レトロゲームレビュー/名作、クソゲー等ファミコン時代から網羅

「アフターバーナー(I〜III)」


Media :アーケード、SEGA MARKIII、Family Computer,PC-Engine,MEGA DRIVE,
MEGA CD,FM-TOWNS,X68000,SEGA SATURN,*Dream Cast
Maker :SEGA(オリジナル(アーケード)版,SEGA MARKIII,Super 32X,SATURN,
       *DreamCast)
       SUN SOFT(Family Computer)
       NECアベニュー(PC-Engine)
       CRI(CSK総合研究所)(FM-TOWNS(II.III),MEGA CD(III))
       電波新聞社(X68000,MEGA DRIVE(II))
種 別:擬似3Dシューティングゲーム
発売日:1987年 アーケード(I,II)、SEGA MARKIII(I)
       1989年 Family Computer(II),FM-TOWNS(II),X68000(II)
       1990年 PC-Engine(II),MEGA DRIVE(II)
       1992年 TOWNS(III),MEGA CD(III)
       1995年 Super 32X(コンプリート(II))
       1996年 SEGA SATURN(II)
       2001年 *Dream Cast(II)

(*DC版はシェンムー2にミニゲームとして収録されているもの、及びアスペク
 ト刊の「鈴木裕 ゲームワークスvol.1」に収録されているものを指し
 ます。

 いつもは移植版ははしょって紹介するのだが、たまにはマジメに調べてみよ
う!、などとおいららしからぬ殊勝なことを考えてしまったが為に、データ表
記が大変なことになってしまい、事態がにわかに「夏休みの自由研究」的な様
相を呈してしまったアフターバーナーシリーズである。

 オリジナルであるアーケードゲームは1985年に初の「体感ゲーム」として登
場したハング・オン、一斉を風靡したスペースハリアーなどと同じ筐体体感ゲ
ームだ。
ちなみに、ハングオン当時はバイクの形をした筐体が左右に揺れるだけだった
ものが同じ年に発売されたスペースハリアーは前後左右に加え斜めにも動くよ
うになり、87年のアフターバーナーの登場により全盛期を迎えるが、その後は
地味ながらも個人的には大好きだったパワードリフト(89年)などを経て91年に
「360度回転する」というR360というタイトルを最後に滅亡してしまっ
たという、なんだか恐竜のようなシリーズである。

 アフターバーナーは当時話題になっていた映画「トップ・ガン」よろしく美
しい擬似3D画面でドッグファイト・シューティングを繰り広げるという内容
で、シューティングゲームとしては王道中の王道的な内容をそれ迄の主流だっ
た2Dから擬似3Dに昇華させ、派手な体感筐体のイメージもあって大ヒット
を記録した。

 ゲームそのものとしては、85年に発売されたスペースハリアーに近いものが
あるが、圧倒的なスピード感、人間ではなく戦闘機をプレイキャラとしたこと、
そして何より操縦桿を急激に切ることによって機体が左右に360度回転する
(さすがに筐体は回転しない)という演出によって名作スペースハリアーに匹
敵する体感ゲームとなった。

 さて、80年代にアーケードで一世を風靡したものは、多くの家庭用ハードや
パソコンに移植され、後の世までそれぞれのクォリティが取りざたされるが、
先輩であるゼビウスやスペースハリアーに負けないくらいの勢いでこのアフタ
ーバーナーも多くの機種に移植されていった。

 移植版の紹介に入る前にアフターバーナーシリーズについて少し触れておき
たいのだが、アフターバーナーには大きく分けて「1」と「2」の二種類が存
在する、しかし、アフターバーナー2は必ずしも1の続編というわけでもなく
強いて言えば、「ラリーX」と「ニュー・ラリーX」のようなもので、マイナ
ーチェンジされたものが「2」なのだ。
しかも、アフターバーナーの場合、1と2の出荷時期に開きが殆ど無く、実は
全国のゲームセンターに登場した「アフターバーナー」と呼ばれる筐体の殆ど
が「2」の方である。
「1」と「2」の内容的な違いとしては、ステージ数の増加(1が18ステー
ジに対して2は23ステージ)、難易度の調整、アフターバーナー機能の追加
などがあるらしい。

