2 - 1 - 10 タソス島の東方化様式


Wild Goat Style

 タソスおよびデロスからは数は少ないもののある一つの工房で作られたと思われるWild Goat Styleの陶器が見つかっている[1]。これには三つのタイプがあり、同心円状の装飾の中に山羊や鹿を描いたプレート、ドーリス地方のように大きな画面にライオンなどの動物を描いたプレート、底の尖ったアリュバロスが作られた。その製作地はタソスが有力視されており、年代は600年頃に位置づけられている。

 またキオスの陶器を真似たものも見られ、やはりチャリスが多いもののオイノコエやプレート、レカニスやクラテルなども作られた。白い化粧土で上塗りされるが、キオスよりも薄く、省略されることもあった。装飾もキオスに近いが雑で、空間充填文も密度が高く、動物は特に山羊が好まれた。このほかにもキオスの黒像式やグランドスタイルを真似たものも作られた。

[1] タソス島の陶器については、Ghali-Kahil, L., Etudes Thasiennes 7, (1966), Lemos, A. A., Archaic pottery of Chios: the decorated styles, (1991), pp.209-222参照。