レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「いっき」

Maker :SUN SOFT
Media :アーケード、FAMILY COMPUTER
発売日:1985年(ファミコン版)
種 別:見下ろし型アクションゲーム(非スクロール・画面切り替え式)


 小学生の頃のおいらにとっては、サンソフトは危険なメーカーだった。
サンソフトのファミコン参入第一弾はアーケードゲーム、「アラビアン」の移
植「スーパーアラビアン」である。
まだまだファミコンのソフト数自体が少なかった頃、おいらはこのゲームを半
ば「仕方なく」購入してしまい、後で後悔した、という悲しい思い出がある。
第二弾は「ルート16ターボ」このゲームについては持っていたような気もす
るし、単に友人に借りただけのような気もするが、とにかくこちらも「スーパ
ーアラビアン」に負けず劣らずショッキングなゲームだった。
何をどうすれば良いのかすら分からないのである。

 そんなわけで、友人の間では「サンソフトにだけは気を許すな!」という言
葉がそこかしこで囁かれていたが、そんなある日、おいらは学校で友人から衝
撃的情報を聞かされることとなる。

「最近新しくゲーセンに入ったゲームで、「百姓一揆のゲーム」があるぞ!」

百姓一揆のゲーム・・・・。
これがもちろん「いっき」のことなのだが、一体どこの誰が、「百姓一揆をゲ
ーム化しよう」などと考えたのだろう。
しかし、珍しいもの好きのおいらはその日早速、友人とゲーセンに行き、「い
っき」のゲーム画面と、タイトルに燦然と輝く"SUN SOFT"のロゴを目にするこ
ととなる。

「やるな、サンソフト・・・。」

 それがおいらが「いっき」を見た時に、最初に感じた印象である。
ゲーム「いっき」の内容は、江戸時代、圧制に耐えかねた農民、権べと田吾が
鎌を片手に一揆を起こす、ステージ制で1ステージに落ちている小判を全て拾
い集めればクリア、最後のステージでは城内に突入し、殿様を捕まえれば1周
クリアとなる。
名作ではないし、ゲームバランス的にも難がある作品であることは否めないが、
それにしても、サンソフトにしては「ちゃんとしたゲーム」だった。
何よりも、着想にオリジナリティというものがある。
それも、「アラビアン」や「ルート16ターボ」ほどには常識を逸脱していな
い範囲で、だ。
このゲームの登場により、おいらはサンソフトを見直し、また、サンソフトも
その後はクソゲーメーカーの汚名を返上し、良質なゲームを作っていくことと
なるのだが、それにしても、不思議なゲームである。


 簡単に説明すると、プレイキャラは権べ、または田吾という二人の農民で、
二人同時プレイも可能で、勿論一人だけでプレイすることも出来る。
プレイヤーはマップのどこかに落ちている小判を見つけて拾い集めるのが目的
だが、当然、敵キャラが邪魔してくる。
これは主に忍者で、たまに「腰元」という怪物のような顔をした女がふらふら
やってきて、プレイヤーキャラにしがみついて、動きを封じたりすることもあ
る。
先ほど書いたようにラストステージだけは、そのステージのどこかにいる殿様
を「捕まえれば」がクリアだ。

 まず何よりも、農民が忍者を相手に互角に渡り合うというのがすさまじ過ぎ
る。しかも、二人の主な武器である鎌は常に一番近くにいる敵に向けて発射さ
れる、通常「ホーミング鎌」である。
そして、圧制に耐えかねて一揆を起こしているにも関わらず、ステージクリア
の条件が「落ちている小判を拾い集めること」というのもあまりにも悲し過ぎ
るではないか、江戸時代の百姓一揆や、特に島原の乱を始めとする大規模な民
衆蜂起は後年、歴史家や、共産主義社及び自由主義者によって、封建主義とい
うイデオロギーに対する反抗、つまり、自由闘争として脚色されることが多い
が、サンソフトの歴史解釈はそんな生ぬるいものではない。
「金が全て」である。

 封建主義打倒とか、人間平等などということには一切触れていない、とにか
く、「金こそ全て」であり、このゲームのボーナスステージに至っては雲の上
にいる仙人が投げる「おむすび」をひたすら拾い続けるだけ、なのだ。
虐げられる農民を根本からバカにしていると、とれなくもない展開だが、「理
想で腹はいっぱいにならない。」という解釈は非常にリアルであり、とかく、
理想主義で脚色されがちな民衆蜂起を題材にとった作品としては、おいらは、
非常に好感を持っている・・・・などと、やたら難しい話をこねくりまわすほ
どのゲームではないのだが・・・。

 ちなみに、難易度は決して低くはないが、少なくとも、何度でもプレイでき
るファミコン版でやり込めば普通の人でも一周目のクリアは不可能ではない。
プレイアビリティも決して良いとまではいえないものの、他に類を見ない百姓
一揆を題材としたこのゲーム、歴史の勉強のためにも未プレイの方にはお勧め
しちゃうのである。



AXL 2001

HOME