 そのようなわけで一般的に「アフターバーナー」と呼ばれるゲームは殆どの
場合「2」を指すのだ。
実際に家庭用ゲーム機やパソコンに移植されたタイトルの中でも9タイトル中
7タイトルまでが「2」の移植であり、「1」が移植されたのはアーケード版
登場の年に発売されたSEGA MARKIII版のみで、1995年にメガドライブの拡張ユ
ニット、Super 32X用に発売された「アフターバーナー・コンプリート」も内容
は2の移植版となっている。

 唯一、1でも2でもない3というタイトルがメガCDに存在するが、これは
アフターバーナーシリーズの続編というよりも、名前だけアフターバーナーを
冠してしまったドッグファイトシューティングという感じらしく、以後3が別
機種に移植されたり復刻されることはなかった。


 それでは、移植作品の紹介に移ろう。
アフターバーナーの移植作品リストを作っていて気付いたことだが、このゲー
ム移植版の面白いところは、メガCD版、32X版、SATURN版を除いては、全てその
当時にライバルと呼ばれたゲーム機、パソコン間の両方で移植版が発売されて
いる点だ、つまり、ファミコンとSEGA MARKIII、PC-エンジンとメガドライブ、
FM-TOWNSとX68000という具合で、当時のハード戦争の苛烈さを思い合わせると
非常に興味深い。

まずは何といってもSEGA MARKIII版のアフターバーナー。
移植タイトル中、唯一無印を移植したものであり、発売日も何とアーケード版
のアフターバーナー(I&II)と同じ1987年である。
このタイトルのウリは何といっても「家でアフターバーナーが遊べる」という
点に尽きるだろう。
2本目の移植版がファミコンで発売されるのは1989年のことなので実に1年以
上にわたって「家庭用唯一のアフターバーナー」として君臨したことになる。

 同じ年に発売された新型MARKIII、セガ・マスターシステムのスペックに合わ
せてFM音源に対応させるなど、セガ家庭用ゲームの命運をも背負わさせた感
のあるゲームだったが、結論からいうと、MARKIII程度の性能でアフターバーナ
ーを完全再現することは不可能で、凶悪な難易度も手伝って評判はあまり良く
ない。
MARK IIIというハード自体、当時ゲームセンターで人気を博していた、アーケ
ードゲームとしてもハードに膨大な負担をかけるセガの大作ゲームの移植とい
う十字架を背負わさせることになってしまいソフトのハードルが高すぎて(当
時の家庭用ハードとしては)決して悪くなかったハード性能の割に報われなか
ったハード、というイメージがあるが、アフターバーナーはその典型かもしれ
ない。

 その点、ファミコン版は楽だった。
MARKIIIほどの期待をかけられることもなく、初めからMARKIIIに性能面で劣っ
ているハードへの移植、しかもオリジナル版発売から約2年が経過している、
といった点からも、「なんとか遊べれば上出来」という雰囲気がユーザーの間
にあったからだ。
移植を担当したのは、なんと「いっき」のサンソフト。
実は、サンソフトは同じセガのファンタジーゾーンのファミコン移植も担当し
ているが、予想に反して意外と質の良いものをリリースしている。
自機はMARKIII版よりふた周りほど小さいものの、ファミコンでありながらちゃ
んと360度回転もするし、ファミコンでよくぞここまで!という程の出来。
アーケード版並のクォリティを!などという過剰な期待さえしなければシュー
ティングゲームとして充分に楽しめるものに仕上がっていた。
ちなみにファミコン版のタイトル表記は「アフターバーナー」のみで「2」と
はどこにも書いていないのだが内容的には「2」の移植である。


