幕を張る」わけにはいかない、ある程
度は敵を狙って撃たなければいけなくなる。

 実はこのゲーム、撃ちまくって弾幕を張るようなプレイの仕方をするとかな
り気持ちの良いゲームなのだ。
ところがシステム上、そういったプレイが難しくなっている。
スターフォースのように「撃ちまくる快感」が得られないのは、シューティン
グゲームとしてちょっと辛いところである。


 このゲームの最も大きな特徴は「主人公がロボットである」という点である。
ヴォルガードII以前のファミコンゲームで、ロボットを主人公としたシューティ
ングゲームは「フォーメーションZ」しかなかったのだが、正直、このゲームは
難易度が高い上に単調であまり面白いものではなかった。
その為、おいらはこのゲームをかなり期待して購入し、遊びまくった。
当時の少年達にとっては「ロボットが主人公」というのは非常に重要なことだっ
たのだ。

 ところで、このゲーム、注意深くプレイしてみるとこのゲームの世界観やシス
テムの一部などはかなり「ゼビウス」の影響を受けている、ということが分かる。
それは、要塞ズイガム・ボルドの存在、敵キャラのネーミングセンス、無機的と
有機的なオブジェクトが微妙に交わっている雰囲気、さらにはレーダーを破壊す
ることで母艦を呼べたり、逆に破壊しなければ敵の攻撃が激しくなる、といった
演出などはどう考えてもゼビウスからの影響だろう。
対空ショットと対地ショットを分けたり、隠れキャラを配置することで表面的に
ゼビウスを真似た作品は多いが、ヴォルガードIIに関しては、ゲームの世界観ま
でもゼビウスに影響されている、意外とここまでやったシューティングゲームは
少ないのだ。


 さて、最後はこのゲームのタイトルである、「ヴォルガードII」という割に、
ファミコンでは1は発売されていない。
当時は、いきなり2から作り始めたのか、それともテスト段階で中止になったの
かと思っていたが、実は、元祖「ヴォルガード」というゲームもちゃんと存在し
ている。

 発売されたのは1年前の1984年で、プラットフォームは、MSX。
そしてこちらは何と3機合体でロボットに変更する。
なんだそれでは、2の方がしょぼいではないか、という気もしないではないのだ
が、実は、例の撃てば撃つほど減るショットパワーというシステムは1から存在
していたらしく、さらに、3機合体した上でフルパワーにしなければロボットに
変形できなかったらしい。
それではさすがにロボットに変形するだけでも一苦労なので、2にするに当たっ
て簡略化したのだろう。

 残念ながらMSX版はプレイしたことがないのだが、全体的な雰囲気や拝啓やキャ
ラの造型などはやはり似ているようである。



AXL 2001

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