レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「英雄伝説III〜白き魔女〜」

Maker :日本ファルコム
Media :PC-98,サターン等
種 別:RPG


 おいら的には5本の指に入る傑作RPGの内の1本がこの英雄伝説3である。
ファルコムの英雄伝説シリーズはそれまでのマニア向けゲームからライトユー
ザー向けというか、もっと言ってしまえば「ドラクエ型RPG」へと路線変更した
シリーズである。
現在5まで発売されているが、おいら的にいうとこのシリーズは奇数番号の作
品は傑作で偶数番号の方は・・・まあ、4は途中までしかやっていないし、5
も未プレイなので断言できないが、とにかくその5作品中でも3の出来は出色
である。
では、このゲームの一体何がそこまで面白いのか。


 少し話は変わるが、おいらは物心がついた時から既にひねくれ者だった。
子供の頃、タイムボカンシリーズを見ながら応援するのは、いつも3悪トリオ
の方だったし、好きなプロレスでも無敵の猪木が負ける瞬間を心のどこかでい
つも期待しながら見ていた。
ウルトラマンシリーズでは、ストーリーや怪獣の強さよりも、他のウルトラ兄
弟や両親がゲスト出演するかどうかが重要で、風邪が流行れば学級閉鎖をいつ
も夢見ていた。

 つまり、良く言えばマンネリ嫌い、悪く言えば騒動を好む子供だったのだ。
そんなおいらにとって、ドラクエ以降に雨後のタケノコの如く沸いて出た、ド
ラクエ型RPGの「魔王を倒して世界を救え!」という決まり切ったコンセプトに
は正直辟易していた。

 水戸黄門より鬼平犯科帳の方が面白いように、ストーリーさえしっかりして
いれば、何でもない日常であっても立派にゲームとして楽しめるはずだし、む
しろその方がリアリティがあって楽しいはずだ、とおいらは信じていた。
「大魔王」「世界の危機」といったコンセプトそのものがコケ脅しであり、ス
トーリーに自信がないから設定に頼るのだ、とも思っていた。
 特に嫌いなのが、ストーリーが進めば進むほど悲惨な展開を迎えるRPGである。
ストーリー進行と共に主人公側の攻勢と魔王側の侵略が一進一退を繰り返し、
クライマックス近くではほとんどの街や村が壊滅してしまったりするゲームが
少なくないが、結局のところ平和が戻るのはエンディングだけなので、セーブ
データにはいつまでも壊滅した街の惨状だとか赤く避けた大地が残るだけであ
る、始めた時より状況がひどくなるともうゲームを進める気力すらなくなって
くるのである。


 英雄伝説3はそんなRPGに不満を持っていた頃に出会ったゲームである。
ストーリーは、とある村に暮らす少年とその幼馴染みの少女が、成人を迎え、
成人の儀式である世界巡礼の旅に出る、というもの。
とりたてて珍しいストーリーではない。
おいらの予想では、この後、ひょんなことから二人は世界を救う英雄になり、
最後は大魔王と対決するんだろうな、と思っていた。
しかし、このゲームの良いところは安易にそういう道を選ばなかったことであ
る。このゲームを通して語られる物語はあくまでも、主人公の少年と少女の巡
礼の旅がメインなのだ。
その旅を通して、子供から大人へと成長する二人の姿が描かれ、非常に繊細な
タッチで決して嫌味にならないほどに幼馴染みの淡い恋心も描かれている。

 そしてこのゲームが当時ウリにしていた要素の一つに「プレイヤーが旅を感
じることが出来る」細やかな演出がある。
正直に言うとおいらは最初、単純にそんなことは無理ではないか?と思ってい
た。


 例えば、これは個人的に思い入れかもしれないが、ドラクエ1には旅情に似
たものがあった。
「昔語りの町 ガライ」や「ラダトーム」といった町からそこに暮らす人々の
生活やその土地ならではの雰囲気が感じられ、自分が世界を旅しているという
実感を味わうことができたが、ドラクエも回を重ね、登場する町や村の数が増
すに連れ、旅情や人々の生活感が希薄になってきたように思う。
これは一見矛盾しているように聞こえるかもしれないが、町や村に増えた分、
全体のストーリーの中では一つの町や村の存在価値や、そこに滞在する時間が
短くなり、その一つ一つの町は「イベントの通過点」あるいは「武器供給所」
として以上の意味を持たなくなってしまった為ではないかと思う。
ひとつひとつの町に思い入れを持てたり、旅情を感じられたりしたのは、まだ
ゲームがその大部分を想像力によって楽しむものだった頃だけのものだと思っ
ていたのだ。


 しかし、英雄伝説3には、旅そのものがメインテーマになっているだけに、
忘れかけていたRPGの持つ「世界を旅する」という要素が見事に描かれている。

 そして主人公達はそれぞれの町で、ひとつづつ旅を思い出を作り、また次の
町へと旅立ち、最終目的地を目指す、主人公達が作る思い出はプレイヤー自身
にとっても思い出となる。
その思い出はゲームをクリアした後もいつまでもプレイヤーの心に残っている。
これが英雄伝説3が他のRPGと根本的に違うところである。


 全体を通して非常に完成度の高いゲームだが、難点があるとすれば、まず戦
闘シーン、これは少々変わっていて、あらかじめ敵にどう対処するかを設定し
ておくと戦闘時にその命令にしたがって自動戦闘が行われる、というシステム
になっている、その為コンピュータ戦闘特有のもどかしさがあり、スムーズな
ゲーム展開の邪魔になっている。

 また、ラスボスがいないかのような書き方をしたが、ラスボス的な役回りの
敵は存在する、ただし、普通のゲームほど強敵ではないしので、最後のアクセ
ント的な意味が強い。
1990年初頭のゲームに「ディガンの魔石」というタイトルがあり、このゲーム
も既存のお決まりRPGからの脱却を狙った作品だったが、こちらにもやはりラス
ボスは存在するが、それがあまりにもとってつけたような展開で無理矢理ラス
ボスの役回りを演じさせられていた為、最後で少し興ざめした覚えがある。
このゲームもディガンほどではないが、その嫌いがある。

 しかし、それらを差し引いても、他に類型がちょっと見つからないほどオリ
ジナリティが高く、完成された名作だとおいらは思っている。



AXL 2001

HOME