ギリシア陶器鑑賞のポイント

 第一の鑑賞ポイントとして挙げられるのはなんといってもその描写でしょう。そこに描かれているのはある神話の一場面であったり、日常生活の一コマであったりします。前者の場合、特にある程度ギリシア神話の知識をお持ちの方なら、「ああ、これは英雄ヘラクレスが地獄の番犬を捕まえに来た場面だな」と思うわけです。また描かれているのが日常の場面であれば、当時の宴会はこんな風に盛り上がっていたのかなどと感じることでしょう。こうしたことが陶器の画面、つまり陶器画を鑑賞するポイントといえると思います。

 次に陶器そのものの鑑賞も興味深いものといえます。ギリシアの陶器のほとんどはプロポーションにだいたいの決まりがあって、均整の取れたバランスの美しさがその特徴といえます。その生真面目ともいえるシンメトリーなバランスのもつ華麗さは、我が国における志野や織部などの自由なかたちを愛でるのとは好対照をなしています。またその陶器の用途を知り、それが実際使われていた様子を想像するのもおもしろいかも知れません。

 最後に陶器を作った人物に焦点を当てることも興味深いことです。写真ではなく実物を鑑賞する機会があったら試しに目を近づけてみてください。時には画家の下書きの跡を見ることができます。中には途中で心変わりして構図を変えてみたり、気に入らないで塗りつぶしてしまったりした形跡が見られるものもあります。こうした様子を見ると画家が苦労して描いている姿が目に浮かんでくるかも知れません。またまれにではありますが、陶工や画家のサインが記されていることもあります。自らの作品に名前を残す彼らの自信と誇りが感じとられます。

 日本や世界の陶器とはかなり異なるギリシア陶器の世界をぜひ一度覗いてみてください。