 さて、ファミコン版リリースの翌年、1990年には早くも第二世代ゲーム機戦
争に巻き込まれることになる。
かたやセガの新ハード、MEGA DRIVE、かたやNECのPC-Engineで発売されること
になるが、意外なことに自社ハードにも関わらずMEGA DRIVE版の移植はセガで
はなく電波新聞社が行っている。
電波新聞社・・・往年の(まだ発行されているらしいが)「マイコンBASIC ma
gazine」だとか「月刊マイコン」などの雑誌を知らないヒトにとってはナチュ
ラルにデンジャラスな社名を持つこの会社。
基本的には業界新聞社であり、社名の通り「電波新聞」などという「恐怖新聞」
にも匹敵しようかという程インパクトのある名前を持つ新聞を刊行している。

 余談だが、電波新聞社が発行している「マイコンBASIC magazine」はおいら
が中学生当時、唯一愛読していたパソコン雑誌で、たまたま初めてMSXを買
うことになった頃に情報集めの為に書店で手に取って以来約3年ほど愛読して
いた。
ゲーマーの先駆けともいうべき山下章氏のコーナーもあり、「私に解けないA
VGは無いっ!」と豪語する山下氏に本気で憧れてしまうという、今にして思
えば「どうかしているんじゃないのかしら?」とも思われる中学生時代を邁進
し、大体にして青春を棒に振ってしまったおいらは、編集部のキャラクターと
して毎回登場する「影さん」というヒトにも憧れており、当時友人に「影さん
なんか存在しねーんだよ!」と言われ大喧嘩をしてしまったという、涙無しに
は語れないサイドストーリーを持つオトコとなってしまったが、数年前にイン
ターネットでたまたま「マイコンBASIC magazine」のHPにアクセスした際に
あれから20年近くも経ったというのに影さんをはじめレギュラー編集陣がま
だいたのは懐かしいというよりはむしろウスラ寂しいものがあったことを告白
しておきたい。

 それはともかく、本業はいわゆる業界マスコミである電波新聞社だが、パソ
コンへのゲームの移植事業も積極的に行っており"DEMPA"というこれまた「ブレ
ーキの壊れたダンプカー」とでも形容すべき潔いブランド名で主にナムコ系の
ゲームをMSX等に移植している実績を持っている。

 もはや何の話をしていたのか忘れてしまいそうだが、とにかくその電波新聞
社がメガドライブ版アフターバーナーの移植を手がけたのだ。
実はこのゲームは、当時どういうわけか友人がタダでくれ、大して期待もせず
にプレイしたのだが意外や意外、かなり出来の良いソフトに仕上がっていた。
勿論、完全移植というわけにはいかなかったが、いわばファミコン版をいい感
じで進化させたようなゲームに仕上がっており、無理なことをしてゲーム性を
損なうよりも出来る範囲で楽しいものを!という開発陣の意気込みが伝わって
くるような良作だった。

 おいらの場合、メガドライブは発売当初に購入したがマシンパワーの割に、
いまひとつ面白いゲームがなく、映像や音の派手さはあるものの、ゲームその
ものの出来にはかなり疑問を感じていた。
例えば、メガドライブで発売されたスペースハリアー2とPC-Engine版のスペー
スハリアーを比較すると、迫力では断然メガドライブの方が上なのだが、スピ
ード感で爽快感ではPC-Engine版の方が遥かに上だと感じた。

 アフターバーナーの場合も、PC-Engine版はスペースハリアーと同じNECアベ
ニューが行っているが、メガドライブ版の出来の良さもあって、こちらはあま
り記憶に残っていない作品になってしまった。
決して出来が悪くわけではなかく、ハードの特性として全体的に動きがもっさ
りしているメガドライブに比べ、シャープな動きを信条としているPC-Engineは
アフターバーナーのようなゲームでは有利な筈だったのだが、発売日に定価で
購入し2、3日遊んだっきりあまり触れた記憶がないのだ。
強いて言えば可もなく、不可もないゲームという感じで、名作アフターバーナ
ーもオリジナル版発売から3年を経過し、最先端ゲームというよりはコレクタ
ーズアイテムに近いジャンルに属するようになってきたのもその原因かもしれ
ない。


