レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「北海道連鎖殺人事件〜オホーツクに消ゆ」

Media:PC-88,FM-7,MSX、ファミコン等
Maker:LOGIN SOFT(アスキー)


 1980年代前半、家庭用ゲームとパソコンゲームの違いは、その内容もさ
ることながら、パッケージに拠るところが大きかった、とおいらは思う。
まず、パソコンゲームの箱はとにかくデカかった。
おいらが初めて購入したパソコンゲームはMSX用のハイドライドだったが、一
体中に何が入っているのかと思うほどのデカさであった。

 家に帰ってきて早速あけてみると、それほどデカいにも関わらず、中から出
てきたファミコンカセットとさほど変らないMSX用ROMカセットとマニュアルに
登録葉書だけだったが、当時のファミコン用カセットの箱がカセットがほぼ同
じきさの紙製であったのに比べて、パソコンソフトの箱はどういうわけか圧倒
的に大きかった。

 次に、パソコンソフトは大抵の場合、やたら渋めでやけに書きこまれたイラ
ストがパッケージにイメージカットとして印刷されていた。
当時のパソコンのCGは稚拙だったが、その分パッケージのイラストには今の
10倍以上気合が入っていた。
あまりに気合が入りすぎて、パッケージイラストとゲーム画面が似てもにつか
ず、なんとなくパッケージの女優で選んで借りたアダルトビデオを再生してみ
たら、まるで違う女性があらわれたときのようなやるせない寂しさを覚えるこ
ともしばしばであった。

 このイラストのタッチの差は、ファミコンなどの家庭用ゲームのユーザー層
に比べて、パソコンゲームのユーザーの年齢層が高かったことを反映して、基
本的すべて「大人向け」に描かれていた為ではないかとおいらは勝手に思いこ
んでいるのだが、そんなパソコンゲームの中でも、この「オホーツクに消ゆ」
のパッケージイラストは凄かった。

 とにかく、「何事か?」と思うほどの渋さというか、描き込まれぶりである。
パッケージはもう10数年前に捨ててしまったが、おいらはいまだのこのゲー
ムのパッケージだけは鮮明に覚えている。
「この世の中でオレよりシリアスな男はいない」と言わんばかりのシリアスに
して鬼気迫る表情の男性が荒々しいタッチで描かれており、バックには「社会
派推理アドベンチャーゲーム・北海道連鎖殺人事件」というコピーと、タイト
ルの「オホーツクに消ゆ」という文字が、これまたシリアスに描かれていたの
だ。


 おいらが中学生時代、パソコンゲームに憧れた要因のひとつに、「大人の世
界を覗いてみたい。」という願望があったような気がする。
当時のお気にいりは刑事もののアドベンチャーゲームだったが、大人向けに作
られたゲームの世界で、事件を解決する刑事という役柄を借りて、大人の世界
がちょっぴり覗けたことが何よりも楽しかった。
そういう意味で、この手のアドベンチャーゲームはおいらにとっての「大人シ
ミュレーター」だったのだ。

 そんなおいらがショップで見かけて一目惚れしてしまったのが、この「オホ
ーツクに消ゆ」だった。
パッケージイラストは気の弱い子供が見たら泣き出しかねないほどだったし、
何よりも自ら「社会派推理アドベンチャー」を名乗っているのである。
かつてここまで、気位の高いゲームはおいらの知る限り1本も存在しなかった。
「連鎖殺人事件」という言葉も当時中1だったおいらに「言葉の意味は良くわ
からんが、とにかく凄い自信だ!」という印象を与えた。


 さて、簡単に内容を説明しておくと、このゲームはドラゴンクエストの堀井
雄ニが作ったアドベンチャーゲームである。
ドラゴンクエストがブレイクするまで、堀井雄ニといえば、刑事アドベンチャ
ーものの第一人者だった。
このオホーツクに「ポートピア連続殺人事件」「軽井沢誘拐案内」をくわえた
ものが堀井雄ニ、刑事アドベンチャーゲームの三部作といわれている・・かど
うかは自信がないが、少なくともおいらはそう呼んでいるのだ。

 システムはコマンド選択方式で、その都度必要と思われる行動を番号で選択
し入力する、それ以前のゲームはすべてキーボードから実際に行動をテキスト
で打ちこむ必要があった為、このシステムは画期的であった。
その後に発売されたほぼ全てのアドベンチャーゲームに採用されることとなる
システムで、逆に言えばテキスト入力というスタイルを駆逐したシステムでも
ある。
実際、「ポートピア連続殺人事件」がファミコンに移植されると決定した当初
は真面目にファミリーベーシックを利用しての、テキスト入力というプランも
考えられていたらしい。

 このシステムのお陰でユーザーは、言葉探しの煩わしさから解放されたが、
おいらは提示された選択肢の中でしか行動できなくなってしまったような閉塞
感を覚えた記憶がある。

 ストーリーは東京で謎の死体が発見されるのを皮切りに、北海道で連続(連
鎖)殺人事件の幕が切って落とされる。
プレイヤーは、腕利きの刑事となって部下と共に事件の真相に迫る。

 詳しい内容に触れるのもどうかと思うので、ストーリーといってもお決まり
なものになってしまうが、おいら的には、序盤で聞きこみの為に、高田馬場の
キャバレーに行くシーンで、ヨコシマな期待をちょっぴり胸をときめかせ、な
ぜかやたら階下の家族の動向を気にしつつ、ドキドキしながら遊んだ覚えがあ
るが、結論からいうと期待したようなことにはならず、ちょっぴり残念であっ
た。

 堀井雄ニ刑事アドベンチャーは、オホーツクなら北海道、ポートピアなら神
戸、軽井沢誘拐案内なら文字通り軽井沢が舞台となっており、現地取材まで行
ったらしく、全作品にそこはかとない旅情のようなものが漂っていた。

 このゲームで遊んでいた当時は、まだ北海道に行ったことはなかったが、高
校の修学旅行で初めて札幌の地を訪れたとき、あまりの感動に夜中に友人とホ
テルを抜け出してすすきの見物に行ってしまったほどである。

 殆ど小遣いも無く、しかも学生服を着た高校生が夜のすすきのに行って何が
できるわけでもなかったが、溢れるネオンサインに興奮しつつ、心のどこかで
「コロポックリ」を探していた。



AXL 2001

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