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「英雄伝説〜Dragon Slayer VI〜」

Media :PC98,PC88SR,Supuer Famicom,MEGADRIVE,Play Station等
Maker :日本ファルコム
種 別:非リアルタイムRPG
発売日:1989年

 実は映画「スターウォーズ」を観たことがない。
見たことの無い作品がある、のではなく一作として観ていないのだ。
別にこれといった主義主張があってのことではなく、なんとなく観る機会がな
かったのと、どうしても観ようと思うほど興味が沸かなかった、というだけの
ことなのだが、こういうことを言うと映画ファンからは「頭の方は大丈夫か?」
という目で見られることがあるが、元々あまり映画には縁のない人生を送って
いるので気にもならない。

 映画にはあまり興味がないが、ゲームの方は昔から好きなので、こういった
取りこぼしはない・・・と言いたいところだが、実はゲームの方にも大きな取
りこぼしがある。
「イース」をやったことがないのだ。
今尚、リメイクされ続けパソコンゲーム界の金字塔といわれるあのゲームをや
ったことがない。

 しかし、これには理由がある。
「イース」第一作目がリリースされたのは1987年のことで、「イース」はそれ
まで日本ファルコムが作ってきた高難易度のRPGから一大転換を図り誰にで
もプレイできる低難易度の、それでいて内容的にも優れたRPGとして発売さ
れた。

 難易度が低くてクォリティの高いゲームというのは本来おいらが得意とする
ところである。
別においらでなくても得意とするとこであろうが、それでもおいらは「イース」
を買おうとは一度も思わなかった。

 何故かといえば、はなから信用していなかったのだ。
「あの」日本ファルコムが低難易度のゲームを作るはずがないと思っていたの
だ。
おいらが初めて日本ファルコムのゲームをプレイしたのは、ザナドゥでその高
難易度に打ちのめされた後、「これなら簡単そうだから大丈夫に違いない!」
と有り金をはたいて買ったロマンシアにはもっとひどい目に逢わされていた。
イースが発売されたのはロマンシアの直後だったと記憶しているが、そのキャ
ッチコピーは「今、RPGは優しさの時代へ」
それまでの日本ファルコムのゲームからは凡そ考えられないものだった。


 が、続けざまにひどい目に逢わされたおいらはこれを全く信用していなかっ
た。
「嘘に違いない」と思っていた。
「確かに最初だけは簡単かもしれないが、恐らく後半で、隠された特定の組み
合わせで剣に魔法をけたりだとか、豚を殺すとジジイになっていって飛んで行
きにっちもさっちもいかなくなるゲームに違いない」と信じて疑わなかった。

 このように、どういうわけか「イース」シリーズだけを持ち前の猜疑心を発
揮して素通りしてしまったおいらは、その後に発売されたソーサリアンの「シ
ナリオを拡張しても共通の主人公が使える」という斬新なシステムにコロっと
参って購入してしまい、その結果、本当に「隠された特定の組み合わせで剣に
魔法をかける」はめになったり、さすがにシューティングなら大丈夫だろう、
と思い、その次には「スタートレーダー」に手を出して、妙にいやらしい敵の
攻撃と永遠に続くかと思われる最初のステージのあまりの長さに挫折してしま
うこととなる。


 そして、「英雄伝説」と出会ったのは、高校生になったある冬のこと。
秋葉原の石丸電気(今はGAME ONEになっているところ)で、だった。
ファルコムのゲームには珍しい非アクション戦闘、どう見てもドラクエそのま
んまの雰囲気、ボリュームもありそうでなかなか面白そうな・・・というのが
第一印象だったが、タイトルの横に添えてある文字においらは過敏に反応した。

"Dragon Slayer VI"
そう、このソフトはドラゴンスレイヤーシリーズの6番目の作品でもある。
ドラゴンスレイヤーシリーズとは、第一作ドラゴンスレイヤーを皮切りに、
2がザナドゥ、3(Jr.とも呼ばれる)がロマンシア、4はファミコン、MSX
でnamcoから発売された文字通りのドラゴンスレイヤー4。
そして、5はソーサリアンである。

 少なくともおいらにとっては、ろくな思い出がないシリーズなのだ。
勿論、作品のクォリティは高いのだろうが、おいら自身の腕がそれを味わえ
るほどに熟練していない上に、根気も皆無な為、どんなに面白くても猫に小
判。
おいらにとっては「ドラゴンスレイヤー」と書いて「どくいり きけん た
べたら しぬで」と読めるほどデンジャラスなシリーズなのだ。

「ドラゴンスレイヤー不倶戴天・・・」

 そう呟いて箱を棚に戻そうとしたが、かといって他にこれといったゲームも
なかったのでそのまま購入してしまった。


 日本ファルコムのゲームをクリアしたのは、この「英雄伝説」が最初になっ
た。
というより、未だに英雄伝説シリーズ以外のファルコムゲームをクリアしたこ
とはないのだが。

 このゲームは当時のRPGの主流だった、いわゆるドラクエ型RPGで、難
易度も低め、理不尽な謎ときも一切なく、自由度は低いがストーリーを楽しみ
ながら進めていけば誰でも簡単にエンディングに辿りつくことが出来た。
さらにオートセーブ機能や、オート戦闘システムを搭載しており、本家ドラク
エよりも親切な作りになっていた。

 ストーリーも王道ではあったが充分満足の行く内容とボリュームを兼ね備え
ており、当時のおいらは「これぞ傑作!」と感動してしまったが、このゲーム
は良くも悪くも、それまでのファルコムの姿勢とは全く違っており、良くいえ
ば誰でも楽しめる良質ゲームだが、悪く言えば単なるお使いRPGで終わって
しまっている。

 その為、この作品をどう評価するかは、それぞれ大きく意見の分かれるとこ
ろだと思うし、また、今やって面白いゲームではない、ということも確かだ。
このゲームはドラクエ、ファイナルファンタジーシリーズが築き上げ、今や定
番となったストーリー重視のお使いRPGであり、演出やシナリオのボリュー
ムも現在のゲームと比較してしまうと当然ながら貧弱なものだからだ。

 かといって、レトロゲーム特有のアクの強さのようなものがない為に、現在
このゲームをプレイしても魅力的なものに映るかどうか、つまり普遍性の面で
は甚だ疑問が残る。

 しかし、パソコンゲームではまだまだ高難易度ゲームが多かった時代に生み
出された1本であり、ファルコムのそれまでのスタンスからすれば本意ではな
かったであろう、この手をゲームを一切手を抜くことなく作り上げた姿勢には
非常に好感の持てる1本である。



AXL 2002

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