 さて、パソコン版の方にも目を向けてみよう。
アフターバーナーは当時、絶対的シェアを獲得していたNECのPC98シリーズへ
の対抗馬として富士通、シャープから発売されていたホビー志向のパソコン、
FM-TOWNS、X68000にそれぞれ移植されている。

 16bit CPU、フロッピーディスクドライブをベースにしているX68000に対して
32bit CPU、CD-ROMドライブを標準搭載するFM-TOWNSは数値の上では圧倒的に
有利なのだが、X68000が映像処理に強いモトローラ社製68000をCPUとして採用
しているのに対し、TOWNSはPC98シリーズと同じで映像よりも数値処理を得意と
するインテル社製i386を採用しているなど、殊ゲームに限っては甲乙付けがた
い。

 実はX68000版は未プレイな為にあ正確にレビューすることは不可能なのだが
少なくともTOWNS版がかなりダメだったことだけは記憶している。
FM-TOWNS版もどういうわけかメガドライブ版をくれた友人がある日やってきて
無言で貸してくれたのだが、本当に面白くもなんともないゲームだった。
FM-TOWNS版に関しては現在ネットなどで画面写真をいくつか見ることが出来る
が確かに静止画はアーケード版にも引けを取らないほど美しい。
しかし、実際にプレイしてみるとゲームとしてはアラの目立つもので、初期の
メガドライブ作品的にウスラ侘しいものになってしまっている。

 X68000版は、メガドライブ版と同じく電波新聞社が担当しており、悪い評判
もあまり聞かず、CPUも同じであることからメガドライブ版のバージョンアップ
的な良作だったのではないかと思う。


 さて、後は、MEGA CD版の「3」と、32X、セガサターンが残っているが、
「3」に関しては先に説明した通りで、32Xはほぼ完全移植らしく、サターン版
さらに完成度を高めたトドメの一発、といったところだろう。


 以上、1987年から1996年迄、長い年月をかけて多くの機種に移植され続けて
きたアフターバーナーシリーズだが、例えSATURN版がアーケードと全く同じ出
来であっても結局のところ過程で100%アフターバーナーを楽しむことはで
きない。
今、これら後期に移植されたアフターバーナーをプレイすれば懐かしさに胸が
ときめくかもしれないが、同時にプレイ後に、胸に小さな穴が空いた様な虚し
さを覚えてしまう。
何故ならアフターバーナーの楽しさの半分はあの動く体感筐体にあったからだ。
僅かばかりの誇らしさと恥ずかしさがない交ぜになったような気持ちで、ゲー
ムセンターの入り口近くに据えてある、あのやたらとゴツい筐体に乗り込み操
縦桿を握って体が傾いていくあの感覚こそがアフターバーナーの醍醐味であり、
その意味では永遠に移植度は未完成のままかもしれない。

 これだけは死ぬ迄家で楽しむことは出来ないかもしれないが、「あの頃ゲー
マー」の特権のひとつとしてずっと胸の奥にしまっておきたいと思っている。



AXL 2003


(2003.2.14追記)

DC版アフターバーナーII(シェンムー第二章及び鈴木裕ゲームワークス収録版
の情報は、レゲーファンの犬橇舎さんからお寄せ頂きました。

 またFM-TOWNS版のアフターバーナーはIIの他にIIIもあるようで(発売はCRI
(CSK総合研究所))こちらの情報とパッケージ内のCD-ROMのジャケット画像を
ポン吉さんからお寄せ頂きました。

情報をお寄せいただいたお二人に感謝いたします。

(2003.3.18追記)
本文中のPC移植版発売年度の表記に誤りがあった為、一部文章を修正いたし
ました。
ご指摘くださったStone.さん、ありがとうございます。


AF3_Case.JPG (116784 バイト)

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