レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「エキサイティングアワー」

Media:アーケード、X68000
Maker:テクノスジャパン


 おいら的には「第三のプロレスゲーム」と呼んでいる、往年のアーケードプ
ロレスゲーム。
プロレス大好き少年だったおいらは当然、ゲームセンターで新しいプロレスゲ
ームに出会うたびにプレイしていたが、実際アーケードのプロレスゲームとい
うのはそう多くはなかった。
多彩な技とそれに伴う複雑な動きを表現しなければならないプロレスというジ
ャンルは黎明期のアーケードゲームにとっては、扱いづらいジャンルだったの
かも知れない。

 「第三の」というのは、このゲームはおいらがゲームセンターで出会った3
本目のプロレスゲームだったから、である。
最初に出会ったプロレスゲームは、「ビッグ・プロレスリング」。
後に「タッグチームプロレスリング」としてナムコによりリメイクされ、ファ
ミコンで発売されることになるゲームである。
「第二のプロレスゲーム」は、セガの「アッポ」。
当時としてはこのゲームの面白さは驚異的なものがあった。
版権を取っていなかった為、実名でこそなかったが、実名選手にそっくりな選
手が「ナンダコノヤロウ!」「イッチバーン!」と喋りそれぞれの必殺技を繰
り出すというコンセプトに胸をときめかせながら遊んだ覚えがある。

 そして「第三のプロレスゲーム」がこのエキサイティングアワーである。
メーカーは後に「熱血硬派くにおくん」シリーズで名を馳せるテクノスジャパ
ンである。
おいらは、個人的に、テクノスの格闘系ゲームのレベルはかなり高いと思って
いる。特にプロレスゲームに関しては他の追随を許さないほどのものを持って
いる。テクノスは後にやはりアーケードゲームで、アメリカのプロレス団体、
WWFから版権を取った「WWF SUPER STARS」や「WWF WRESTLE FEST」をリリー
スするが、このゲームはおいらが知る限り、アーケードプロレスゲームの最高
峰であり、同時期にスーパーファミコン等でやはりWWFの版権を取ってリリ
ースされていた米国アクレイム社のWWF系プロレスゲームと比較すると、そ
の差は歴然で、「ゲームの楽しさとはこういうものであり、プロレスの醍醐味
はこういうもんなんだよ!」とWWFの本家である米国のゲーム企業にテクノ
ス・ジャパンのレベルの高さを見せつけた作品だった。

 そのテクノスのプロレスゲーム第一作となるのが本作、エキサイティングア
ワーである。
勿論、グラフィック的にもビッグプロレスリングやアッポに比べるとかなり洗
練されており、キャラクターの絵柄、動きなどは後に同社がリリースするダブ
ルドラゴン等を彷彿とさせるものがあった。

 このゲームの面白い点は、ゲーム開始前にプロレス実況のアナウンサーのデ
モ画面が入るところである。
実はこのゲームがリリースされた当時「過激な実況」の古舘伊知朗が大ブーム
を起こした頃と重なり、友達とプロレスごっこをすることを生きがいとしてい
た当時のおいらなども、自分の出番がない時は頼まれもしないのでやたらと「
おーーっと!」ばかりを多用する謎の実況モドキをしていた。

 勿論、デモ画面のアナウンサーは実際に喋るわけではなかったが、何故か昔
から「デモ画面大好き」という謎の嗜好を持っていたおいらの胸をときめかせ
るには充分であった。

 そして時代を反映しているといえば、このゲームの1面の敵キャラは、やは
り、当時一大ブームを巻き起こしていた「ザ・ロードウォリアーズ」をかなり
意識したキャラクターだったことだ。

 ウォリアーズは、元々AWAという、アメリカでも大して大きくない団体のタッ
グチャンピオンだったが、「世界のプロレス」というプロレス番組で紹介され
たことにより人気に火が付き、特にインタビュー時の「オレ達はシカゴの貧民
街で生まれ育ち、飢えてネズミまで食っていたんだ!」というフレーズは当時
かなり(?)有名になった。

 ホーク・ウォリアー、アニマル・ウォリアーの二人から成る、このタッグチ
ームはアメリカの暴走族を意識した過激なコスチュームと顔面へのペイントと
いうギミックのワイルドさ、そして、「相手の技を受ける」というプロレス特
有の「お約束を」完全に無視し、一方的に相手をボコボコにしてさっさと試合
を終わらせてしまうファイトスタイルは本当に「ネズミを食って生きてきた」
っぽい印象を与えており、当時のおいらも真っ直ぐにそれを信じて疑わなかっ
たが、実はアニマルの方はちゃんとした中流家庭に生まれ、大学にまで通って
いたそうだが、暴走族をやっていた悪友のホークに誘われてあのようなことに
なったらしい。
ああ見えて、結構堅実な人生を歩んでいたんじゃないか、アニマル。

 ・・・と、何故かプロレスゲームの話になると、いつにも増して筆が進み、
挙げ句に完全に話が脱線してしまうが、テクノスジャパンにとって、このゲー
ムは記念すべきプロレスゲーム第一作というだけでなく、後にリリースするこ
ととなく数多くの格闘系ゲームの元祖ともいえる作品なのである。

 ただし、残念なことにこのゲーム、基本的には移植はされなかった。
実は10年以上経った後で、X68000というパソコン用に移植されていたが、や
はり時期を逸してしまった感が強い。後年テクノスがリリースするWWFシリ
ーズにしても、またセガのアッポにしても(こちらもPC88SR等のパソコンに移
植されたが、かなり無理があった)何故か名作プロレスゲームというのは移植
されずそのまま消えていってしまう運命にあるのは寂しい限りである。



AXL 2001

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